毎年、毎年、日本の少年映画は衰退の一途、とボヤいてきてました。
でも2013年は、少し復活の芽が見えてきました。久し振りに明るい気分です。
ただ2013年も、地方映画や独立系の作品が主体で、メジャー作品は少ない状況ですので、
この流れが2014年も続くかどうかは心配な面もあります。
一方で、少年映画の海外作品はめっきり減りました。配給会社が輸入しなくなったのだろうと
思います。本当に残念ですが、本年は「海外作品部門の発表は無し」とさせて頂きます。
あかぼし | 暗い内容ですが、久々に見応えのある本格少年映画でした。 |
1.あかぼし | 母子の絆を選択した主人公の少年が切ない。→ review |
2.そして父になる | 幼い少年の瞳。親子とは?是枝監督の技が冴える。→ review |
3.楽隊のうさぎ | 淡々としながらも青春の薫りが充満。→ review |
4.夏休みの地図 | 広島の悲劇を忘れない。しかし前向きに。→ review |
5.少年H | 戦中戦後を生き抜く少年の力強さは立派。→ review |
6.めめめのくらげ | やや強引な脚本ですが、主役少年が素晴らしい。→ review |
7.夢見ぬ少年 | 小品だが、最後にほろっとさせられました。→ review |
次点(佳作2作品) | HOMESICK、中学生円山 |
亜蓮 (13) | あかぼし。とにかく存在感と表情の変化が素晴らしい。 |
末岡 拓人 (14) | めめめ。映画の出来を救った演技力に脱帽。 |
吉岡 竜輝 (13) | 少年H。大監督の期待に応える名演技はさすが。 |
川崎 航星 (14) | 楽隊のうさぎ。寡黙な中学生を演じ切りました。(年齢推定) |
二宮 慶多 (7) | そして父。大きな瞳だけでカンヌを魅了? |
本屋敷 健太 (11) | 地図。小学生とは思えない知的な演技でした。 |
平岡 拓真 (15) | 中学生円山。あの恥かしい役を堂々と演じる役者魂。 |
※2012年公開作品で見落としており、2013年に鑑賞した作品の中から優秀少年俳優賞を追加しました。
小松 悠太 (13) | またいつか夏に。短編ですが非常に印象的でした。 |
内田 流果 (15) | ガマゴリ・ネバーアイランド。堂々とした演技。 |
昨年2012年は悩んだ末、最優秀作品賞は該当なしとしました。2年連続該当なしなら、この「少年映画大賞」も終りにしようかとも考えましたが、本年は久し振りに、ぐっ!とくる作品に出会うことができました。
本年は少年映画として、佳作は多かったのですが、最優秀賞となると、候補は「あかぼし」と「そして父になる」の2作になりました。
「そして父になる」は、あの是枝裕和監督作品で、カンヌで審査員賞受賞ですから、レベルの高い作品でした。しかし主人公は少年ではなく、福山雅治さん演じる父親であること、出演している子役さんが少年というには幼いこと、などから、やはり大賞には選べませんでした。
なので、消去法で、「あかぼし」に決めたのか?
