カネゴンの繭 (1966年)

初回放送・製作 1966年4月10日・TBS(ウルトラQ)
作品評価 B+
お薦めポイント カラーHD版は素晴らしい。子供達の生き生きした姿
関連情報など DVD・BD発売中
(写真はアキラ役の桜井俊道君)


ウルトラシリーズの第1作「ウルトラQ」については、数多くのファンの方が情報発信されていますので、詳細は書きません。米国のTV「トワイライトゾーン」の影響を受けている(マネ)なんだろうと思いますが、当時はアメリカに憧れている時代だったので仕方ないと思います。

これがウルトラマンとして日本独自の文化になっていったのは誇らしいとは思いますが、私自身はウルトラQの方が好きでした。(とはいえウルトラQはリアルタイムでは見ておらず、物心ついたのはウルトラマンから。ウルトラQは再放送で見たので、ウルトラマンよりも後)

安易にウルトラマンのようなヒーローが現れて怪獣とプロレスまがいの事をやってシュワッチと帰っていくのは本当につまらないのです。人間が叡智を出して宇宙人や不思議世界から脱出していく、ウルトラQの方がずっと面白いと思うのですが(これは人それぞれ)

前振りが長くなりすぎました。ウルトラQには様々なパターンがありますが、主人公はパイロット、その助手、女性カメラマンの3人。しかしその3人が全く登場しない話もあります。この「カネゴンの繭」もそうで、拝金主義の世相を皮肉りながら、子供たちの生き生きした姿が爽快な話で、私は1番好きです。(視聴率30%を遥かに超えるシリーズ中では、28%と不人気作品だったそうですが)

特筆すべきはカラー化されHD画質にリメイクされている事です。当時のTVは経費から16mmフィルムが普通なところ、全作品35mmで撮影されていたから出来たそうです。もちろんカラーは後から着色したので当時のものと異なる部分はあると思いますが、それでも素晴らしい。

カネゴンを連れて1966年の東京を駆け抜ける。カラーだと郷愁も鮮やかですなあ・・

小学生の加根田金男(辻沢敏)お金に執着する意地汚い子供。今日も子分を引き連れて廃材置き場で金目のものを探し、造成工事現場にガラクタを集めて交換して遊んでいる。しかし現場監督のヒゲ親父がやって来てブルドーザーで子供たちを追い払い、ガラクタを蹴散らしてしまう。その繰り返し。

そんな時、金男はチャリンチャリンとお金の音のする繭を拾い家に持って帰った。繭は一晩で巨大化し金男を飲み込んでしまった。目が醒めると金男はカネゴンに変身していた。お金を食べないと餓死していまう。カネゴンは友人のアキラ(桜井俊道)に助けてくれと頼む。アキラたちはお金を集めようとするが到底足りない。

そこで町の祈祷師に相談に行く。そのお告げは「ヒゲ親父が逆立ちした時、カネゴンは人間に戻る」という訳の判らないもの。途方にくれるアキラと金男。しかしそれはすぐ実現した。ヒゲ親父がブルドーザーで現れた時、アキラたちの仕掛けでひっくり返り逆立ち。カネゴンは無事に金男に戻ったのだが、家に帰ると・・

 愛すべきカネゴンのキャラクター

ストーリーは他愛ないのですが、金の亡者の象徴であるカネゴンが秀逸。チャックのついたがま口財布の頭が何とも言えず。ウルトラQだけでなく、その後の番組でも度々登場します。また同じ1966年に放送開始の「怪獣ブースカ」はカネゴンをモチーフに作られたスピンオフ番組といってもいいものだと思います。

主人公の加根田金男(かねだ!かねお。パロディのような名前)を演じた辻沢敏君ですが、この頃の東京系番組の典型的な子役。江戸っ子なんでしょうけれど、どこか田舎臭くて垢抜けない(すみません)感じなのです。噺家系の顔というのでしょうか。(サザエさんシリーズのカツオ役の白田肇さん、少し後の雷門ケン坊さんなど)

しかもこのカネゴンの繭では辻沢敏君の声を女性(麻生みつ子さん)が吹き替えているのです。それでカネゴンのコミカルな部分がうまく出たのでしょうけれど、少年俳優ファンから見れば残念です。変声期とはいえ、アニメならまだしも実写で吹き替えとは・・ある意味屈辱的かもしれません。

カネゴン・金男役の辻沢敏君
(愛嬌ある噺家系。当時の東京子役の定番顔)
不思議な繭は巨大化。中のお金も増えたと喜ぶ金男
この後、金男は繭の中に吸い込まれてカネゴンに

 仏映画「わんぱく戦争」

さてカネゴン以外の部分も秀逸です。オープニングからマーチ風のテーマ曲が流れ、金男たちが手を振って一列で走っていくカット。これは日本でもヒットした1963年の仏映画「わんぱく戦争」の影響を受けているのだろうと思います。「わんぱくマーチ」は今でもよく聞きますし。

今では某国を猿マネ大国といって馬鹿にしていますけれど、この頃の日本も欧米の豊かな生活に憧れてマネをしていたのでしょう。それは仕方のない事。今の日本は停滞していますけれど、それを打破するのは、少年たちの生き生きした姿ですよ!(結局をそれを言いたいのか?って)

アキラ(左端)たちは金男を救ってやりたいけれど
町の祈祷師のオバアに祈祷して貰った
カーッと一喝されてひっくり返る子供たち

 ちょっと気になった子役さん

主役の友人アキラを演じた桜井俊道さん。東京とはいえ素朴で垢抜けない子役の中で、ちょっとだけ現代的で印象に残ります。ヘアスタイルは少年忍者サスケというかアシメ風?でオシャレです。出番も多く子役の中では金男よりも目立っていました。

セリフは凄く達者だったのですが、ネットで調べるとなんと彼の声も吹替えだったとは。小宮山清さんとい男性の方のようです。(甲高い声ですが大人だと思います。少年の声を大人の男性が・・)当時の子役さんはセリフをまとも出来ない子が多かったのか、実写で吹替えが横行していたようです。番組のためと思えば仕方ないのかもしれません。

アキラと金男。アキラはちょっと現代風の少年
(小さくて見にくいけれど、スパドラの楽君風の髪型)
このカットは少年らしくて好きですなあ
(黒い靴下が親父っぽくてダサいのですけれど)





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