湯殿山麓呪い村 (1984年)

作品総合評価 B-
少年の出番 数分程度
寸評 即身仏(ミイラ)の伝説と殺人事件の真相は少女だった。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 1984年公開。BD/DVD発売中。
写真は田中義尚君。


映画『犬神家の一族』がヒットして以来、横溝正史原作など伝奇ミステリー的な映画がブームになりました。本作は山村正夫原作で、私は小説も読みました。映画はVHSテープの時代にレンタルで鑑賞。少女俳優の仙道敦子さんに注目が集まった感じでしたが、全体的には今ひとつの印象でした。

昨年(2021年)久しぶりに東映chで放送された本作品を鑑賞。少年俳優の出番はごく僅かですが、推理小説的には重要な役です。低価格のブルーレイも発売されていますので、ご興味を持った方は是非。

少年は大人は入れない換気窓から浴室へ。浴槽には男が睡眠薬を飲まされて眠っている。
少年は手にした仏具を頭部に突き刺した。これが密室殺人の真相。

大学講師の滝(永島敏行)は、湯殿山の寺に未発表の即身仏があると聞き、発掘調査を始めた。協力者は調査資金を出した淡路と住職。そこへ脅迫状が届き、淡路が殺された。怖くなった住職を説得して滝はなんとか資金を捻出して発掘を続行。即身仏を発掘するが、同時に2体の遺体も見つかった。そして住職も殺された。

2体の遺体は殺人事件。即身仏も公表できる代物ではなく、滝は大学をクビになった。2年後。滝は事件の全容が判った。住職の息子で小学生のシンヤ(田中義尚)が淡路を殺した犯人。淡路の13歳の次女(仙道敦子)が住職殺しの犯人。全てはこの次女が作ったシナリオだった。


とにかく人間関係が複雑。でも全て大学講師の滝の目線で進行しますのでストーリーには入っていけます。しかし登場人物は全て裏がある曲者ばかり。主人公の滝からして、資金を出してくれた淡路の長女と不倫の仲。住職と淡路は、ある姉妹を強姦して床下に埋めてしまった悪人ども。

そして仙道敦子さん演じる13歳の次女。なんと17歳のボーイフレンドの子を宿しており、更に酷い事に彼は実の兄。死んだ姉妹の遺族の話を聞き、次女は自分の家族と関係者への復習計画を立てます。17歳の兄は刑法犯になるので、14歳未満の自分とシンヤだけで殺人を実行。

次女とシンヤはいわば交換殺人。シンヤは次女の父を殺し、次女はシンヤの父を殺します。このシンヤの情状が困ったもの。なんと住職は息子のシンヤを性的虐待。当時は性的虐待なんて言葉は一般的でなく、お父さんは毎晩いやらしい事をしてくるので大嫌いだ。

この住職は妻も子もおり、また女性を強姦していますが、一方で中世以来の僧侶の悪習である男色趣味も持っていたのでしょうか。小説ではしっかり書いていましたが、映画ではさらっと流しています。

しかし因果応報というのでしょう、関係者は全て死んでいきます。首謀者の次女は兄のバイクに同乗して事故死。これは自殺でした。滝は不倫相手の長女を誤って殺してしまい、逃走先の雪山で(たぶん)凍死。シンヤは自殺未遂ですが、どうなったのでしょう。


シンヤと父の住職。高齢になってからの子ども。
それでネコ可愛がりかと思っていたが、まさか...
左端は仙道敦子さん演じる淡路家の次女。
シンヤは彼女を本当の姉のように慕っていた。


これから殺す淡路家の当主を見つめる。
人を殺す前に少年は何を思ったのか。
殺人の後、2階の窓から自分の部屋に戻った。
シンヤは運動神経抜群。そして身体が柔らかい。


任務(殺人)を果たして戻ってきたシンヤを抱きしめる。
次は、わたしがあなたの父さんを殺すわ。
シンヤは自殺を図ったが未遂に終わった。
罪悪感に襲われたのか、それとも、これも彼女の...



※後記
肝心の発掘した即身仏(ミイラ)ですが、修行を重ねて悟りを開いた上で即身仏を目指したのではなく、当時の寺の関係者に無理やり生きたまま土中に埋められた被害者でした。そのためミイラのお顔は凄惨な苦悶の表情。とても仏様として見れるものではなかった、そんな設定でした。






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