MUD マッド (2012年)

製作年・国 2012年・アメリカ
少年映画評価
お薦めポイント 14歳、危ない年齢の少年の魅力
映画情報など 2014年公開/DVD発売中
写真は主役少年のエリスとネックボーン


本作品を知ったのは、いくつか購読している映画関係の無料メルマガにて。いつもは読み飛ばすのですが、結構いい評価が書いてあるので、少しチェックしていました。

次は映画雑誌「キネマ旬報」の公開予定映画レビュー。なぜか少年俳優が出てくる映画となると、必ず、北川れい子さんという評論家がしゃしゃり出てきて、ボロクソの評価を書いているんです。(そんなに少年映画が嫌いなら、他のジャンルの映画を見てくれればいいのに)

その北川さんの評価が★4つですから、これは相当いい作品かもしれないと思い、大阪での公開初日に出かけました。映画館は、またまた梅田スカイビルにある天井の低い困った映画館(マイナー系洋画の少年映画はココでしかやらないのが辛いところ)

このシネ・リーブル梅田、ようやく座席指定システムを導入し、受付で座席を指定する事ができるようになっていました。これで最前列に座れるかな?と不安を持ちながら並んで待つ必要がなくなりました。

ネックボーン(左)と、エリス(右)

ミシシッピ川のボートハウスに住むエリス(タイ・シェリダン)は14歳。親友のネックボーン(ジェイコブ・ロフランド)は両親がいないが、叔父と2人でやはりボートハウスに住んでいる。ある日2人はボートに乗ってミシシッピ川にある小島へ遊びに行き、洪水で木の上に引っ掛かった小型船を見つける。「僕たちのものだ」と喜ぶ2人。

ところが、そこに現れたのが怪しい男マッド(マシュー・マコノヒー)。「食べ物を持って来てくれないか?金は払う」胡散臭く思いながらも、エリスは食べ物を持っていく。やがてマッドが殺人犯で逃亡中である事が判るが、マッドの純粋な人柄にエリスは惹かれていく。

マッドはどうしても会いたい恋人ジェニファーがいた。エリス達はマッドとジェニファーを会わせようと画策するが、追手が迫ってきた。警察ではなくギャング達だ。木に引っ掛かった船を下し、修理して逃げようとするが。

 スタンド・バイミー? ハックルベリー? いや何となく北欧風
エリスとマッド

130分。ハリウッド映画では考えられない長時間。でも久し振りに気骨のある映画を見た感じがして満足です。映画のキャッチコピーは、現代のスタンド・バイミーとかハックルベリーの冒険とか書かれていますが、アメリカンな感じより、ヨーロッパ的な印象を受けました。

その理由はエリスを演じたタイ・シェリダン君。どことなくスウェーデンやデンマークの映画に出てくる印象なんです。映画『未来を生きる君たちへ』に出てきたエリアス少年に、何となく似ています。映画の舞台こそミシシッピ川ですが、やや陰鬱な空気と、ゆっくりしたストーリーの進行に、どことなく北方の香りを感じるのです。

ただ、最後の展開はいただけません。ドンパチ、ドンパチやって、最後は予定調和のハリウッド的大団円。もう少し余韻を残す終わり方は無かったのでしょうか。この監督さんの次の課題ですね。

 男女の絆と少年の成長

本作品のもう一つの主題(こっちが本来かもしれませんが)は、男女の絆です。マッドは幼い頃からジェニファーに熱を上げ、何度も裏切られてきました。ジェニファーのために殺人まで犯したのですが、最後まで、すれ違い。女なんて信じてはいけない!

そんな事を主張したい映画かと思ったくらいでした。しかし、そうではありません。マッドとジェニファーはすれ違いでしたが、最後は心を通わせます。それを14歳のエリスも、しっかり判ったはずです。

 見事な少年たち!

そして何と言っても二人の少年俳優が素晴らしい。特にエリスを演じたタイ・シェリダン君には、何か賞をあげたいくらい。14歳という微妙なお年頃。大人のような顔を見せるかと思うと、幼い表情もあり、そのギャップを見ているだけでも満足感を得られます。

泣きながらマッドに殴りかかり、走って川に落ち、毒蛇に咬まれます。20分で死ぬという猛毒の蛇。マッドは逃亡中である事を忘れてエリスを抱き病院へ走ります。咬まれた場所を探すために身体中をまさぐられ、お姫様抱きされるエリスが、何となく色っぽかったなあ。

もう一人、ネックボーン役のジェイコブ・ロフランド君。短髪の容貌は、それこそ「スタンド・バイミー」出演時のリバー・フェニックスさんにそっくりですが、リバーとは違って、やや気の弱い繊細な少年役で、エリスとのコンビは抜群でした。

いや本当にいい作品でした。例によって上映館も少なく、パンフレットも製作されていないとの事ですが、お近くで上映の際は絶対に見て下さいね。





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