本作は第1部として、8月6日の原爆投下までが描かれています。太平洋戦争末期の広島、国民学校2年生のゲン(佐藤健太君)は、父(三國連太郎さん)、母(左幸子さん)、2人の兄、姉、弟のシンジ(石松宏和さん)の7人家族。
2人の兄は疎開や工場動員で殆ど家にいない。父はゲタの絵付け職人だが反戦主義者として、警察や近隣からマークされている。そんな暗い時代だが、ゲンとシンジは元気いっぱい!
「非国民の子」と苛めらようとも、決して負けはせず、明るく生きている。時にはイタズラが過ぎて、大目玉を貰ってもへっちゃら。そんな束の間の平和も、坂道をころげ落ちるように悲劇へ向います。まず父が警察に拘束された。何日も酷い拷問を受けた後、なんとか釈放。それでも考えを曲げることはなかった。
母のお腹には新しい命が宿っているが、家族には食べるものさえ足りない。イナゴを取ってしのぐ毎日。みかねた朝鮮人の朴さんが時おり差し入れをくれた。(朴さんは差別をしない父を慕っていた)姉が学校で泥棒扱いされたり、兄が両親の反対を押し切って海軍に志願したり、家族にとって試練が続く。
やがて運命の8月6日。たまたま登校日のゲンは学校へ。その時、原爆が炸裂。一時気を失ったものの、ほぼ無傷だったゲンが家に帰ってみると。父、姉、弟のシンジが倒壊した家の下敷きなっており、母が必死の形相で、大きな柱をどけようとしているが、ビクとも動かない。
やがて火が回ってきた。姉は既に亡くなっているのか一言も発しない。父は「もう逃げろ!生きるんだぞ」、シンジの「母ちゃん、兄ちゃん」切ない声が耳に残る。「私も一緒に死ぬ!」と気が狂ったように叫ぶ母を、ゲンは引っ張って逃げていった。
放心状態の母に更なる試練が襲いかかる。なんと、こんな時に陣痛がきたのだ。(ここで母親は死ぬと思い込んでしまい、何度DVDの停止ボタンに指がかかったことか)よろける身体で、半分焼け残った家に入り込み、ボロ布を集める母。(こんな時なのに、空家とはいえ他人の家へ入るのだから「すみません」と声をかける母の姿に思わず涙)
そんな母の姿に呆然とするゲン。しかし我に返ったゲンは、出産のためのタライ、水、鋏などを探しに奔走し、なんと見事、産婆さんの役目を果たしたのだ。そして、こんな日に新しい命・妹が誕生した。亡くなった父、姉、弟への思い。母の悲しみ。そして生まれてきた妹の人生。これからどうなっていくのでしょうか。