鍾乳洞と三人の少年たち (1977年)

作品総合評価 B-
少年の出番 ほぼ100%
寸評 秋吉台の自然と鍾乳洞の神秘。素朴な中学生がいい。
【少年映画でない理由】これは科学教育映画。
映画情報など 学校などで上映。現在はyoutubeで公開。
写真は(たぶん)貫井正浩君。


これまで膨大な数の科学映画、教育映画が作られてきました。しかし今では殆ど見る機会がありません。ところが素晴らしいサイトがありました。「科学映像館」NPO法人ですが、多くの科学映画アーカイブを無料でyoutubeに掲載されておられます。是非一度みて下さい。

劇映画は少ないのですが、本作はその一つ。1977年の中学生3人が主役。昭和の中学生そのもの。演じた少年たちの実年齢は少し上な感じがしますが、素朴さが印象に残ります。

鍾乳洞を見つけた。ヒロシ(トンボ)、カズオ(カッチン)、ヨシユキ(ハカセ)

島根県の津和野に住む中学2年生のカズオ(貫井正浩)、ヨシユキ(上田正雄)、ヒロシ(館川喜年)の3人は秋吉台にある未踏の鍾乳洞の探検を目指していた。そのために夏休みはバイトしてお金をためている。しかし3人の両親は許さない。子供だけで鍾乳洞なんて無謀すぎると。しかしカズオたちは決行した。

列車とバスで秋吉台へ。夜はテントでキャンプ。未踏と言われる鍾乳洞を発見したが怖くて結局は断念。
翌朝、石灰岩を持ち去る泥棒たちと遭遇。3人を追いかけて来たが必死で逃げた。カズオは泥棒のトラックのナンバーを手帳に控えた。何とか家に戻った3人。お灸を据えられたが、希望は捨てない。泥棒も捕まった。

 中学生版のズッコケ三人組

秋吉台のカルスト台地には落し穴のような縦穴の鍾乳洞が無数にあり、落っこちてしまうと数十万年後に化石になって見つかるだけ。そんな危険な場所だったのですね。しかし何億年も昔の地球の神秘。中学生の少年が惹かれるのも判ります。

本作の3人はカッチン、ドクター、トンボという愛称があり、本年(2021年)亡くなられた那須正幹氏のズッコケ三人組が思い出されます。しかし本作は超マジメな教育映画ですので、3人にも面白みがありません。中学生なら異性や性欲、功名心など、ちょいワル部分も欲しい。(32分の短編なので無理はありますが)

それでも大人になったら地球の神秘を調べる探検隊になるんだ。いいじゃないですか。スマホやネットで受動的な享楽ばかり求める子供たち。何かしてやろう!という健全な野心を持って欲しい。でも本作を今の子供たちに見せても、ダセぇー!と言われて終わりかも。

津和野で観光案内のバイトをするカズオ。
(カウボーイ風の麦わら帽子。今は被る子いないなぁ)
津和野の町を自転車で駆けるカズオ。
(少年の憧れ。10段変速、フラッシャー付。欲しかった)


鍾乳洞探検の計画は1年前に始まった。
(中学1年には見えないのが残念)
津和野城の石垣で洞窟探検の訓練。
(絶対叱られます。大切な歴史遺産ですし)


鍾乳洞にちょっと入ってみた。
(こりゃ無理だ。みんな感じたが...)
カズオは一人で強引に入って行った。
コウモリに襲われてあえなく断念。


秋吉台の美しい夕陽。三人の少年のシルエットも美しい。君たちには明日がある。


※後記
本作の制作は英(はなふさ)映画社。企画は貯蓄増強中央委員会。すごい名前ですねぇ。それはさておき英映画社は昭和2年(1927年)の創立で、数多くの短編映画を制作してきたそうですが、2009年に解散との事。でも制作した作品はフィルムとして後世に残っていくのが素晴らしい。その辺の大手テレビ局とは大違い。





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