さよなら子供たち  (1987年)

製作年・国 1987・フランス
少年映画評価
お薦めポイント 戦争末期。2人の少年の友情と別れ
映画情報など 1988年国内公開。BD/DVDあり。
写真は主役のガスパール・マネッス君。


これは少年映画の名作中の名作と言っても過言ではありません。今までレビューを書こうと思いながらも出来なかったのですが、ようやく作成。あまり熱を入れずさらっと。

第2次大戦中のユダヤ人の悲劇は様々な物語を生み、数え切れないくらい映画化されてきました。それでも語り伝えないといけない歴史だとは思います。中には興業を狙った安易な作品もあり、少し食傷気味の気分もしないではないです。(特に近年のイスラエル右派政権や米トランプ大統領をみていると..)

おっと政治的な話はなし。とにかく2人の少年がいい。特に主役のガスパール君は美少年。1987年のヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞するなど映画全体としても素晴らしいものです。

最近はブルーレイも発売されたようですので、ご覧になっていない皆様は是非とも見て下さい。
(ブルーレイがもっと安くなったら買って保存版にしたい..)

カトリックの大事な儀式。聖体拝領。神父は左のジャンを飛ばしてジュリアンに。
(ジャンは判っていたはずなのに。口を開けそうな顔が...)

ドイツ占領下のフランス。12歳のジュリアン(ガスパール・マネッス)は兄と全寮制の教会学校に入っていた。3人の少年が途中入学してきた。その1人ジャン(ラファエル・フェジト)は宿舎でジュリアンの隣のベッド。

ジャンは勉強もピアノも全てジュリアンより優れていた。そのためジュリアンはジャンを敵視して辛く当たる。しかしどこか影のあるジュリアンに次第に惹かれていく。彼の持ち物をこっそり探り、ジャンという名前が偽名である事を知った。しかしそれは口外せず自分の胸の中にしまった。

時々喧嘩しながらも2人は親密になっていった。しかし終わりは突然だった。ユダヤ人を隠しているとの密告でゲシュタポ(秘密警察)がやってきた。校長の神父と3人の少年を連行。そしてアウシュヴィッツで亡くなった。

 1944年1月。僕はこの冬の出来事を一生忘れない。

これは映画のラストでジュリアンが呟いた言葉。これは多分ルイ・マル監督自身の言葉なんでしょう。勉強も音楽も全て優秀だったけれど、どこか暗くて人を寄せ付けない雰囲気の少年。彼は黙ってドイツ兵に連れられていった。

そんな彼が子供らしく声を出して笑った瞬間があった。消灯後のベッド。ジュリアンと一緒に千夜一夜物語(実は結構エロい)を読んだ時の事。連行されて最後の別れ間際にジュリアンはこの本をジャンに渡した。収容所でも読めたの?笑う事が出来たの?(切ないなあ..)

もう一つ印象的なシーン。ゲシュタポが教室で「ユダヤ人は誰だ?」全員知らない。ジュリアンは思わずジャンを見た。それをゲシュタポは見逃さなかった。結果的にはジュリアンがジャンを売ってしまったも同然。(どのみち判明したとは思うけれど、軽薄な行為だったなあ..)

 もう一つの差別。階級社会。

巨匠ルイ・マル監督作品は数本見ましたが、本作以外はどうも好きになれません。富豪の生まれで上流階級の話が多いからでしょうか。使用人や家政婦などを人間と思わないような描き方が目に付くのです。

本作でも教会学校の生徒はみな上流階級の息子。学校に雇われている賄いの男ジョセフ。年齢不詳ですが、まだ少年のようにも見えます。ジョセフは生徒たちにからかわれたり集団暴行まで。ジョセフも小悪党で食糧の横流しが発覚して解雇。それを根に持ってゲシュタポへ密告。

校長の神父は優秀なユダヤ人は庇っても、身寄りのない下層階級の賄い少年には冷たいのです(もちろん神父は賄いに雇う事でジョセフに慈悲を示したのでしょうけれど)。少し批判めいた話になってしまいましたが、12歳のガスパール君を見るだけでも価値がありますよ。

ジュリアン。休暇が終わって母との別れ。
また教会学校へ戻っていく。
転校生ジャンとジュリアンの出会い。
(イケスカない奴だと警戒するジュリアン)


体育中でもジャンが気になるのか...
(♪体育の時間、無駄に張り切る! 見てくれ〜た?)
喧嘩しながらも次第に親密になる2人。
(身長差のある2人だけれど)


風呂で溺れたと勘違いして飛んできた先生。
(戦時とは思えない風呂。日本の疎開とは大違い)
ジャンは夜中にベッドでユダヤ風?お祈り
一方のジュリアンはオネショとは情けないヤッチャ...


ベッドで千夜一夜物語を読む2人。
(2人の幸せな時間。でもそれは長くは...)
連行されるジャン達を見送る同級生たち。
ジュリアンは手をあげたが目はうつろ。でも一生忘れない



※後記
・2人の名前はジュリアン・カンタンとジャン・ボネ。ここではファーストネームに統一しました。

・紹介したい場面は山ほどあります。宝探しゲーム、チャップリンの映画鑑賞、2人の取っ組み合い...でも皆様、それは映画のDVDを是非とも見て下さい。

・聖職者による少年へのセクハラ事件が教会を揺るがしています。本作に直接的な場面はありませんが、ジュリアンの入浴シーンで彼を見つめる聖職者の目が何となく。1971年『好奇心』では主人公15歳の(美少年ではない)少年が神父から太腿を触られるシーンがありました。ひょっとしてルイ・マル監督もそんな経験があったのでしょうか。




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