毛皮のマリー (1983年)

上演年・場所 1983年・パルコ劇場
舞台評価
お薦めポイント 少年役を少年が演じたのは多分これが唯一
関連情報など ビデオ絶版。
(写真は美少年役の井浦秀智君)


若くして夭逝された寺山修司氏の戯曲で、美輪明宏さんのために書かれた作品との事。寺山修司原作の映画は何本か見ておりますし、寺山氏自身の手になる実験映画(人力飛行機舎というプロダクションの作品)も何本か見ました。DVDも持っています。寺山修司作品に限らず、そもそも舞台を鑑賞した事自体が数える程しかなく、ここでとやかく言える資格はないかもしれません。

ビデオパッケージから。左は寺山修司氏、中央が少年役の井浦秀智君

例によって寺山修司氏の作品は難解で、ストーリーを書くのが難しいのです。主人公はマリー(美輪明宏)で、ずっと男娼として暮らしてきた。彼には息子(井浦秀智君)がいるが、生まれた時から外へ出さず、マリーが全てを支配してきた。しかし息子は成長期を迎え、異性に恋をし、マリーから出ていく。

マリーの家で働く下男から「息子が家を出て行き、二度と帰らない」と告げられてもマリーは顔色一つ変えない。あの子と私の絆はそんなものじゃない。私から逃げられないのよ。そしてその通り息子は戻ってきた。マリーは息子を女の子に変える。

 なぜ人気の舞台なのでしょうか
1967年初演ポスター

2010年に大阪の国立国際美術館で「横尾忠則全ポスター展」という展示会があり、横尾忠則氏が手がけてきた舞台、商品、その他のポスターを全てみることができました。

左はその時、ミュージアムショップで買ったポストカード(1967年ポスターを復刻したもの)。これを読むと、主演:美輪明宏さん、美術:横尾忠則さん、衣装:コシノジュンコさんなど、今から考えれば凄いスタッフが関っていた事が判ります。

1967年の初演以降、何度も舞台化されており、最近では毎年のように上演されています。主役は美輪明宏さん。そのものずばり男娼役で、他にこの役を出来る男性俳優は、ちょっと思いつきません。

正直に言いますと、美輪明宏さんよりも、この戯曲に出てくる美少年役に関心がある訳です。男娼の息子役ですが、役名そのものが美少年でした。(最近の舞台では「欣也」という役名になっています)

ところが、美少年を演じるのは少年ではなくて青年でした。同じく美少女という役もあるのですが、これも青年が演じているそうですので、それに比べたらマシかもしれません。しかしこの美少年(欣也)役は、若手俳優の登竜門として人気の役だとか。及川光博さんなども30歳でこの役を演じたそうです。

そんな中で1983年に上演された舞台は、少年役を少年俳優が演じており、しかもこの舞台は、ビデオとして発売されている事を知りました。

 1983年の舞台。井浦秀智君

インターネットで寺山修司氏のグッズを通販しているサイトを見つけ、このビデオを購入(今は残念ながら絶版)。この1983年の公演は「寺山修司追悼公演」との事。追悼の意をこめて、本物の少年を起用したのかどうかは判りませんが、気合が入っていたんだろうと思います。

舞台で熱演する井浦秀智君。当時中学2、3年生でしょうか。このサイトでも紹介しました映画「テラ戦士ΨBOY」にも出演していましたが、その時よりも幼くて、少年らしい感じがします。

寺山修司ワールドは、なかなか難解です。ことにビデオで見ているので臨場感がなく、ストーリーもつかめないまま、気がつくと、井浦君は下着姿に。そして何故か女装させられ、口紅まで(まさか少年男娼か)。最後は本当の女の子みたいになってしまいました。

芸術なのか、エロスなのか、かなり際どい部分が多々ある舞台です。もう金輪際、この舞台に本物の少年俳優が立つことは不可能だろうと思います。そういう意味では貴重なビデオかもしれません。ただ、私は、あんまり好みではありません。もっと健康的な少年の舞台をみたい。

戻ってきた少年をマリーは女の子に
カーテンコール。井浦君、脚が長い
(薄っすらと透けている下着の位置が高い)

雑誌「少年」に載った井浦君(パルコ劇場の楽屋から出てきたところ)





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