さらば箱舟 (1984年)

作品総合評価 B-
少年の出番 数分程度
寸評 寺山修司の世界は難解。しかし不思議な魅力も。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 1984年公開。BD/DVD発売中。
写真は斉藤優一君。


故・寺山修司さんの最後の映画作品。寺山作品はどれも難解ですが、その中でも最も難解だと言われている作品。それもあって敬遠していましたが、映画『こんにちはハーネス』の斉藤優一君が出演しているとの事で、DVDをレンタルしました。

村の全ての時計を捨てた大作少年。家に帰ってひと眠り。次のシーンはいきなり原田芳雄さん演じる大人に。
(本作の映像は全て「紫色」が強くかかっています。画像処理で紫を少しだけ低減しました。)

琉球地方と思われる南の島。少年大作(斉藤優一)が老人と島中の時計を盗んで浜に埋めた。大作は島の本家の息子。成人した大作(原田芳雄)は嫌な性格の男。分家の捨吉(山崎努)とスエ(小川真由美)の夫婦を何かにつけ笑いものに。それが嵩じて激昂した捨吉は大作を刺殺。捨吉とスエは逃亡したが、気づいてみると元の家に戻っていた。

それ以来、大作の幽霊が捨吉にまとわりつく。村にはあの世に続く穴があり、死んだ人間と手紙をやり取りしていた。捨吉とスエが行商人から時計を買った事がバレて村人に殺された。残された妻のスエはしばらく自由に生きたが、花嫁衣裳を着て穴に飛び込んだ。そして時代は現代に...


本家とか分家とか。今やこんな言葉はミステリー小説でしか聞きません。本作の登場人物は全て時任(ときとう)という姓なので人間関係が判りづらいのです。登場人物も多いのですが、メインは山崎努さん演じる捨吉と、小川真由美さん演じるスエ。特に小川真由美さんの熱演が印象に残ります。

2人はいとこの間柄で結婚。近親結婚で生まれた子供は犬になるとの伝承のため、スエには金属の貞操帯がつけられていました。何度も外そうとしますが堅固で外れません。それもあって夫の捨吉が笑い者にされていた訳です。最後にやっと貞操帯が外れた時、夫は既にいません。スエの表情は本当に凄い。

もう一つのアイテムが時計。時計は村に一つ。本家だけが持つ事を許される。そんな決まりを作ってしまったのが、斉藤優一君演じる少年時代の大作。箱舟と時計と穴。寺山修司さんの意図は理解できませんが、大きなこだわりがあった事は確か。

斉藤優一君は映画の最後にまた登場。現代の時計店で時計を見る少年。もう少し出番が欲しかった。
また映画中盤で、本家の先代の(隠し)子の女性がダイという少年を連れて村へ戻ってきます。このダイが穴に落っこち、すぐ這い上がったのはいいのですが、なんと姿は大人。しかも色欲だけのクソ男になっていたのはどういう意味なんでしょうね。

気になる事。少年時代のダイ役は大山レオナとなっています。カタカナで「レオナ」ですから女の子ではないでしょうか。ネットで検索しても全く情報がありません。ノーベル物理学賞を受賞された江崎玲於奈氏もお名前は「れおな」ですので、男の子かもしれませんけれど。


村中の時計を盗んで大八車に乗せて浜辺へ運ぶ。
(この衣裳、「STAR WARS」のルークみたい)
時計を穴の中に放り込む大作少年。
(関係ないですが、大作少年といえばジャイアントロボ)


本家の先代の子だという女性が少年を連れてきた。
少年の名はダイ。(体形は男の子にみえます。)
少年ダイを演じるのは大山レオナさん。女の子?
(胸を出してますけど。う〜ん判りません)


あの世と通じている穴。次第に大きくなって。
何と郵便屋がここを通ってあの世でも集配するそうです。
現代(1984年)。町の時計店にいる少年は...
斉藤優一君でした。大作の子孫なのでしょうか。




※後記
寺山修司作品には根強いファンの方がおられますので、本作についても、もっと深く掘り下げたブログやレビューが数多くあります。是非検索されてそちらをご覧になって下さい。また2020年12月になってブルーレイまで発売されています。やはり人気があるのですね。同じ斉藤優一君の『こんにちはハーネス』もブルーレイ化して欲しい。ホント





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