魔笛(二期会) (2015年)

上演年・場所 2015年・東京文化会館ほか
舞台評価 A-
お薦めポイント 演出家の宮本亜門氏によるテンポのよい「魔笛」
関連情報など メディア化なし。NHK-BSで放送。
(写真は三人の童子を演じた少年たち)


モーツァルトの歌劇の中でも有名な『魔笛』は全世界で上演されています。基本的なストーリーは同じですが、奇抜な衣装や背景など、かなり自由な演出も許されているようです。今回は演出家の宮本亜門氏がドイツのリンツ州立劇場との共同で制作したもの。冒頭のお芝居が現代の日本。

魔笛といえば三人の童子(少年)。これまでは(今もそうですが)女性または少女が演じる場合が大半でした。しかし本公演ではTOKYO FM少年合唱団の少年が演じるとの事で期待大。残念ながら東京で生の公演を見ることは叶いませんでしたが、NHKで3時間フルに放送。これなら受信料は喜んで払います。

左から小野颯介君、福田健君、パパゲーノ役の黒田博さん、高井麻飛君。
(自殺しようとしたパパゲーノを止めた三人の少年たち)

現代日本のある家。3人の息子たちがゲームをしていると、会社をリストラされた父が帰ってきた。そこら中に当たり散らす。母は愛想を尽かして出ていく。ヤケになった父はゲームの世界に飛び込んだ...そこは魔笛の世界。

父はタミーノ(鈴木准)。母はパミーナ(幸田浩子)に。タミーノはパミーナに一目惚れ。しかしパミーノは母である夜の女王のもとに帰った。大司祭ザラストロ(妻屋秀和)はタミーノに3つの試練を課した。この試練を乗り越えたならパミーノと結ばれる。お前の行く道はこの三人の少年たち(小野颯介、福田健、高井麻飛)が導いてくれるだろう。

タミーノはパパゲーノという男と一緒に試練に取り組む。三人の童子たちは要所要所で現れて正しい道を導く。自殺しそうになったパミーノとパパゲーノを諭したり。そして試練を乗り越えたタミーノはパミーノと結ばれた。
気がつけば、元の日本の家庭に戻っていた。父と母、そして三人の息子たちは絆を取り戻した。


ストーリーはかなり端折りました。魔笛で検索すれば、多くの方が詳しい方がストーリーを書いておられますので、そちらを参照して下さい。最初と最後が現代日本の家庭が舞台になっているところが奇抜ですが、本題は正統派の魔笛です。セリフと歌は全てドイツ語。

私自身は『魔笛』をフルに見た事は殆どありませんので、他の公演と比較は出来ませんが、三人の童子の出番は結構多かったと思います。序盤と最後を考えれば非常に重要な役でした。ただポスターやチラシには童子たちの名前が無いのが残念です。TV放送ではしっかりあったのが救い。

三人の童子はダブルキャストで合計6人。TV放送で登場した小野颯介君、福田健君、高井麻飛君はTOKYO FM少年合唱団の団員。特に小野颯介君は何年かに1人くらいの逸材で、素晴らしい声の持ち主でした。公演時は既に中学生ですから、正確には団員ではなく団員OBです。

ネットで本公演を鑑賞された方の感想やレビューを見ますと、三人の少年たちのボーイソプラノへの驚きや好評ばかりでした。日本人少年でもここまで歌えるのか...これを見て嬉しくなった事は言うまでもありません。

ところがですね。同じ公演が2021年にも再演。私は見れませんでしたので、同じくネットで感想を読んだところ、かなり厳しいものもありました。きちんと歌える子を使え。オーディションで選べ etc...ここ数年でビリー、オリバー、リメンバーミー、カラオケバトルなど、歌の上手い少年が目立つようになってきている事も一因かもしれません。

ただ『魔笛』はモーツァルトのクラシック曲。ミュージカルやカラオケが上手い子だからといって、すぐに使えるのでしょうか。ちゃんと合唱団で発声訓練が必要では。ここのところは私にはよく判りません。


ある日本の家庭。両親と祖父、そして3人の息子。
息子たちがゲームをしていると...
昼間なのに父が帰ってきた。リストラされたのだ。
散々クダを巻いた挙句、ゲームの世界に飛び込む父。


タミーノの前に現れた三人の童子。三人が導いてくれる。
(この世界では、父はタミーノに。息子たちが三人の童子になっていた。母はパミーノ。)

三人の童子と弁者(加賀清孝)。弁者は神官で、状況を説明してくれる。
(弁者は、元の世界では三人の祖父だった)

タミーノと意思疎通が出来ず自殺を図ったパミーノ。三人の童子が彼女を諭す。
生きる望みを得たパミーノは喜んで、三人に次々とキス。(元はお母さんだからね...)

カーテンコール。今回の上演の主役たちと言っていいメンバー。
三人の少年たちにも「ブラボー!」の声が飛んでいました。



※後記
『魔笛』は、ノースエンド先生の部屋の資料編を参照して下さい。魔笛をなんと29公演も紹介されております。
小野颯介君につきましては、少年合唱研究サイト『ボーイソプラノの館』の「日本のソリスト」の中に紹介されております。(直接リンクは出来ませんので、お手数ですが、ネットで検索して下さい。)




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