飛ぶ教室 (2003年)

製作年・国 2003年・ドイツ
少年映画評価
お薦めポイント 寄宿舎と少年合唱団
映画情報など DVD販売終了。
写真はヨナタン役のハウケ・ディーカンフ君。


少年映画による世界の旅。今回はドイツです。世界3大映画祭であるベルリン映画祭を開催する国ですが、ろくな映画を作っていない印象があります。1950年代くらいまでは名画もありましたが、その後はポルノばっかり?

主人公はヨナタン・トロッツ少年(ハウケ・ディーカンフ)。父子家庭で、父が船員で不在のため、寄宿舎に預けれらているが、問題を起こしては退学させられている。そんなヨナタンが6箇所目の寄宿舎にやってきたところから物語は始まる。

この寄宿舎では、ルームメイトの4人の少年と意気投合。また寄宿生は伝統ある少年合唱団のメンバーでもあり、その指導者のベク先生は素晴らしい男性で、ヨナタンもその人格に惹かれていく。そんなある日、ヨナタンと4人の仲間は、放置された古い列車を見つけて隠れ家にする。

しかし、この車両の持ち主だという男が現れた。でも、この男は5人に列車を使う事を許してくれた。一方、ヨナタン達の通う学校には寄宿生以外に一般生徒もおり、大変ガラが悪い連中だ。この一般生徒に妨害され、少年合唱隊のコンサートは滅茶苦茶になってしまった。

その汚点をクリスマスコンサートで取り戻そうと、ヨナタン達は密かにミュージカルの練習を始めた。その台本は偶然古本屋で見つけた「飛ぶ教室」。寄宿生達はこの台本をとてつもなく気に入ってしまい、練習に力が入る。

ところがだ。練習を見たベク先生は顔色を変え、「この台本は中止だ」と宣言する。おさまらないのが生徒達。怒ったヨナタンが蹴った灯りが倒れ、火事になってしまったから、さあ大変。ヨナタンが犯人であるが、ベク先生は「責任は自分にある」と彼をかばう。先生は責任を問われ、危機に陥る。

実は「飛ぶ教室」の作者はベク先生だったのだ。そして、そこには分断された東西ドイツの苦い思い出があり、何も知らない教え子達が演じることに絶えれなかったのだった。ここから物語は大転回。あの放置列車の男。実は彼がキーマン。ヨナタン達はベク先生と過去との感動的な出会いを演出し、そしてフィナーレのミュージカルは、もちろん「飛ぶ教室」


少年合唱団に。右端がヨナタン
 所感など

原作はドイツの作家エーリヒ・ケストナー氏の有名な児童文学作品。私は読んだ事はありませんが、日本でも人気の児童小説との事です。この映画を見たのは、東京・恵比寿のガーデンシネマ。12月の日曜日で子供達が大勢いて満席でした。(記念品に24色のクレヨンを貰いました。でも、どこかへ行ってしまった)

近くの席に座っていた小学生の男の子、映画が終わって母親へ開口一番「本で読んだのと全然違う」というのが印象に残っており、家に帰ってからネットで色々調べました。基本的なストーリーは、ほぼ同じらしいのですが、主人公や配役が全然違うようです。

疑問その1(原作では男子校のみ)
映画では、男子のみの寄宿生(裕福層)と、男女共学の一般生徒(一般・貧困層)が共存。こんな学校ってあり得るのでしょうか。しかも寄宿生は全員、マスコミにも取り上げられるような伝統ある少年合唱団メンバーになっているが、一般生徒は入団出来ない。こりゃ格差社会なんて生優しいものじゃないでしょう。そりゃ、いじめられるわなあ

疑問その2(原作では少女なし)
映画では、一般生徒の悪ガキのリーダーが女子生徒。おまけに、この少女と主人公のヨナタン少年の間には、ロマンスのような雰囲気が。男女平等主義による原作の改訂(ネジ曲げ)は日本だけでなく、ドイツでもそうだったのですね。

少年同士の友情や心の成長にスポットを当てた話だと思ったのですが、女の子が出ると、どうしても友情より、男女間のロマンスが目立ってしまい、散漫な感じがしてしまいます。

疑問その3(伝統ある少年合唱団への入団?)
これは原作云々とは関係ありませんが、かなり疑問に思ったので。それはヨナタン少年が寄宿舎に転校してきたら、素質に関係なく自動的に少年合唱団に入ってしまうシステム。適当な合唱団だったら、それも教育の一環かもしれませんが、どうもウィーン少年合唱団みたいに、伝統と実力ある合唱団とのこと。

クラスメイトからヨナタンへの言葉「歌えなかったら、適当に口だけ動かしていたらいいよ」これって、非常にリアル過ぎて、夢も希望もなくなってしまうんですけど。ひょっとしたら、日本へ公演に来るヨーロッパの有名合唱団の中にも、そんな奴がいるのかもしれないって。

 とはいえ、見て欲しい名作でもあります

また悪い癖が出て、辛口ばっかり並べてしまいました。些細な欠点ばかり気にして、映画にケチをつけていると、豊かなムービーライフなんておくれません。

本当は感動してしまった名作でした。ストーリーに書き切れなかった沢山の見どころがあります。風船に乗って飛ぼうとしたウリー少年。久し振りに帰ってきた船員の父をみて、生意気だったヨナタンが、まるで5歳の子供に戻ったように飛びつくシーンなど。皆様も是非、ご覧になって下さい。




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