またいつか夏に (2012年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(準主役です)
お薦めポイント 孤独な中年男と少年の交流。
映画情報など 2012年公開。DVD発売(地域発信映画)
(写真は、小松悠太君)


茨城県筑西市の地域発信型映画として製作された作品で、第4回沖縄国際映画祭ほかで上映されましたが、見る機会がなく、何とか見たいと熱望していました。

それが、2013年11月16,17日の2日間にわたって「おいしい映画旅行」と題して、これまで公開された地域発信型映画21作品が一挙上映。場所は横浜のブリリア ショートショートシアター。これは万難を排して行くしかありません。

みなとみらい駅で降りて、劇場へと向かいましたが、あまり人通りがありません。こんなところに映画館なんてあるのか、と思いながらも到着。マンションなどを販売している東京建物の系列との事で、小さいながらも素晴らしいシアターです。

ロビーでは、映画の舞台になった地域の地酒とおつまみが、全て100円で販売されています。それを劇場内で飲食してもいいそうで、何となく落ち着きません。観客の層も、普通の映画館とはちょっと違います。横浜なのに、関西弁がそこかしこで聞こえてきます。

すぐに判りました。お笑いの吉本興業のイベントだったのですね。1回のセッションで3本の作品が上映されますが、その司会を吉本興業所属のタレント(よく知りません。すみません。)が漫才のように進めます。座席に座っている方も関係者が多い感じでした。顛末を書いてはキリがないので、映画の話にします。

■ストーリー

小学生のヒロキ(小松悠太君)が、ひとりで筑西市にやって来たところから映画は始まる。どんな事情があるのか映画では全く明らかにされないが、どうやら親戚の家に預けられることになったようだ。しかも歓迎されてはいないらしい。やがて地元の小学校に通うが、全くなじめず、不登校を繰り返す。

そんなヒロキを心配する担任の宮本先生(鈴木ちなみさん)。そこへ絡んできたのが、地元の冴えない青年、渡辺(村上健志さん)。渡辺は、密かに宮本先生に好意を持っていたが、不登校の話を盗み聴きし「よし俺がヒロキを更正させてやろう。そうすれば、先生は俺に感謝するはずだ」とヒロキに接触し始めた。

最初は不審がるヒロキだったが、渡辺に誘われて釣り競争をすることに。ヒロキが負けたら学校へ行くはずが、何回やってもヒロキが勝ってしまう。やがてヒロキと渡辺の間に奇妙な友情が芽生えてきた。大言壮語ばかりする渡辺だが、実は口だけで、友人もいない寂しい人間であることを、ヒロキは見抜いていた。

しかし別れが唐突にやってきた。ヒロキはまた別の親戚に預けれられる(タライ回し)ことになった。渡辺はお別れに、ヒロキに筑西の勇壮な神輿の夏祭りを見せてやろうと約束する。しかし季節は冬。町の人間は誰も渡辺なんか相手にしない。さあ、どうなるのでしょうか。

■筑西市ってどこにあるの?

さて舞台となった筑西市(ちくせいし)って、全く知りません。関東に少し住んだこともあるのですが。なんとなく筑波の西の方ということで茨城県にあることは判ります。平成の大合併で出来たのでしょうね。

映画の起点は駅、最初は筑西駅と思っていましたが、そんな駅はないようです。こんな風に書くと、筑西市を馬鹿にしているように思われるかもしれませんが、実は逆なんです。観光地ではなく、川があって、普通の人が生活をしている平凡な町の方が、妙に好きなんです。

どこにでもあるような、こういう町で、どこにでもいるような少年がドラマの主人公。35分と短い映画でしたが、その妙な空虚感と満足感を味わうことができました。

■ダメ男と少年の友情、いや愛情かもしれません。

とにかく、ヒロキを演じた小松悠太君が可愛い。生意気なセリフ、投げやりなセリフもありますが、なかなか魅力的な少年でした。ダメ男の渡辺は、女性教師の気を引くために少年を利用しているのですが、次第に女性教師よりも、少年そのものが愛おしく思えてきたようにすら感じました。

今回は上映後に渡辺役を演じた村上健志さんがゲストで登場。吉本興業所属の漫才師らしいですが、サッカー解説をしている中西哲生さんに似たイケメン風。トークの中で、村上さんと少年の関係について「父親に見えた」と女の子(NMB48の方)に言われ「自分はまだ若いけれど、年齢的には小学生の子がいてもおかしくない」と真面目な回答。

そこへすかさず、司会の一人から「父親ではなく変質者に見えた」の突っ込みの声が。一瞬会場が凍ったような感じもしましたが、その発言は全く無視され、何事も無かったように、他の話題へと移りました。

どういう意味で「変質者」と言われたのか判りませんが、あまり好きな言葉ではありません。そんなトークはもう忘れることにして、小品ですが、いい映画でした。

筑波山を望む美しい池にやってきた
別れの日。駅でオジさんを待つ。イケメンだなあ

■(補足)地域発信型映画とは

ここまで書いてお判りのように、全て吉本興業がプロデュースしたものです。製作資金を援助して、地元の監督や役者さんを中心にしたものもありますが、大半は、吉本興業の芸人が主役クラスで出演しています。企画自体は素晴らしいと思うのですが、やはり地元や地域をもっと主役にして欲しい気がします。

特に主役クラスは配慮して欲しい気がします。今回の「いつかまた夏に」の村上健志さんは、映画の舞台と同じ茨城県の出身とのことで、良かったと思います。(大阪弁なまりの方でなくて)





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