グッバイ、サマー (2015年)

製作年・国 2015年・フランス
少年映画評価 A-
お薦めポイント 女の子のような14歳の少年。ちょっとおバカでエロ。
映画情報など 2016年公開。DVD/BD発売中。
写真は主役の一人アンジュ・ダルジャン君


14歳の少年2人のロードムービー。しかも1人の少年は少女にしか見えない風貌。このシテュエーションを聞いた瞬間に「本年イチオシの洋画、絶対見なければ」と誓った作品です。平日の金曜日に休暇をとって鑑賞しましたので、席はガラガラですが、非常に快適でした。

テオ(テオフィル・バケ君)とダニエル(アンジュ・ダルジャン君)

パリで暮す14歳の少年ダニエル(アンジュ・ダルジャン君)の悩みは女の子に間違えられること。しかし異性への関心も強いお年頃。そこへ変り者の少年テオ(テオフィル・バケ君)が転校してきた。家は貧乏だが、機械いじりの好きなテオはガソリン臭い服を来ており、クラスの除け者にされるが、ダニエルとは妙に気が合う。

ダニエルとテオは廃品で見つけた芝刈機用エンジンを修理し、これでなんと車を作ってしまった。車両認定は不可だったので外装を小屋のようにして偽装することに。(警察が来ると道端に停車してタイヤを隠し、小屋に見せる。こんなのでダマせる訳は無いのですが、まあ映画ということで)

夏休み。父とソリの合わないテオは、ダニエルと2人で、この車で家出することにした。いよいよロードムービーの始まりです。

 なぜPG12なの

さて楽しみにして鑑賞しましたが、出演者もストーリーもほぼ予想の範囲内。ひと夏の少年の冒険物語でしたので、見終わってそれなりの満足感は得られました。でも何となく引っかかるものがあるのです。もう一つ爽やかさが足りない。映画を見終わって気づいたのがPG12指定(12歳以下は親の指導など注意が必要)

さすがはお色気の国、おフランス。少年といったって14歳ですから、サカリがつく年齢です。女の子のような風貌のダニエルだって、自分でエロ絵を描いては、それをオカズにして毎晩マスターベーションを試みます。テオに「うまく射精できないんだ」などと打ち明けるシーンも。

映画の後半で、ダニエルは女の子のような風貌を断ち切るため、頭を丸めます。ヘアスタイルは本当に重要ですね。坊主頭になったとたん可愛さ50%ダウン。身体つきも女の子ではなく、手足のがっしりした少年。空想で女の子と抱き合ったりもします。この辺がピュアさに欠けるかなあ。

ここで一つ。理髪店が見つからず、ダニエルが髪を切るのは風俗店。フランスの風俗は「マッサージ/散髪」なんてサービスがあるのですね。おまけに働いているのが日本人女性(いきなり日本語が)

日本のピンク街では、C国、P国、R国などの外国女性が定番ですので、これらの国の女性は日本まで来てこんな職業についているんだ、と少し上から目線で見ていました。でもフランスでは日本人といえば風俗女性なんでしょうか。(あくまで本作品だけの事ですので、実態は知りません)

 ロードムービーの醍醐味は出発時の開放感、高揚感

ロードムービーの醍醐味は、実は出発するまでのプロセスと出発の瞬間だと思うのです。現実からの逃避だったり、会いたい人を探す旅だったり。いきなり旅に出てしまったのでは面白さは半分。旅に出るまで準備したり、画策したり、苦労があって、ようやく出発できた時の開放感。これを描かないと。

本作品でも、この辺りのプロセスはきちんと踏んでいます。ダニエルとテオが家出して、自作の車で出発するのですが、ここでもう少し高揚感を高めて欲しかった。ロードムービーの最後は、どんな映画でもあっけないものです。(旅立ちの瞬間の高揚感が最も高かったのはロードムービーではありませんが「大脱走」、最近の日本映画では「奇跡」の少年3人組かな)

 少年2人の関係性

女の子のような可愛い系少年ダニエルと、イケメン少年テオの2人組。男女のような関係かなと期待(なんの?)したのですが、2人の仲は意外に淡白。可愛いけれど自分の欲望ばかり話すワガママなダニエルを、テオは兄のような態度で接します。(実際にテオ役のテオフィル・バケ君は16歳と年上)

そんなテオも最後にはキレて「もうお前とは終わりだ」と宣言。その時になって「テオがどんなに大切か」を思ったダニエルは泣きながら追いかけます。この時だけ、少し感動しました。

実はこの映画の予告を見た時に頭に浮かんだのは、日本の中学生フォークデュオ「さくらしめじ」の2人。女の子のようなダニエルは燗c彪我君、イケメンで優しいテオは田中雅功君。そんな関係を思い描きながら鑑賞していたのですが、正直言って「さくらしめじ」の2人の方が魅力的です。

2人の関係は友人でも、兄弟でも、恋人でもなく、しいていえば20年連れ添った夫婦みたいな。こんな関係をフランス人少年に求めるのは無理だったかもしれません。

ちょっと羽生結弦さんっぽい
ダニエルの幻想。幻滅ですなあ
(フランス人少年は今でも白ブリーフ)


※後記
このレビューを書いているのは2016年9月。さくらしめじなんてひょっとすると1,2年後には解消してしまって、誰も覚えていないかもしれません。その時にはこの文章は削除します。




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