少年 (1969年)
少年映画評価 |
7点 |
作品総合評価 |
7点 |
少年の出番 |
100%(主役) |
お薦めポイント |
「当たり屋」少年の孤独 |
映画情報など |
1969年公開/DVD発売終了(写真は、阿部哲夫君) |
■「当たり屋」少年の孤独
大島渚監督の初期の代表的な作品。もうかなり以前にレンタルビデオで2回鑑賞しました。今回レビューを書くに当り、もう1回観ようと探したのですが、DVDは廃盤になっており、どうしても入手できませんでした。従って細かなストーリーなどは覚えておらず、ネット情報などを参考に、ほんのサワリだけ。
■ストーリー
主人公の少年(阿部哲夫君)は、父親(渡辺文雄さん)、継母(小山明子さん)とその連れ子(木下剛志くん)の4人家族。しかし「家族の絆」なんか全く無い悲惨な一家。
父親は全く働かず暴力を振るうだけ。一家の生計は継母の「当り屋稼業」。車の前に飛び出て接触し、運転手から慰謝料を奪い取るもの。しかし継母はケガのために稼業ができなくなる。(この辺は記憶が曖昧なので、間違っていれば申し訳ありません。)
そこで「当り屋」を少年がやる事になり、父親も舌を巻くほど立派に稼業を勤めていく。しかしながら当然のこと、少年はそんな仕事をやりたくない。父親の暴力にも耐えかねて、何度か家出をするが、誰も身寄りのない寂しさにも耐え切れず、結局はこの酷い家族の下へ戻ってくるのだった。
そのうち、妊娠して堕胎を強要されている継母と少年の間に奇妙な愛情が芽生えてくる。同じ場所で稼業を続けると足が着くので、一家は北へ北へと旅を続けて、とうとう北海道まで来てしまった。
父が継母に暴力を振るった日、少年は雪の中へと走り出ていく。その後を幼い弟が追いかけてくる。その時、たまたま通りがかった車が事故が起し、一人の少女が亡くなった。この事故をきっかけに一家は警察につかまる。少年の心には重い重い枷がかけられたまま。
■若き大島渚監督の珠玉の作品
大島渚監督作品と聞いて思い出すのは「愛のコリーダ」と「戦場のメリークリスマス」くらいでした。前者は観た事もありませんし、興味もありません。後者はTVで放映されているのを観ましたが、北野武さんと坂本龍一さんという異色コンビ以外、あまり印象にも残っていません。
どちらかというと「朝まで生テレビ」だったか討論番組などで、すぐに切れてしまう激情型のオッサンという印象しかなく、映画監督として尊敬できる人とは思っていませんでした。
しかし、この「少年」という、ストレートで何のヒネリもないタイトルの映画を観た時、暗い作品ではあるけれど、こんな心象的な作品も撮れるんだなあ、と感心した事を覚えています。ネットで本作品の事を読むと、製作費が無かったため、色々な制約があり苦労して撮った作品であるように書かれています。
お金が無くとも、意欲がイッパイある若い監督の作品は、どこか光るものがあります。(勿論、ひとりよがりで自己満足だけのカス作品も多々ありますけど)大御所と呼ばれ、製作費も十分集められるのに反比例して、今ひとつキレの無い作品になっていくのは、ある意味「老い」という事かもしれませんが。
雪の中。兄を追いかける
■少年を演じた無名子役
主役少年を演じたのは、阿部哲夫君。決して美少年ではありませんが、その瞳の寂しさ、思いつめた表情は、演技とは思えませんでした。モノクロ画面とあいまって、彼のたたずまいは、そのまま巨匠が描いた「名画」のようにさえ思います。
雪の中をひとり歩く少年を後を、ヨチヨチと追いかけてくる義理の弟(木下剛志くん)も、忘れられません。血は繋がっていないけれど、2人はかけがえのない兄弟なんだ。そんな思いが見えて切なくなったものです。
ネットで検索すると、阿部君は子役どころか、養護施設にいた孤児だったとの記載もありました。(本当かどうかは判りませんが)この話が本当だとすれば、やはり彼らが持っている寂しさは、演技ではなくホンモノだったのか、と改めて感動してしまいそうです。
■DVD再発売が待ち遠しい
こんなに高評価の作品なのに、なぜ「第3部」なのか。最初にも書きましたように、現在この作品を観ることができませんので、記憶が曖昧な部分が多く、正確な評価を下せない感じなのです。そのため、とりあえず第3部で紹介しています。
大島渚監督のDVDボックスが少しずつ再販されるとの記事を見ました。今年発売されるボックスには「少年」も含まれるようなので、もう一度きちんと鑑賞します。その上で改めて「評価」を見直しますので、今回は中途半端で申し訳ありません。
(一部業者サイトには、大島渚監督作品DVDボックスが格安価格で販売されています。よく読むと「中国から発送される」なんて記載があるのですが、これって大丈夫(合法)でしょうか。大丈夫なら買ってみたいなあ)