顔のない天使 (1993年)

製作年・国 1993年・アメリカ
少年映画評価
お薦めポイント 性的暴行前科を持つ元教師と少年
映画情報など DVD発売中。
写真はニック・スタール君。


オーストラリアやハリウッドで活躍した俳優メル・ギブソン氏が初監督した作品。アクションや情熱的な作品が多い俳優さんにしては、非常に地味な映画ですが、少年映画ファンとしては外せない映画だと思います。(頭の痛い問題提起という意味で)

舞台はアメリカ東北部。高級避暑地に13歳の少年チャック(ニック・スタール)の一家がやって来た。母と姉、妹の4人で父はいない。3人姉弟は全員父が違うという家族で、おまけに母は4人目の男と一緒になろうと活動中というから、家族姉弟はバラバラ。特にたった1人の男であるチャックは浮いていた。

チャックの父はパイロットで、朝鮮戦争で戦死した英雄だと聞かされ、チャックも軍人になろうと士官学校(幼年学校?)を受験したが失敗。避暑地で受験勉強に励むが、どうにも身が入らない。そんな時、町外れに住む元教師マクラウド(メル・ギブソン氏)とすれ違う。

顔に火傷の残る不気味な男だが、かつては非常に優秀な教師だったという話を聞いて、彼に家庭教師になって貰おうと考える。最初は全く拒否していたマクラウド。しかしチャックの熱心な様子に根負けし、彼を受入れる事になった。しかしマクラウドの教育方法は非常にユニークだ。

戸惑い、時にはキレるチャックだが、マクラウドの意図を理解すると、その素晴らしさに心底参ってしまう。そしてどんどん実力アップ。二人は師弟というより父子のように親密になっていくが、やがて破局が訪れる。チャックの姉の言葉「お前の父は英雄なんかじゃなくて、ただのアル中。事故を起して死んだのよ!」

ショックを受けたチャックは家を飛び出し、マクラウドの家へ駆け込む。事情を聞いたマクラウドはチャックを一晩家に泊めるが、これがいけなかった。家に帰らないチャックを家族が警察に通報。翌日早朝、警察がマクラウドの家を捜査にやってきた。

実はマクラウドは教え子に性的暴力をふるったあげく自動車事故を起し、生徒は死亡、自身も顔半面に火傷を負った前科があったのだ。そんな事は知らないチャック。「な〜に」と半分寝ぼけて、下着1枚で起きてきた。その姿を見た警察はマクラウドを再犯者と決めつける。

やがて裁判所命令でマクラウドはチャックから永久に隔離される。でもチャックはマクラウドを信じ、士官学校にも合格、そして卒業。その式典を遠くから見つめるマクラウドの姿があった。


マクラウドの指導法は独特だった
反発しながらもマクラウドに惹かれていく

 所感など

いや、ちょっとストーリー描写に力が入ってしまいました。なので所感は少なめにします。メル・ギブソン氏と対等以上にわたりあった少年俳優ニック・スタール君。意思の強そうな眼、きりっとした唇の典型的な秀才少年ですね。

まず、怪しげな男の家に少年が自分からわざわざ押しかけるなんて、日本人の感覚ではありえないのですが、欧米の少年達にとっては普通なのでしょうか。マクラウドの前科(生徒への性的暴行)を「本当なの?」と訊くチャック。マクラウドは否定も肯定もせず「君自身が信じていることが真実だ」と言われ、少年は無実を確信する。この描写が最高でした。

一方のマクラウド。無実の罪を科せられながら、何一つ抗告しない。「真実は言葉でなくても伝わる」なんてのは東洋的な考え方だけかと思っていました。そして隠居生活のように社会の陰で静かに暮す。でもこれって、一見寂しい人生の敗者の生活に見えますが、私には魅力的な生活です。何もしなくても、静かに生活できる資金があるのならば。おまけにチャックのような少年が勝手に家に押しかけてくれるのならば。

ちょっと書き過ぎました。でも、なかなか難しい問題を提起している映画だと思います。レンタルでもありますし、Amazon等でも廉価で販売されているようですので、是非ご覧下さい。




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