とべない風船 (2022年)

作品寸評 男と女が前を向いて歩き出す話。やや冗長。
少年の出番 ほんの少し(2人いますが、氏名は判らず)
見どころ 瀬戸内海の漁港が素朴で美しい。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 2023年公開。DVD等発売なし。有料配信あり。
写真は島の少女の兄(氏名不詳)


何の予備知識もなくWOWOWで鑑賞した作品。都会で疲れた女性が故郷の島へ戻ってくる。そしてまた歩き出す。そんなパターンの作品かと思っていましたら、もう少し捻っていました。少年俳優は殆ど出ないのですが、ちょっと引っかかった子がいましたので簡単にレビューします。

真ん中がサキ(本作のキーとなる子役さん)。左が兄(影は薄いが印象に残る)。

鬱になり教師を辞めた女性(三浦透子)が、一人暮しの父(小林薫)が住む瀬戸内海の島へ戻ってきた。休養して再起を図るためだった。父と懇意にしている漁師(東出昌大)は西日本豪雨で妻子を亡くして以来、自分の殻に閉じ籠っていた。女性は漁師の事が気になった。そんな時、島に住む少女サキ(有香)が行方不明になった。

島民が大騒ぎする中、漁師が素早くサキを見つけて保護。また女性の父が倒れると、漁師は漁船を飛ばして父を病院のある島へ運んだ。そんな漁師だったが、まだ心の中は妻子が重しになっている。やがて女性は島を離れる。漁師は送りにも来ない。サキが強引に漁師の家に駆け込んだ。そして庭の黄色い風船が空に飛んだ。


漁師は庭の物干しに黄色い風船を繋げています。これは映画『幸福の黄色いハンカチ』にならって、息子コウタと妻が帰ってきたら目印になるようにと。漁師に助けられた少女サキは、漁師を慕って家に遊びに来るようになりました。そして庭の風船を見つけて触ろうとしますが...

漁師はこれを阻止します。ごめんね。この風船はコウタたちのものなんだ。サキは不服そうでしたが触りません。しかし女性が島を出る時、サキは閉じ籠っている漁師の家の戸をバンバン叩き、強引に入ります。そして漁師を促して庭の風船を空に放ちました。

風船は喜ぶように空へ浮かび、漁師の顔は吹っ切れたように明るくなります。これで前を向いて進んで行くのでしょう。妻子もきっとそれを喜んでくれる。感動のラストに違いありません。その背中を押したのが幼い少女サキ。

島へ戻って来た女性と島の少女。漁師を再生したのこの2人。ただ少し独りよがりな気もします。女性は母が亡くなったのは父のせい、そんな感じで攻める場面が嫌でしたし、サキも(邪魔な)漁師の息子コウタをとっととあの世へ送ってしまった、ともみえます。本当に天邪鬼ですみません。

さて少年俳優ですが、漁師の息子コウタは過去のフラッシュバックで登場しますが、今ひとつ印象に残りません。もう一人、サキの兄(氏名不詳)はなかなかのイケメン。サキが行方不明になった時、島の幹部から「お前は何してたんだ、ゲームか」と尋問された時の顔がずっと印象に残っています。


西日本豪雨で亡くなった息子コウタ
黄色い風船はお気に入りだった。
漁師の健太の夢に息子コウタと妻が現れる。
(コウタは正面を向いてくれず、静止画が撮れません)



漁師が作った仕掛けをみる島の子どもたち。左端がサキ。ヒザにあごを乗せている子が兄。
このあとサキは一人で仕掛けを見に来て行方不明になった。


妹が行方不明。お前は何をしていたんだ! 問い詰められる兄。
(この表情にキュンときました。私も妹がケガをして問い詰められた経験があるだけに)


ラスト。空に飛んでいった黄色い風船。これでコウタたちとはお別れ。



※後記
瀬戸内海の小島。医者のいない島も多くあるのでしょう。ドクターヘリがあればいいのですが、なかなかこれも整備が難しそうで、本作のように急患は漁船で搬送するしかないのかもしれません。若い漁師さんが増えることを祈っています。(医師の巡回船があると聞いた事も)





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