太陽に架ける橋 ペーパー・タイガー (1975年)

製作年・国 1975年・イギリス
少年映画評価
お薦めポイント 世界の名優を相手に堂々演技の少年、安藤一人
映画情報など 1975年製作 BD/DVD販売終了(中古あり)
(写真はガンバロンでおなじみの安藤一人君)


これ、日本映画でなくてイギリス映画なんですよ。

1975年公開とは知っていましたが、見た事もなく私にとって幻の作品の一つでした。2012年にDVDとブルーレイまで発売されていたと知ったのもごく最近。2017年末、三船敏郎没後20年企画で色々な作品が放送。本作品もその一つ。ハイビジョン放送でしたのでブルーレイに録画できました。

監督は巨匠ケン・アナキン、デビッド・ニーブン、三船敏郎、ハーディ・クリューガーという英,日.独の名優が出演するなかで、日本人少年俳優の安藤一人君が彼らを食ってしまうほどの堂々の演技。映画の内容はさして感動することもないのですが、少年映画としては私の殿堂入り作品。

誘拐され監禁されたコウイチとブラッドベリー先生。コウイチは父へ手紙を書く
(信頼していたブラッドリー先生は何もせず寝てばかり...)

東南アジアのある国(架空の国)の日本大使(三船敏郎)のもとへ英国からブラッドベリー(デビッド・ニーブン)が赴任してきた。大使の息子コウイチ(安藤一人)の家庭教師として。大使は3ヶ月後に英国大使としてロンドンへ行く事が決まっており、息子コウイチに英国流のマナーを身につけさせる事が目的だ。

しかしブラッドベリーという男は虚言癖を持つペテン師で、第2次大戦中に数々の勲功があると言いふらしている。だがコウイチはブラッドベリーを心から信頼し、勇者であると信じて疑わなかった。そして事件が起こった。

反政府組織がコウイチとブラッドベリーを誘拐。政府が逮捕した組織メンバー全員の釈放を要求。大統領は拒否、大使はそれを受け入れた(息子の命よりもこの国の大義を優先した)。一方誘拐されたコウイチはブラッドベリーが何とかしてくれる信じているが、彼は臆病な本性を見せ始める。少年の期待に追い詰められたブラッドベリーは...

 ペーパー・タイガー

原題はペーパータイガー即ち張子の虎。これが一番映画の内容を表しています。太陽に架ける橋なんて意味のない邦題をつけなくても。デビッド・ニーブン氏演じる家庭教師は虚言で膨らませた風船のような張子。でも張子であってもトラ。少年の信頼を裏切ることが出来ずにトラを演じきったというストーリー。

実際のデビッド・ニーブン氏は英国陸軍大佐として戦争にも参加されたそうで、初代の007ジェームズ・ボンドを演じるなどアクション俳優です。しかし本作のような頼りない英国男の方が、味わいがあって似合っている気がします。

われらが三船敏郎氏。黒沢映画の日本の武士というイメージでそのまま演出されてしまいましたので、重厚で貫禄十分ですがあまり面白みはありません。もう一人ドイツ人俳優のハーディ・クリューガー氏も印象には残りますが、とってつけたような役なのは少し勿体ない気がします。

(三船敏郎を世界スター扱いすると日本人が喜ぶという事で、海外の大物俳優と共演する企画がありました。1971年のレッド・サンでは三船、アラン・ドロン、チャール・ブロンソンと日仏米の俳優が共演。その中で白人女性が入浴中の三船をみて「あなたの肌は白いのね」なんて歯の浮くセリフを言わせます...日本人の脱亜入欧はまだ続いていたのかと)

先生と初めて会った時、コウイチは剣道の練習中
先生の話に興味しんしん。次第に惹かれていく。
(実は全てブラッドベリー先生のホラ話)

 世界にデビューした日本人少年俳優

さていよいよ安藤一人君について。日本人少年が世界のスクリーンで重要な役を担うのは彼が初めてかもしれません。(そこまで映画史は詳しくありませんので間違ってたらすみません) もちろん世界にファンのいる小津安二郎監督作品などでは少年俳優も活躍しています。でもあくまで日本映画に出ていた少年俳優。

本作品は英国映画として主役クラスを抜擢する訳ですからまた違います。重厚で貫禄ある三船敏郎氏の息子役ですから、歌舞伎子役のような伝統的日本人と思いきや、安藤君ですよ...(すみません。こんなこと書きながら、彼の事は全く知りません)

長髪でエクボが印象的、かつ東洋的なエキゾチックさを兼ね備えた少年を抜擢したのでしょう。なおキャストロールには「ANDO」としか書かれていません(KAZUTO ANDOではなく)。これも少しミステリアスな雰囲気を出すための仕掛けなのかも。

とにかく右をみても左をみても大俳優、それに臆することなく日本人離れした可愛さを発揮してくれました。シャイといわれる日本人はどこへ行ったのか...やはり海外のスタッフに指導されると、日本人もポジティブになっていくのでしょう。

本作の好演のあと、国内で少年が主役の特撮番組小さなスーパーマン ガンバロンに主演します。この番組はスカパーで全話視聴しましたが、映画で鍛えられたのでしょう、ハツラツとした少年を堂々と演じています。ただその後は子役のサダメなのか成長とともに見なくなってしまいました。

残念ながらブルーレイもDVDも販売終了しているようですが、中古品は出回っており、見ていない方は是非ともご覧になって下さい。開発途上国の政治的なことも興味深くみれます。(1980年くらいまでは、反政府勢力=共産ゲリラでした。今は宗教系組織)

反政府組織に誘拐されるコウイチ
コウイチの期待に押されて二人は脱出する事に
(コマンド部隊出身なので顔に墨.ここへきてもまだホラ..)

何とか脱出したが敵に追われて大ピンチ
しかし最後はお約束。父たちが救出してくれた。
全てが終り、先生の経歴詐称もバレたが..
コウイチは先生とまた勉強したいと..
(この衣装で冒険して欲しかったりして)


映画最後のキャスト紹介画面。彼は「ANDO」だけ。




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