百花 (2022年)

作品総合評価
少年の出番 数分足らず(主人公の子供時代)
寸評 認知症になった母。息子の思いは複雑。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 2022年公開。BD/DVD発売中。
写真は桑名愛斗君。


認知症になった母と息子の思いを描いた作品だとは知っていましたが、また菅田将暉さんか。少し食傷気味(スミマセン)だと思っていましたのでスルーしていましたが、WOWOWで鑑賞。やはり見てみると色々と興味深い点もあります。子供時代を演じた桑名愛斗君も印象に残りましたし。

母ひとり子ひとり。二人の絆は深いものだったのに。

音楽の仕事をする葛西泉(菅田将暉)。妻が初めての出産を迎える時、実家の母が認知症になった。父はいない。泉は仕事と妻の出産に気遣いつつも実家へ戻って母の介護を始める。しかし母の症状は悪化。介護付き高齢者住宅へ入居することに。母はしきりに「半分の花火を見たい」と言う。

泉が小学生(桑名愛斗)の頃、母は泉をひとり置いて家を出て、1年間愛人と同棲した事があった。母は何の謝罪も言い訳もしない。それが泉の心のシコリになっていた。実家の処分のために整理をしていた時、母のメモ帳を発見。母の思いを知る泉。そして半分の花火の意味も判った。


もともと母子家庭。しかし母はまだ幼い小学生の息子を置き去り。お金を置いて行くとか、親戚に連絡するとか一切なし。息子は最初、誰にも助けを求めず、たった一人で生活。しかし家の中の食料が尽きた時、仕方なく祖母に助けを求めました。こりゃ本当に酷い母ですわ。

その母は神戸で愛人と生活。ところが阪神大震災で男が行方不明。母はしれーっと帰ってきた。普通なら息子はグレても仕方ありません。しかし息子は(表面上は)母を許し、よく出来た青年に成長します。

母はあえて息子に何も話さないまま、気づけば認知症。でも症状が軽いうちに息子への心情をメモに綴ります。そして見たいといった半分の花火とは。母が戻ってきた時に息子と一緒にマンションから見た花火。建物の影で半分しか見えなかった花火。「半分」に何か意味を重ねているのでしょう。

息子役を演じた桑名愛斗君。本当に可愛くてイケメン。こんな子を放ってしまう母親なんて。でもやっぱりいるのですね。母ではなく女になることを優先してしまった。これを私は責める事は出来ません。


息子が幼いときの思い出。
何の心配も無かった。母が去るなんて...



母に髪を乾かしてもらう。
(笑顔が本当に可愛い)
母が帰って来ない。
(まだ半ズボンの時代)



ついに電話をする。
母と一緒に夕陽をみる。




※後記
あの阪神大震災が起きたのは1995年。そのすぐ後にはオウムサリン事件。何か社会が変わってしまったような年でした。あまり関係ありませんが、この年あたりには少年の服装である半ズボンが姿を消してしまいました。

もう一つ。老親が認知症や要介護者になってしまった場合。本作では介護付きの高齢者住宅に入居となっていますが、これはとてつもなく大きな費用がかかります。私には厳しいお話。もっと不謹慎な話ですが、末期の1年程度なら何とか捻出できても、長期間になると破綻します。親の旅立ちを願うようになるのは悲しい。





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