いえ、そうではありません。東京・新宿まで行って、レイトショーで鑑賞した時点で、これは、本年度のベスト作品になるだろうと、ほぼ確信していました。
なんと言っても主役の亜蓮君の眼差しが、ずっと後まで尾を引くように頭の中に甦ります。カルト的な宗教、精神を病んだ母親、いじめ、売春、世の中の暗い部分ばかりが出てきます。上映時間が無駄に長過ぎるとの指摘も、その通りかもしれません。
若い監督さんですので、どうしても、あれこれ欲張って詰め込むところがあるのは仕方ないでしょう。そんな欠点があったとしても、それを補って余りあるほどのパワーを感じました。
ラストシーン。壊れた母親を捨て、少年は旅立ってくれるものと思っていましたが、見事に裏切られました。その時は、後味の悪さがありましたが、時間が経って考えてみると、少年の選択は正しかったと思うようになってきました。未来は悲劇であるとしても。(これ以上は言及しません)
こんなに(負?の)パワーのある名作ですが、上映館は少なく、DVD化の話さえありません。「キネマ旬報」の2013年映画ランキングの中に、名前すらあがっていません。
多くの人に見てもらいたい映画です。私のようなちっぽけなサイトで、おこがましいのですが、最大の評価を贈りたいと思います。
これまでは、ベスト5だったのですが、本年は佳作作品が多いので、同点で多くを選ぶような姑息な手段を避け、思い切って7作品まで選びました。来年はもっと増えて、少年映画ベストテンになれば嬉しいのですが。
1位は、「あかぼし」。
(最優秀作品賞は自動的に1位となります。しかし逆に1位だからといって最優秀作品賞にはなりません。)
2位は、「そして父になる」。
赤ちゃん取り違え事件を題材にして、家族とは何かを是枝監督流に問いかけた作品。淡々としたストーリーの中で、じわっと涙が出てきます。カンヌ国際映画祭審査員賞、また実際の取り違え事件など、話題も豊富でした。しかし何かもの足りません。あの名作「誰も知らない」から比べると、緩過ぎるのです。そろそろ目を覚まして、インパクトのある映画を撮って欲しいものです。
3位は、「楽隊のうさぎ」。
3位以下は、そんなに差はありません。なので、後で見た作品の方が印象に残っているので、年度初めに公開された映画は少し不利かも。とはいえ、本作品も淡々としたものですが、大変印象に残りました。中学生時代の思い出が昨日のように蘇えってきます。主役を演じた川崎航星君の整った顔が素晴らしい。
4位は、「夏休みの地図」。
これもつい最近になってDVDで鑑賞した作品ですので、その分少し上にランキングしてしまったかもしれません。折しも、この文章を書いているのは東京都知事選投票日。政治的な話は嫌いです。この映画は、政治的なものではなく、忘れてはいけないもの、少年の成長を描いた好作品だと思います。
5位は、「少年H」。
久し振りのメジャー系製作の少年映画でした。ベテランの降旗康男監督が奇をてらう事なく、オーソドックスに作り上げた映画で安心して見る事ができました。興業的には振るわなかったようですが、こんな作品を毎年作ってほしいものです。主役の吉岡竜輝君が素晴らしい。
6位は、「めめめのくらげ」。
正直言って、この作品を6位にするには悩みました。ストーリーや映画の出来としては疑問点が多くあり、空回りした映画とも言えます。興業的にも惨敗のようで、続編公開も危ぶまれます。それでも敢えて選んだのは、少年映画としては、ある種、王道を往く作品だからです。とにかく末岡拓人の魅力で救われた作品。
7位は、「夢見ぬ少年」。
これは大半の方が知らないでしょう。独立系というか、映画勉強中の若い監督が作った短編。大阪の中之島映画祭のテントで自主販売していたDVDを鑑賞。短編ながら、二人の幼い兄弟の思いをうまく描いていました。こんな掘り出し物があるから、映画は素晴らしいのです。
次点ほか、
「HOMESICK」もマイナーな作品ですが、映画館で鑑賞することが出来ました。7位までと紙一重の差しかありませんが、この監督の次回作に期待したいところ。「中学生円山」は、ぶっ飛んだ作品。よくここまで映像化できたなあと本当に感心します。主役がもう2歳年下であれば、凄い少年映画になるところでした。
本年で、一番期待外れだったのが「忍たま乱太郎」。映画と思うから、厳しく見てしまうのですが、これはバラエティ映像だと思えば、楽しいものかもしれません。
最優秀少年俳優賞は、亜蓮君。
