冬冬の夏休み (1984年)

製作年・国 1984年・台湾
少年映画評価 A+
お薦めポイント どこか懐かしい台湾の田舎の風景。そして少年たち。
映画情報など BD/DVD発売中。
写真は冬冬役の王啓光君。


台湾の巨匠、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の自伝的な作品。夏休み。少年が祖父の家で過ごすという、定番中の定番のようなストーリーですが、侯監督の手腕は見事なものだと再確認。

日本では少し遅れて1990年公開。この時に映画館で見ました。その後、頭の隅には残っていたもののビデオやDVDは入手せず。今回レビューのために約30年ぶりに鑑賞。ゆる〜い時間が流れるにも関わらず最後まで一気見。やはり素晴らしい。

本作を見るキッカケ。それは主人公の少年の名前トントン(冬冬)。今は憎まれオヤジになってしまった坂上忍主演の「ふしぎ犬トントン」を思い出してしまい、服装も当時の坂上忍君っぽかったので....

祖父母の住む田舎の駅に着いた冬冬と妹。
(全編にわたって鉄道が効果的に使われています)

台北に住む12歳の冬冬(王啓光)は小学校を卒業して夏休み(台湾の学校は9月始まり)。しかし母親が重病で入院。父は看病で忙しく、冬冬は幼い妹と祖父の田舎で夏休みを過ごす事となった。祖父は医師で家は病院。田舎でも裕福な家だった。

冬冬は地元の少年たちと仲良くなり、楽しく夏を過ごす。川で泳ぎ、亀や虫を捕ったりと。妹も兄にくっついてくるが、邪魔で仕方がないので除け者にする。しかし妹もくせ者。仕返しに泳いでいる少年達の服を川に流してしまった。少年たちは裸で帰るはめに...

のどかな子供だけの夏。しかしそこへ大人の影が被さってくる。冬冬を可愛がってくれた若い叔父は祖父に勘当されて恋人と寂しい結婚。奇声をあげて歩き回る発達障害の女性(みんな気持ち悪がって側に来ない)は冬冬の妹を助けてくれた。しかし彼女にも悲劇が訪れる。

一時危篤に陥った母親が快復。夏休みも終わり、冬冬と妹は台北へ帰っていく。一夏で成長。もう中学生だ...

 静かな情景の中で際立つキャラクター。

夏休み。田舎の家。ただそれだけでノスタルジーに浸れる雰囲気ですが、台湾の若き巨匠はそれだけに甘んじませんでした。厳格だけれど家族への愛のある祖父。頼りないけれど人間味溢れる叔父さん。

兄に疎まれながらも決して怯まない。名前はティンティン(微妙な発音)。この妹のキャラが抜群。意志のはっきりした表情が可愛い。そして妹が懐くのが、知的障害のある寒子とい女性。訳判らない事を口走りながら村を歩き回る。彼女の父親も途方にくれる毎日。

しかし寒子はうら若い女性。村の男が彼女を...寒子は身籠ってしまった。周囲の人間は堕ろせというが、彼女の父親は産ませると。自分はいつか寒子の面倒は見れなくなる。子供がいれば彼女の助けになる...なにか今の社会で起こっている問題そのもの。

そんな中で主人公の冬冬のキャラクターが今一つ弱いのが残念。それなりにワガママ。それなりに自分勝手。それなりに優しい。それでも夏の終わりにほんのチョット成長した姿がさわやかでした。再度ブルーレイ化して欲しい作品です。

田舎町へ向かう列車の中で。
(昔の新幹線CM,ハックルベリーを思い出す...)
祖父母に挨拶する冬冬。大きな家
(お祖父さんは取っつきにくい...)


早速、地元の少年たちと友達になった。
(右端が冬冬。都会の子は白いハイソックス)
川で泳ぐ子供たち。地元の子は裸で。
(仲間外れにされた妹が、全員の服を川に流した...)


冬冬はパンツをはいていたので助かった。
(他の少年たちは裸で家に帰っていった...)
虫取り。怪しい男をみつけた...
(中央が冬冬。毎日違うジョギパンで。おしゃれ...)


母の容体が山場。心配で眠れない。
(また違うジョギパン。何枚持ってきたんだ...)
母は快復へ。夏休みも残り僅か。
(台北へ戻ったら中学生になる.)



※後記
日本への憧憬が強いという台湾の人々(特に本省人と言われる方々)。侯孝賢監督は外省人らしいのですが、台湾の伝統に暖かい目を向けています。一方、本作品は日本の映画監督にも影響を与えたように思われます。寒子は荻上直子監督「バーバー吉野」にも似たような人が登場しますし、是枝裕和監督「歩いても歩いても」では祖父の家が病院という設定など。いいものは場所なんか関係なくいいものですし。




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