少年映画評価 |
8点 |
作品総合評価 |
6点 |
少年の出番 |
100%(主役) |
お薦めポイント |
爽やかな少年3人組の成長記 |
映画情報など |
2008年公開/DVD発売済(写真は高橋賢人君) |
誰だって悩みや苦手は持っている。少年だって同じだ。それにどう向き合うかが人生なんだ。なんて、正論を言っても難しいですよね。大人は、うまく、姑息に「逃げる」手立てを習得してしまっているけど、子供は逃げれない局面に遭遇することが多いんだなあと、この映画を見ると改めて思います。
■ストーリー
鹿児島の伝統ある男子の気風を受け継いだ主人公の少年、吉川隼人(高橋賢人君)。そういう男の事を「薩摩隼人(さつまはやと)」と言うらしい。名前そのまま。クラスの中でも正義感あふれるリーダーシップを発揮しているが、彼にも1つだけ悩み事があった。実はカナヅチで泳げない事だった。
おまけにクラスメイトには泳げると嘘をついている事も心の重荷だった。隼人にとって最大の悩みは、夏の学校行事・鹿児島の錦江湾遠泳大会。毎年仮病を使って欠席していたが、小学生最後の夏は、父親(高嶋政宏さん)が許さない。ピンチだ!
そんなある日、東京から美少年、矢代智明(御厨響一君)が転校してきた。智明はクールな態度で、泳げるにも係らず遠泳大会への出場を拒否し、クラスの男子から爪弾きされてしまう。そんな智明だが、クラス一番の運動音痴で、緊張すると下痢をする成松雄太(中嶋和也君)に優しくしている。この様子を見た隼人は、智明にカナヅチである事を打ち明け、水泳を教えて貰うことにする。こうして、隼人、智明、雄太の3人組の友情が始った。
しかし、3人組で友情が深まった、とはいかず、智明は決して自分の殻を脱ぎ捨てない。実は智明は、父親の死をめぐって深い心の傷を負っており、それが原因で自殺まで図ろうとするが、隼人達の友情が彼を救う事になる。いよいよ遠泳大会の日、それぞれの悩みを持った3人の少年は。
恥をしのんで、智明に水泳を教えて貰う隼人
■こんな少年が日本を救う。主人公を演じた高橋賢人くん
負けん気は強いが、弱い者に優しく、いつも元気で快活で。少年マンガの主人公そのままの少年。そんな爽やかなキャラクターを高橋賢人君は見事に演じきりました。賢人君本人のキャラと同じなのかは判りませんが、素晴らしいハマリ役だったと思います。
この映画には美人先生(松下奈緒さん)など、教師や大人が大勢出てきます。遠泳大会や転校生、イジメなどでバラバラになってしまったクラスに対して、教師達は結局、何の助けにもなりません。バラバラになった子供達を、挫折の中からまとめていったのは、賢人君演じる主人公の少年でした。
泳げないという嘘がバレて、失意の中、ともすれば逃げ出したくなる気持ちを我慢し、勇気を奮い起こしてクラスの団結をはかっていく。他愛ない「作り話」かもしれませんが、本当に拍手を贈りたくなる少年です。こんな少年(少女でも可)が日本に大勢いたら、きっと明るい社会になるんだろうなあ。
■クールな殻を被り、繊細で壊れそうな美。御厨響一君(実はヒロイン)
少年マンガや小説には、主人公のライバル役として、秀才の美少年が定番で登場します。御厨君もそんな役なのですが、この映画では、賢人君のライバルであり、またカッコ良さと謎が気になるヒロイン的な要素もありました。
転校生の美少年。しかもクールで気障な奴だったら、同じ男子としては面白くありません。「この野郎、いつかその鼻をあかしてやる」と思いながらも気になります。できたら友達になって仲良くしたい。
御厨君は、人前ではクールな虚勢を張りながら、今にも折れそうな華奢な線、心を閉ざした謎、かと思うと優しい態度も垣間見えたり、魅力抜群の少年として描かれています。
その彼が心の傷をかかえて失踪してしまった。彼を捜索する主人公達の思いは、友人やライバルではなく、恋人に対するような切ない思いも多分に含まれている。そんな感じの演出が秀逸でした。
この映画には、ヒロインとしてクラスの学級委員の美少女(宮崎香蓮さん〜本当に国民的美少女コンテストの受賞者だそうです。)も登場しますが、主人公は淡い恋心を抱いているのでしょうが、あまり描かれてはいません。
どちらかといえば、御厨君の方が印象的な相手役でした。あくまで私の見た印象ですので、異論はあるかもしれません。
主人公3人組。右端の御厨君がクールでカッコいい
背中にマジックで書いた意気込み
(私事ですが、これを見て焼酎は「海童」)
■映画のプロモーションには不満
もう一人の少年、中嶋和也くんも、独特な味わいを持ち、この3人組は素晴らしいトリオですが、映画のプロモーションでは、少年3人組よりも、美人先生役の松下奈緒さん、主人公の父親の高嶋政宏さんなど、大人の俳優が前に出ており、これは大いに不満が残りました。
本当に大人が活躍していれば、それも仕方ないのですが、高嶋さんを除けば、あまり大して印象に残らない役でした。最も可哀相だなあ、と思ったのが、下記のようなマスコミの取り上げ方。
映画初出演の14歳・宮崎香蓮「素になれました!」− 『チェスト!』初日
「映画『チェスト!』の初日舞台挨拶が19日、東京・バルト9で行われ、キャストの高嶋政宏らが出席。映画では初となるヒロインを務めた14歳の宮崎香蓮も登壇し、初々しい笑顔を見せた。(以下略)
写真は3枚。宮崎香蓮さんの超アップ写真が2枚。最後に宮崎香蓮さんを中央に、少年3人組や高嶋さんが周りにいる写真が1枚。コメント紹介も宮崎さんと高嶋さんだけ。これだけ読んでると一体何の映画?
いくら美少女とはいえ、脇役とまでは言いませんが、メイン俳優でない宮崎香蓮さんばかり前面に押し出すマスコミはどうなんでしょう。これは少年俳優だけでなく、宮崎さん自身にとっても不本意なのではないでしょうか。「頑張った人には、正当な評価をしてあげる」そんなマスコミになって欲しいものです。