Lamb of God(2020年)

製作年・国 2020・アルゼンチン
少年映画評価 B+
お薦めポイント 少年の前に現れた神父。その正体は...
映画情報など 国内未公開。海外版DVD発売中(Amazonで購入可)。
写真はマヌエル・ルカ・フィゲイロ君。


これが少年映画の巨匠イヴァン・ノエル監督最後の作品。監督が自殺する原因になった作品とのこと。アルゼンチンに移ってからは近未来の荒廃した世界を描いた難解な作品が多かったのですが、最後の作品は意外に地に足のついたストーリー。もう少しノエル監督作品をみたかった。

イヴァン・ノエル監督自身が演じた神父とフランツ少年。

1962年のアルゼンチン。人里離れた教会の寄宿舎は不遇な少年たちを収容していた。若い神父2人が指導しているが、少年たちの態度は真面目とは言えない。その中のフランツ(マヌエル・ルカ・フィゲイロ)は他の少年たちと交わらず、いつも一人。そこへ新たにマルティン神父(イヴァン・ノエル)が赴任。しかしどこか神父らしくない。

ある夜、マルティン神父はフランツに話す。自分はお前の母違いの兄なのだ。ドイツにはお前の家族もいる。それを信じたフランツは目を輝かす。神父はフランツを連れて教会を出るが、その直後に警察が。マルティンは偽神父で殺人犯。フランツも危ない。しかし追ってきた別の神父により窮地を免れた。マルティンは何者なのか?


もうネタバレしてしまいます。
イヴァン・ノエル監督自身が演じたマルティン神父はユダヤ人。ナチに家族全てを殺されて復讐に燃える男。ナチス残党の多くが南米に逃れて潜伏していたそうです。有名なアイヒマン事件のように、ユダヤ人たちは戦争犯罪人を徹底的に追い詰めます。

マルティンの家族を殺したナチス戦犯はフランツ少年の父。彼の執念の調査でやっと突き止めたのですが、仇敵には妻と子供がいました。フランツと彼の母。2人には罪が無いはずですが、家族全員を殺されたマルティンは許せません。フランツの母を殺し、そしてフランツも...

ストーリーについてはここまで。気になる方は是非ともDVDをご覧になって下さい。
本作では少年が10人ほど。監督好み?の美少年を集めたのでしょうか。どの少年が監督を自殺に追い込むことになったのか、なんて事は判りません。メイキング映像では和気あいあいとしており、監督と少年たちの間には信頼関係があったように見えます。(あくまで見えるだけですけど)

本作の少年たち。またここ数作でも少年少女の集団が登場するのですが、少し違和感があります。日本でも欧米でも集団には必ずボスがいて、その周りに取り巻きがいて、たいがいはボスはとんでもない奴で、悪のピラミッド構造。そして哀れな主人公はイジメ地獄に...

ところがノエル作品にはこれが無いのです。集団に明確なボスはおらず、自由気ままに外れたり、加わったりと。そのため見る方もストレスはありません。その代わり団結、友情、信頼などと日本人が好きな熱い部分が全くありませんので物足りないかも。私はこういう気ままな社会の方が好きですけれど。

子供の人権無視、性的搾取などの批判はその通りだと思います。ですけれどノエル監督の作品をもっと見たかった。そう思うと残念です。

寄宿舎の中でフランツはいつも一人。
黙々と馬(ロバかも)の世話をする。
マルティン神父が赴任してきた。
刺激の無い生活。少年たちは興味を持って迎える。


寄宿舎のベッド。プライバシーなんて無い。
(役名は判りませんが結構可愛い少年)
クリスマスのミサ。庭師の娘(超美少女)が来た。
女性を殆ど見ない少年たちは目を丸くする...


クリスマスの後はキャンプ。変なキノコを食べて...
左のベニチオ少年は女の子にしか見えません。
キャンプの夜。フランツはマルティンに呼ばれた。
お前は特別。なぜか判るか? ハンサムだからさと答える


キャンプの後、頭にシラミ?が沸いた。
ひょっとしたらベニチオ役は女の子?
マルティンに殴られ、手を縛られたフランツ。
そこへ別の神父が駆けつけて危機一髪助かった。




※後記
これを書いている2023年夏。日本ではJ事務所の問題がマスコミで大々的に取り上げられています。今頃になって正義ヅラするマスコミのいい加減さ。一方かつてのハリウッドでは枕営業は当たり前だったとか。あのマリリン・モンローだって主演のためには、なんて告白もありましたし。




▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼外国作品庫へ戻る