情操家族 (2017年)

作品総合評価 5点
少年の出番 50%
寸評 正論を旗印に突き進む女性教師。
【少年映画でない理由】出番の割に存在感小
映画情報など PFF2017入選。配信あり。
写真は松田北斗君。


PFF(ぴあフィルムフェスティバル)2017年入賞作品という事でスカパー241で放送されました。監督は東京藝術大学の学生さんで卒業制作との事。学生映画と侮るなかれ、特に天下の東京藝大の作品はレベルが高いのです。ただ芸術性を目指すあまりエンタメ性(商業性)に欠ける面も...

放課後。学習障害のあるテッペイに個人授業を行う今日子先生
(正解したらお菓子をあげる。これって動物の調教じゃないですか。これも情操教育かな)

今日子(山田キヌヲ)は小学教師。教育論の書籍を執筆するバリバリの教育家でもあった。担任の小2クラスに学習障害を持つテッペイ(松田北斗)がいた。テッペイの母から放課後の補習授業を頼まれ、教育者としての信条から断りきれなかった。今日子は離婚(夫を追い出した)して高校生の息子がいた。

息子が万引きで捕まり、今日子もしばらく自宅で謹慎する事になった。しかし自宅にテッペイを呼んで補習は続ける。息子が離婚した夫と会っている事を知り激怒。またのテッペイの両親から離婚する事を告げられ、あまりのワガママさに激怒。激怒の内容は全て正論だ。何を言われようとも彼女は突き進む...

■世の中、正論だけではダメだと言いますが...

とにかく主人公の女性教師が強烈。同僚教師がなぁなぁ的に間違った事をしようとするとツッコミを入れます。最初は穏やかに、徐々にヒートアップして糾弾します。彼女の主張が正しいだけに同僚は何も言い返せません。相手が校長先生だって同じ。

でもその正論が彼女自身をも縛りつけるのです。詳細は描かれませんが、元夫はダンスにうつつを抜かして家庭を顧みなかったのでしょう。息子は高校生になり正しい自分よりも放蕩オヤジを選んだことが腹立たしくて仕方がない。息子の万引きで学校を謹慎処分。これは過剰対応。でも校長から彼女の教育者としての失敗をやんわりと指摘されては反論できず。

テッペイの母親から放課後に特別個人授業を頼まれても断れない。本来はしかるべき学習障害対応の施設で行うべき。でも彼女の教育者としての責任を突かれては仕方がない。でもテッペイは可愛い。自分の息子よりも情が移ってしまいそうになる始末。それだけに彼の両親のワガママさにキレてしまう。

こんな正論の自縛状態になれば、見出しにあるように「正論は正論、現実は現実」と逃げてしまうのが普通。でも彼女はよろめきながらも正論を貫き続けます。最初は嫌な女と思っていましたが、最後は彼女を応援する気持ちで一杯に。

テッペイは授業についていけない。
(映画では、ずっと目を伏せたまま...)
先生が自宅謹慎。テッペイは先生の家で補習。
(テッペイの母に頼まれて。この母が自分勝手過ぎて...)


今日子先生の息子はモタっとした高校生。
(演じるのは遠藤史人さん。いい味出してました。)
テッペイは絵を描いた。
おとうさん大好き、おかあさん大好き...



※後記
主人公の女性教師が執筆しているのは『情操教育』という本。子供たちの心を豊かにして道徳的な意識を育てるための教育でしょうか。でも書いている女性教師の心は豊かにならず、すさんでいくのが悲しいところ。





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