ある男 (2022年)

作品総合評価 B+
少年の出番 10数分(少年俳優は数人登場)
寸評 複雑な原作小説を2時間でまとめた手腕は見事
【少年映画でない理由】好演だが、あくまで脇役。
映画情報など 2022年公開。BD/DVD発売中。
写真は坂元愛登君。


芥川賞作家の平野啓一郎氏の原作。2022年度日本アカデミー賞で作品賞など9部門を独占。大変評価の高い作品です。少年俳優としても坂元愛登君が、キネマ旬報の新人男優賞で受賞こそ逃しましたが、かなりの票を獲得していました。そのため是非とも見たかった作品でした。

父さんは実は別の人だった。息子にどう話してよいか悩む母。

離婚して文具店を営む母(安藤サクラ)はお客だった父(窪田正孝)と再婚して4年が経った。血の繋がらない息子のユウト(坂元愛登)だったが、谷口が大好きだった。その谷口が事故死。1周忌に父の兄が来たが写真を見て、これは弟ではない!と言い出す。母は弁護士(妻夫木聡)に調査を依頼。DNA鑑定で別人と判明。父はと呼ばれる事に。

ここから弁護士が主役。Xの身元を探るうちに戸籍交換を斡旋する男とコンタクト。やがて父の身元が判った。Xの父は死刑囚。それを忌み嫌ったXは転々と職を変え、やがて戸籍を交換して別人に。母とめぐり逢って人生をリスタートした。連れ子のユウトも、後に生まれた実子の妹も精一杯愛したのだった。


とにかく複雑なストーリーです。でも息子ユウトの視点に立ってみれば意外にシンプル。大好きだった父の死。そして父が別人だったこと。それはショックには違いない。でもユウトにとってもれば父が誰であれ、人間として父を愛する気持ちは変わらない。それを再認識しただけ。

主人公は妻夫木聡さん演じる弁護士。Xなる男の身元を追っていくストーリーには見入りました。本当に面白い。しかしその裏にはドロドロした世界。殺人。貧困。在日差別。弁護士には美人と妻と可愛い息子。しかし実は弁護士も在日3世。おまけに美人妻は不倫をしている。一筋縄ではいきません。

一方で早々に死んでしまう父(X)を演じた窪田正孝さんの凄味のある演技は素晴らしい。もちろん今、旬の女優さんである安藤サクラさんは言うに及びません。そして坂元愛登君。本当に好演でした。中学生になってもこんな素直ないい子、まず見当たりません。

でもキネマ旬報で新人男優賞に推されるかと聞かれれば、本作だけを見る限りボリュウム不足です。映画の根幹に関わってくるような役ではありません。「ぜんぶ、ボクのせい」の白鳥晴都君や、「サバカン」の2人と比べる事は困難です。とはいえ将来を期待できる新人俳優である事は太鼓判!

母が再婚した頃の幼いユウト。
新しい父はユウトに優しかった。
中学生になったユウト。妹も生まれた。
中学生になっても父が大好きだった。


登校中のユウトに父が声をかける。乗ってけ!
時にはそのまま父の職場へ(学校サボって?)
目の前で父が死んだ。倒木を防ごうとして...
ユウトの頭の中は真っ白だった...


少年時代の父。それは運命の日。
帰宅すると、少年の父は血まみれ。
刃物で人を殺していたのだ。
少年の目は凍ったまま。


弁護士と彼の可愛い息子。
一見、幸せそうに見える家庭。しかし砂の城...
真相が判明。ユウトは母に話をする。父さんは、
自分がして欲しくても、して貰えなかった事を
僕たちにしてくれてたんだ...全身全霊で。


※後記
映画もよく出来ていましたが、やはり平野啓一郎さんの原作を読んでみたい。そう思ってAmazonでポチッとしてしまいました。ただ映画は映画。原作は原作主義ですので、このレビューを変えるつもりはありません。





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