ラジカセ (2016年)

初回放送・製作 2016年12月21日・NHK-BS(三重発地域ドラマ)
作品評価
お薦めポイント 昭和家電の懐かしさ、中年男と少年の交流
関連情報など メディア等の発売なし
(写真は主役の一人を演じた向鈴鳥君)


国内のメジャーな映画製作会社は少年映画を全く作らず、今や地方映画だけが頼みのツナ。それはTVドラマでも同じで、地方局製作のドラマは良質かつ少年俳優が登場するものが多いように思います。特に愛知県を中心とする中部地方はNHKも民放も少年ドラマを作ってくれており本当に感謝感謝です。

本サイトでも取り上げた「少年時代」や「福助」も中部地方の製作。ただ残念なのはキー局製作でないため、DVDやブルーレイはおろか再放送さえもされず、忘れ去られていくことです。

(今は若手の実力俳優として活躍中の池松壮亮さんが小学生の頃に主演したという「うきは〜少年たちの夏」は2002年のNHK福岡発地域ドラマ。見たい見たいと思っているのですが..)

本ドラマの主役の一人を演じた向鈴鳥(むかい すずと)君は2017年度からNHK教育TV「天才てれびくんyou」のてれび戦士になっています。最近はこの番組を全く見ていませんので、このレビューを書く時点で初めて知りました。他のドラマ出演も結構あるようで、売れっ子の部類に入るのだと思います。

向鈴鳥君。なかなか凛々しい表情も見せてくれました。

中年男の有山(滝藤賢一)は都会で働いていたがリストラされ、故郷の三重県伊賀に帰ってきた。両親は既に亡くなり(多分結婚も出来なかったので)家族もおらず、実家で古い家電製品の回収を行っている。対人恐怖症のような持病で極度な人見知り。一方で古い家電製品の知識は人並み外れ、異様な執着を持つ。

そんな有山の倉庫に、将太(向鈴鳥)たち地元の少年が忍び込んだ。物音に驚いて逃げ出したが、将太は肌身離さず持っていた小袋を落としてしまった。翌日一人で倉庫へ行った将太。有山に怒られると思ったが、有山の方が人見知りでパニックを起こす始末。将太はそんな有山になぜか興味を持ち、つきまとい始める。

将太の両親は離婚し母と二人暮し。もうすぐ母は別の男と結婚し、将太を連れて大阪へ行く。好きだった父がますます遠くなる。肌身離さず持っていた小袋には父の写真とカセットテープ。このテープは両親が小学校の同級生だった頃、未来の自分たちに向けて語った言葉が録音されていた。

最初は自分にまとわりつく将太をクソガキだと思っていた有山。古いラジカセで将太の持つテープを聞いた時から何かが変ってきた...

 結婚できない、病んだ中年男

強烈な印象を受けるのが主人公の中年男。趣味には偏執的な能力を示すものの、対人関係が全く構築できず孤立してしまうオッサン。そんな男が増えているのでしょう。なんとなく身につまされる思いもします。演じた滝藤賢一さんがはまり役でした。(ちょっと大泉洋さんっぽい感じ)

古い家電製品もたくさん出てきます。私も電機関係の企業にいましたので興味はありますが「なんでも古いものがいいのだ教」の信者ではありません。寿命を終えた道具に感謝しつつも成仏させてあげないと。モノに執着しない生き方(断捨離とか)をしたいなあ..

中年男の軽トラに強引に乗り込んできた将太
(男が気の弱い事を知って...この時はクソガキかと)
でも、自分が握ってきたオニギリを差し出す将太
(中年男は無視。もったいない...)

 おせっかいな少年の涙

1時間のドラマに詰め込んでいますので脚本的にはツッコミ所満載ですが、それでもいいドラマだっと思います。それは将太という少年のキャラ。日本人に多い受け身の少年ではなく、自分から動こうとする(ちょっとおせっかいな)キャラは新鮮でした。決して欧米少年のような自己主張の塊ではありません。

母に少し邪険に扱われながらも常に母の気持ちを想い、病んだ中年男につきまとい、時には痛い言葉を浴びせながらも中年男の事を想っている、なんと健気な少年ではありませんか。実際にはこんな子はいないだろうなあ。その少年が最後に傷つき涙を流す。おじさんはやられました。

中年男の人見知りを笑いながらも、自分で作ってきたおにぎりを差し出したり。中年男の薄汚れた軽トラックの助手席に少年を乗せて走る時にかけた音楽が懐メロ「真夏の出来事」(彼のぉ〜車に乗ってぇ〜真夏の夜を走り続ける..)。男女の危ないロマンスの歌が中年男と少年なんて。いいじゃないですか・・

NHKの地域ドラマのブルーレイBOXを発売してくれる事を心の底から望んでいます。(BSで連続放送してくれる方がコストかからなくて嬉しいのですけれど)

次第に打ち解けていく中年男と将太
(ホースで水の掛け合い。Tシャツの下の脚が可愛い)
水をかけられる将太。でも嬉しそう。
(なかなか絵になりますなあ..)

汚い軽トラでドライブする中年男と将太
(BGMは「真夏の出来事」似合わんけど..)
母から「お前が邪魔で再婚できない」と言われ..
(無理に陽気を装っていたけど、やっぱり少年は少年)

そっと将太を抱き寄せる中年男
(北野監督「菊次郎の夏」を思い出しますなあ..)
母は本心で言ったのではなかった。
(やっぱり息子は息子。かけがえのない存在だ)





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