ビリー・エリオット (2020年)

上演年・場所 2020年・梅田芸術劇場
舞台評価
お薦めポイント 本場英国の舞台に負けない日本人俳優たち
関連情報など メディア化なし。youtubeに関連映像あり
(写真は中村海琉君)


2000年の英映画『リトル・ダンサー』を舞台化。音楽はエルトン・ジョン。2014年に『ビリー・エリオット ミュージカルライブ』として劇場上映。DVDやブルーレイも発売され、それをみた私は驚いたものでした。あまりの素晴らしさに。これは日本人では到底無理だろうと。

ところが2017年に日本人キャストで上演。TVやネットで話題になり公演は大成功。でもなぜか私は見ませんでした。そして2020年に2回目の日本公演。オリンピックが延期になるほどのコロナ禍。1年半近く練習を積んできた少年たちに来年はありません。声変り...

もう見るしかないじゃありませんか。2020年11月4日の舞台を鑑賞。生での舞台鑑賞は初めてです。ビリー役は中村海琉君、マイケル役は佐野航太郎君。内容はブルーレイでみた英国公演と寸分違わぬもの。日本人少年でもここまで出来るんだ!少し涙が...

ポスターや公式サイトのトップに使われている画像は中村海琉君

1980年代のイギリス北部の炭鉱の町。炭鉱の閉鎖をめぐって会社と労働者が激しく対立していた。そんな鉱夫を父に持つ少年ビリーは、ボクシングを習っていたが、今一つ好きになれないでいた。

そんな時、同じ場所で練習を始めたバレエ教室に紛れ込んでしまった。その教室のウィルキンソン夫人にバレエの才能を見出されたビリーは、父親に内緒でバレエ教室に通い始める。やがてロンドンのバレエ学校のオーディションを受ける事を薦められるが、父親は「バレエ?お前はオカマか」と話にもならない。

一度はあきらめたビリーだが、ダンスへの思いは高まるばかり。そんな熱情を知った父親はビリーの夢を叶えてやろうと心を変えた。しかしストライキ中でお金がない。労働者としてのプライドと、息子の夢の間で悩んだ末、父親は仲間を裏切ってスト破りを決心する。

裏切り者になってしまった父、しかし仲間は父の気持ちを判ってくれた。そんな仲間の期待を背負ってオーディションを受けたビリー。さてどうなるのでしょうか。

 ミュージカルならではのテンポの小気味良さ

映画のリトル・ダンサーも名作ですが、どこか陰鬱な雰囲気が漂います。(そういえば、まだ『リトル・ダンサー』のレビューを書いてなかった。そのうち書きます)

ミュージカルはコミカルな部分を強調し、ダンスと歌で切れ目なく進行します。舞台装置やフラッシュ光を使った場面の切り替え。これがテンポよくて飽きる事がありません。ただ予備知識として、英国の石炭産業が衰退して当時のサッチャー首相と労働組合の対立などを勉強しておいた方がいいでしょう。

 ビリー役4名の誰をみるか...

出来る事なら全員見てみたい。でも梅田芸術劇場のS席は14000円。私の財政では1回が限度。ビリー役は、バレエをやっていた利田太一君、渡部出日寿君、子役でバトンが得意の川口調君、合唱団の中村海琉君。得手不得手はあるものの英国の本部?が決定したのですから、全員が基準に達しているはず。

ポスターに写っており、ソプラノ♪7ボーイズに所属との事で中村海琉君の回を選択。youtube等でみると歌やタップは自信があるとの事でしたが、この劇のテーマはバレエ。少し不安でした。バレエなんて幼児の頃からやってないとダメなんでは...

でもその心配は杞憂でした。白鳥の湖でもエレクトリシティでも危なげなく踊っています。連続バク転などは体操選手顔負けの姿勢の美しさ。宙吊りで激しくスピンの後でも足がふらつく事もなし。基本的に運動神経がいいのでしょう。もちろん本格的にバレエをやっていた子には及ばないとは思います。

歌やセリフはしっかりしています。何よりも声がいいのです。ちょうど12歳の誕生日前後。声変り寸前のボーイソプラノが一番艶があって色気すら感じる声だと私は思います。本当にいい時期に彼の舞台をみれて幸せでした。

大人の役で重要なのはビリーの父とバレエ教室のウィルキンソン先生。安蘭けいさんは元宝塚のトップスターだけに演技の安定感は抜群でした。マイケル役の佐野航太郎君もしっかり息が合っていました。女の子たちも可愛い。ああやっぱりビリー役全員の舞台を見てみたい...

プレスコール映像から。中央は中村君と川口君
(左端が利田君、右端が渡部君。たぶん...)

プレスコール映像から中村君。
プレスコール映像からマイケルとビリー
(2人の掛け合いとタップダンスが見もの)


WOWOWの特集放送から利田君。左は中村君。
(バレエ練習着の脚線美がステキです。)
同じくWOWOW特集放送から渡部君。
(彼もバレエ練習着。本当に美しい...)


プレスコール映像から渡部君。バレエは桁違い。
(中村君はズボンが少し長かったのが残念?..)
公式サイトからビリー役の4名。
(全員の舞台をみたい。叶わぬ夢です...)


11/4のカーテンコール。撮影可という事で1枚だけ。中央がビリー役の中村君。


※後記
舞台でちょっと思ったこと2点。ビリーとマイケルが2回キスします。1回目はなんと口づけ。寸止めだったかもしれません。感染対策もありますし。2点目はウィルキンソン先生の娘デビーの事。実の娘なのにあまりに蔑ろにされて可哀想。原作通りだから仕方ありませんが、女の子は少し複雑な気分になるかも。
そんな少女はこんなストーリーを頭に描いていたりして。デビーが主役。母に蔑ろにされながらもバレーに打込み、ある日の発表会でビリーなんか足元にも及ばない演技。大きな歓声と拍手。そして母を見返すのです...




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