The Tutor(2016年)

製作年・国 2016・アルゼンチン
少年映画評価 B+
お薦めポイント とにかく美少年と美少女の兄妹。
映画情報など 国内未公開。海外版BD発売中(Amazonで購入可)。
(写真はバレンチノ・ヴィンコ君)


2021年夏に亡くなられた少年映画の巨匠イヴァン・ノエル監督作品。本作はH・ジェームズのサイコホラー小説「ねじの回転」をノエル監督風に焼き直したもの。とにかくノエル監督は美少年俳優をみつけてくる能力が素晴らしい。本作では妹役の美少女も。

Amazonで購入したブルーレイは英語字幕のみ。私は新潮文庫の原作小説を読んだ事がありますので、だいたいは理解できました。少年への性的虐待容疑で告訴されたノエル監督ですが、本作では裸で水浴びシーンはあっても性的な映像はありません。

家庭教師の前に現れた兄エンジェルと妹エマ。美少年と美少女だが、上半身裸の野生児。

児童心理学を専攻した女性モナ(ロミーナ・ピント)は家庭教師の職に応募。人里離れたお屋敷に住む兄エンジェル(バレンチノ・ヴィンコ)と妹エマ(マレーナ・アロンソ)の家庭教師として赴任。広大な屋敷に兄妹以外は家政婦クララがいるだけ。2人は美少年と美少女だが、躾はゼロの野生児。モナは2人の教育に苦闘する。

ある夜、敷地内に男が出現。エンジェルはその男の方へ走り去った。家政婦は男は2年前に死んだ庭師に似ていると言う。それからもしばしば男が出現。警察を呼ぶが相手にしてくれない。兄妹の奇行はエスカレート。2人の両親と庭師は、前任の家庭教師に殺されたことが判った。

モナは耐えきれず雇い主である2人の伯父を呼ぶが、睡眠薬を飲まされて殺害されてしまう。


原作は寒くて暗いイギリスの田舎。本作は暑くて明るいアルゼンチン。原作の兄妹は貴族のような知性を備えていますが、本作は躾が全くない野生児。それでも原作の持つ暗い闇をうまく描いています。少年の名前はエンジェル(英語読み)。その名に恥じない美少年。しかし心に深い闇。

アルゼンチンに移ってからのノエル監督作品に登場する美少年は吸血鬼やゾンビだったり、あまり普通の少年は登場しませんので、本作も想定内。2年前に死んで幽霊になった庭師と少年は(明示はされませんが)性的な関係があったようです。

男の幽霊が出現すると、家庭教師のモナの静止も振り切って、少年はすぐに駆け寄りっていきます。妹はどうやらそんな兄に嫉妬している様子。それでも兄妹は同じベットで寝ます。モナは別のベッドで寝なさいと指導しますが、だめなようです。

家庭教師のモナはこれが初仕事。彼女にも何やらいわくがありそうです。若い警察官がそっと注意してくれました。この家はよくない。俺ならとっとと辞めて帰るけどな。モナは何に執着したのでしょうか。気になった皆様は是非DVDかブルーレイを購入して、ご覧になってみて下さい。

兄エンジェルは黙って先生を見つめるだけ。
妹エマは色々と先生に話をしてくれた。
とりあえず身体を洗いなさい。兄妹で一緒に風呂とは...
風呂でカエルを見つけた兄(まるで少女のよう)


きちんと服を着ると別人のような貴公子。
(ノエル監督は白シャツ少年がお好きなようで)
少年は何を考えているのか。
先生は彼をみて「美しい...」と。


暗闇の中で微笑む少年と少女。今度の家庭教師もやっぱりダメだった。


※後記
本作のメイキングには2014年『Limbo』や2015年『Ellos Volvieron』に主役で出演したラウロ・ヴェロン君も登場。ノエル監督は「ラウロにも何か役を与えたかったが叶わなかった。これは私が俳優をエコひいきしていない証拠でもある」って。完全にエコひいきしてますやん。ラウロはスタッフとしてお手伝いしていました。
メイキングを見る限り、ラウロ少年とノエル監督の間には信頼関係があったように思います。でもノエル監督の遺作では少年俳優と信頼関係を築けなかったのかもしれません。




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