破戒 (2022年)

作品総合評価 B+
少年の出番 10分未満。
寸評 部落出身の小学教師の苦悩を忠実に再現。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 2022年劇場公開。BD/DVD発売中。
写真は生徒の一人を演じた石田星空君。


島崎藤村の名作。市川崑監督など巨匠により映画化されていましたが、60年ぶりに映画化。今の時代にそぐわないのではとの懸念もありましたが、やはり感動しました。改めて原作を読んでみようかと思っております。(青空文庫で無料で読めますし)

成績は優秀な仙太だったが、貧乏で帳面(ノート)はボロボロ。先生は新しい帳面をくれた。
こんなの貰ったら叱られます。いつも手伝いをしてくれた御礼だと言えばいい。先生は言った。

丑松(間宮祥太朗)は部落出身だが勉学に励み師範学校を出て小学教師になった。父からの戒め(出自を隠す)を守ってきた。しかし部落出身を公言する作家や代議士候補に惹かれていく。一方で下宿しているお寺の娘への恋心にも悩む。そんな丑松に、あいつは部落出身ではとの噂が広がる。

応援していた代議士候補が暗殺され、丑松はショックを受ける。師範学校からの親友(矢本悠馬)が親身になって支えてくれるが、丑松は決心した。戒めを破って自分は部落出身だと公言し退職。最後の授業で児童たちに謝った。東京へ去る日、お寺の娘が追いかけて来る。部落なんて関係ない。2人は一緒に東京へ。


主役を演じた間宮祥太朗さん。本当に明治時代の青年に見えてくるから不思議です。明治になって全て平民になったとはいえ、特に地方では部落差別は厳しかったのではと思います。そんな中で部落出身を公言した小説家、弁護士が現れます。彼らに比べて自分の卑劣さが葛藤になっていく。

同性愛の方が悩んだ末にカミングアウトするのと共通点があるように思います。しかし明治や戦前の部落差別の厳しさとは桁が違うのでしょう。地方では特に。結婚、就職はもちろん家にも入れて貰えない、話すことも御法度。主人公の丑松にとっての救い。本当の親友がいたこと。彼の存在が無ければ破戒ではなく破滅していたかもしれません。

丑松が教え子に話した最後の言葉。これは本当に感動です。先生は嘘をついていました...明治の先生の話し言葉には気品を感じます。ただ土下座するのは不要だと思います。ここは賛否あるようですけれど。

さて少年俳優です。教え子の仙太役に石田星空君、省吾役に斎藤汰鷹君。思ったより出番もありました。当時はみんな貧乏で子沢山。勉強が出来ても進学(高等小学校)なんて簡単に出来ない時代。先生は彼らに目をかけます。エコヒイキと紙一重ですけれど。

どんな科目もしっかり出来る仙太。
(石田星空君。髪型はアレですが汚れた顔が...)
先生が下宿するお寺へ野菜を持ってきた。
帳面の御礼。でももったいなくて帳面が使えない...


本当は頭がいいのに勉強しない省吾。
先生。仙太と一緒に算術の勉強をしないか?
省吾が慕っていた長兄が旅順で戦死した。
(こんな時代だったのですね)


先生が東京へ出発する日。授業を抜け出してまで教え子たちが送ってくれた。涙で。
(先生冥利に尽きる時間。おまけに恋していたお寺の娘も覚悟を持ってやってきた)


※後記
本作は「全国水平社創立100周年記念映画製作委員会制作」となっていますが、私には政治的なものはありませんので、関係団体等への関心は全くございません。

石田星空君。ちょっとブリッ子ぽさが目立つ感じの子役さんでしたが、本作では全く印象の異なる顔つきで驚きました。声はまだ高いのですが、成長しましたねぇ。明治時代なのに丸刈りにしていないのは違和感もありました。ただ当時の男児は長めの丸刈り(五分刈り)が主流とはいえ、坊ちゃん刈りなど長髪の子もいたそうです。昭和に入って戦争の時代になると短い丸刈りにしないと非国民。





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