僕だけは知っている (2019年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 5点(結末はすぐ判る。しかし画面の緊張感はすごい)
少年の出番 100%(主役少年を観るための作品)
お薦めポイント 14歳の少年の血まみれの熱演
映画情報など 2019年製作。未メディア化。配信あり。
(写真は野上天翔君)


2015年の『なつやすみの巨匠』で主役を演じた野上天翔(たかと)君が14歳になってまた主役を演じた約25分の短編。東京には出ず九州で活動されているため、なかなか情報がありませんでした。ご本人のblogなどをたまに読んだりする程度。

京都国際映画祭2020がオンライン開催され、色々な方のTwitterで本作が無料配信される事を知り、喜んで鑑賞しました。吉本興業が運営する配信システムを利用しているため、IDの取得が必要など少し手間がかかりました。3日間の配信期間中に2回鑑賞。でもブルーレイなどがあれば手元に置きたい作品です。

血溜まりの中で気を失った少年。一体何が起こったのか...
■ストーリー

中学生の天翔(野上天翔)は父親から激しい暴力を受けている。その日も父に馬乗りになって殴られて気を失った。気がつくと血溜まりの中で父が包丁で刺されて死んでいた。母がいない。フラフラと外へ出たところで警察に保護された。誰が通報したのか?

凶器の包丁は見つかっていないが母が殺害を自供。天翔は母は無実だと主張するが、天翔のノートのあるページが無くなっているのに気づく。そこには天翔の字で殺す殺す殺す...と書いてあった。母は天翔を守るために自ら罪を背負った事を知った...

■重い十字架を背負って生きていくことに...

暴力を受けた少年が思わず包丁を手に反撃。しかし少年はその事実を一時的に忘れてしまったという事でしょうか。少し脚本に無理があるかもしれません。母は少年の将来を守るために罪を背負ったのですが、少年もまた大きな十字架を背負う事になると思うのです。

いくらクズ人間とはいえ父親を殺めてしまったこと。その罪を母が被ったこと。その事実を知らん顔してこれから生きていけるのでしょうか。生きていけるとしたら自分もクズ人間...彼のこれからの人生も映画にしたら面白いかもしれません。(よくあるテーマですけど)

■14歳。切ない表情がいい...

主役の野上天翔君。本作での役名も本名と全く同じ。まだ童顔は残っているものの、やはり14歳という思春期のやるせない表情が素晴らしい。監督さんもそこを狙っていたのでしょうか。カメラは彼のアップばかり。まるで天翔君のPV(プロモーションビデオ)みたいに。

25分の短編とはいえ、最近では少年をここまで撮ってくれる作品はなかなかありません。脚本的には説明不足や強引だなと思う点も多々ありましたが、私にとっては十分な満足作品です。もう少し長い尺で野上天翔君を見てみたい。

気がついた。何が起こったのだろう...
(最初からとにかく野上天翔君のアップばかり)
隣で父が死んでいた。包丁が刺さったまま。
母の姿が見えない。少年は母を探しに...


次に気がついた時は病院のベッドの上。
付き添いは若い叔父。母の弟だった。
母が殺害を自供したと聞いた。
そんなバカな...母は無実だ!


退院して自宅に戻った。証拠を探そう...
(少年とはいえ重要参考人。現場に返していいの?)
地獄の日々がフラッシュバックする。
母も自分も父の暴力に怯えていた...


母が更に全てを詳細に自供。事件は決着へ。
少年は叔父(右)に引き取られる事になった。
少年の目は暗い。背負った十字架の重圧か...
(もう少年の顔ではなくなった...)



※後記
本作の警察の捜査は甘いですね。母が自供しているとはいえ、現場状況からみて14歳の少年は重要容疑者のはず。少年とはいえ、好き勝手にほっつき歩く事など許されるのでしょうか。もちろん映画ですので、こんな事を考えながら見ると楽しくなくなります。







▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼第3部トップへ戻る