彼も文句なしでした。もう映画の上映中ずっと感心しまくりでした。作り笑いと、時おりふっと見せる、メランコリーな表情のギャップが素晴らしい。そんな亜蓮君ですが、所属する事務所のブログで、彼のコメントを読むと、またこれが180度印象が違います。ちょっとチャラチャラし過ぎ。でも、名演出家・蜷川幸雄氏の舞台に立ったり、テレビドラマにも多数出演されている事を考えれば、素質はあるはず。いい俳優になって欲しい人材です。
優秀少年俳優賞は5名。
末岡拓人君。「めめめのくらげ」の不出来を救った少年俳優です。とにかく熱演で、少年俳優としての魅力を存分に見せてくれました。既に同作品2の撮影は終っているようですが、公開されることを心から祈っています。ちょっと心配です。
吉岡竜輝君。「少年H」で、あの水谷豊さんを前にして一歩も引けを取らない堂々とした演技が印象に残ります。キネマ旬報の2013年新人男優賞にも選出され、きっとこの後も仕事があるものと思います。彼もいい俳優になりそうな。
川崎航星君。「楽隊のうさぎ」での存在感は抜群でした。セリフは、ぼそぼそ・・。演技といっても静かに見つめるだけのシーンが続きます。なのに印象に残る。ひとえに彼の顔立ちの魅力が際立っていたからです。しかしこれから俳優になるには、本格的に勉強をして欲しい。素材は素晴らしいものがありますので。
二宮慶多君。「そして父になる」での無垢な瞳が、カンヌの人々の涙を誘ったのだと思います。カンヌは少年俳優に優しい映画祭ですので。まだ幼いので少年俳優とは言えませんが、これから期待の星です。続けて是枝作品に出演できれば化けるかも。
本屋敷健太君。「夏休みの地図」での知的な演技が印象に残りました。同映画では、共演していた松尾潤君の方がルックス的に目立ったのですが、メイキング映像でしっかりした言動を見て驚きました。今後は俳優以外の道に進むのかもしれませんが、どこでも逸材になれそうです。
その他。「夢見ぬ少年」に出演していた2人の兄弟役、「HOMESICK」に出演していた3人の少年も気になりましたが、情報もないので、ここでは選出しませんでしたが、よく頑張りました。
特別賞は、平岡拓真さん。
映画撮影時には中学生だったので、シニア枠ではなく少年俳優枠でも良かったのですが、その内容から、シニアとさせて頂きました。2009年の「戦慄迷宮3D」では小学生役を熱演していたのですが、すっかり成長。それでも全裸に近い恥ずかしいシーン連続を耐えての熱演には拍手しかありません。きっと今後もいい俳優になる事は間違いありません。
2012年公開作品で本来なら昨年の対象のところ、私(管理人)が鑑賞できず、2013年になって鑑賞した少年映画の中で、活躍した少年俳優を優秀少年俳優賞として2名追加しました。
小松悠太君。「またいつか夏に」は短編ですが、ちょっと生意気な少年を魅力たっぷりに演じました。
内田流果君。やはり短編「ガマゴリ・ネバーアイランド」で堂々の演技です。芸暦は長く、多くの映画にも出演していますが、残念ながら脇役が多く、本当は主役でもっと活躍して欲しい少年俳優でした。
「キネマ旬報」の2013年の映画を総括した決算号を読みました。(すみません。まだ立読み)
同誌から委託された映画評論家等の審査員が選んだ全ての項目が一覧表となっており、誰がどの映画に、どの俳優に票を投じたのか、明確に公開されています。
これを公開してくれるのがキネマ旬報のいい所です(他に映画芸術とかも公開されていますが)。同時に、かつては「映画の良識の府」と勝手に思っていたキネマ旬報ですが、今は見る影も・・。
やっぱり審査員。映画をろくに見ていない方も多いような印象さえ受けます。本サイトで大賞に選出した「あかぼし」ですが、百以上ある映画一覧表の最後尾にすらなく、多分審査員は誰も見ていないと思われます。(すみません。立読みなので見逃していたら申し訳ありません。)
マイナー映画を、自ら丁寧に拾うように見ておられる審査員も数名くらいいてもよいと思うのですが。映画会社から試写会に招待された作品しか見ていないのでしょうね。残念ですがこれが現状でしょう。
新人男優賞の投票結果は興味深く閲覧しました。
受賞した吉岡竜輝君、接戦の末1票差での栄冠。もうちょっと評価されているのかと思っていましたが、現実は厳しいのですね。他に川崎航星君、二宮慶多君、末岡拓人君にも1〜2票入っていたのが嬉しい誤算です。でも亜蓮君は無し。そして相変わらず、該当なしが多いのです。新人女優賞の該当なしは少ないので、審査員は、男優には関心がない方が多いのでしょう。
毎年「キネマ旬報」には失望するので、もう見ないでおこうと思うですが、やっぱり発売されると見てしまいます。そういう意味では偉大な映画雑誌には違いありません。