Nine Meals from Chaos(2018年)

製作年・国 2018・アルゼンチン
少年映画評価 B+
お薦めポイント 近未来の絶望的なロードムービー。
映画情報など 国内未公開。海外版BD発売中(Amazonで購入可)。
写真は、ほぼ主役のラルー役の少年


2021年夏に亡くなられた少年映画の巨匠イヴァン・ノエル監督作品。陰惨で難解。見終わっても後味が非常に悪い。でもノエル作品にはどこか惹かれるところがあります。小児性愛者とレッテルを貼られて自死された監督の作品ですが、AmazonでもブルーレイやDVDを入手できます。

弟のロロが捕まった。兄のラルーは命懸けで助けようと。後の少年少女の集団も...

近未来。災害と病気が蔓延して世界の大半は破滅。人間は1/10になった。荒れ果てた荒野で少年ラルーや少女たちが集団を作り、僅かに残った農家などから食力を盗んで生きている。盗みに入った家でラルーの弟ロロが捕まった。必死で助けようとしたが失敗。少年たちは食料を求めてさまよい続ける。

1人の少女がEPECUという町に行こうと言う。食料もある。少年少女たちは長くて苦しい旅を始める。何人かが死んだり脱落。ラルーの親友だったチャチャも死んだ。ようやくEPECUに到着。そこは廃墟だけ。行こうと言った少女は姿を消した。途方に暮れる少年少女たち。そこへ大人が襲ってきた。これは罠だったのだ...


人間は10人に1人しか生きられない世界。残りの9人は死ぬのですが、単に死ぬのではなく食料になる訳です。タイトルの「Nine Meals from Chaos」の意味はこんなところでしょうか。

映画では10数人の少年少女たちが集団を作っていますが、リーダーは見当たりません。道端の少年が勝手に集団に入ったり、赤ん坊を抱いた少女が抜けていったりします。まだミドルティーン以下の少女ですが、赤ん坊はどうして産んだのしょう。なにか哀れで気になりました。

主人公や主役は明確ではありませんが、強いて言えばラルーという少年。弟のロロは捕まって井戸の中。食料として保存するためでしょうか。盗みをする度に犠牲者が出ます。しかし少年たちも反撃して大人を殺します。しかし大人を食料にする考えのない事だけが、見ていて救いでした。

ラルーにはチャチャという親友がいました。親友という枠を超えて兄弟か恋人のような感じ。そのチャチャは小さな毒蛇に噛まれ、2、3日は我慢していたのですが、ある朝起きた時、隣のチャチャは冷たくなっていました。親友に何もしてやれなかったラルーは絶望。

そしてEPECUの町。ラルーはここが廃墟と知って、いち早く池に飛び込んで自殺。もう生きていたくなかった。次はどんな世界に行くのか、永眠するのか判りませんが、ここよりはマシだと思ったのでしょうか。そして少女。彼女はここへ孤児たちを連れてくる役目だったのでしょう。食料のために。

弟のロロは井戸の底にいた。食用として保存のため?
兄は必死でロープを引っ張ったが...弟は落下。
右の少年は仕掛罠で足を負傷。怪我をした少年は、
小学校廃墟で狂った女性教師に殺されてしまった。


夜は焚火。少年たちに夢はない。
少女もいる。その中の一人が曲者だった...
ラルーは小さなウサギを袋に入れて飼っていた。
しかし空腹に耐えかねた別の少年に奪われて食べられた。


ラルーの親友チャチャが蛇に噛まれた。
(少年たちの中でこのチャチャが1番イケメンかも)
チャチャとラルーはいつも一緒に寝た。
この朝。左のチャチャは遂に眼を覚ます事はなかった。


苦しい旅の末、やっとの事でEPECUに着いた。しかしそこには何も無い。あるのは絶望と殺戮だけ。


※後記
本作の少年少女俳優の名前は特定できませんでしたので、書いておりません。
ところで本作を見て思い出したのが「11匹のネコ」。原作絵本は読んだ事はありませんが、広島少年合唱隊定期演奏会のミュージカルで何度も鑑賞しました。TOKYO FM少年合唱団でも演じられています。腹ペコになった11匹のネコが大きな魚のいる湖をめざすというお話。本作は腹ペコの少年少女が食物のあるEPECUをめざすお話。しかし天国と地獄のような落差。ブラック版の11匹のネコ。




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