仔鹿物語 (1991年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 95%(主役)
お薦めポイント 北海道の大自然と仔鹿と少年
映画情報など 1991年公開/ビデオ発売終了(写真は、山田哲平君)


■仔鹿物語を検索してみれば

1947年の米映画が出てきます。名優グレゴリーペックが主演、少年はクロードジャーマンJr.で、テレビでも何回も放映された名作です。今回、紹介するのは、勿論そちらではなく、1991年の日本映画です。米映画のリメイクっぽいところもありますが、日活の児童映画に焼き直されています。

■ストーリー

北海道のJRローカル線である標別線は、1年後の廃線が決まり、運転士の谷木政夫(三浦友和さん)の一家は、職を失おうとしている。息子の谷木健一(山田哲平君)は、ある秋の日、近所の農家の織屋太郎(川谷拓三さん)に連れられて、山でエゾシカの群れを見て、鹿に興味を持つ。

その翌年の春、健一は、昨年みた鹿の一頭がジープに撥ねられるのを目撃する。傷ついた鹿を追いかけて山へ入った健一は、鹿が死んでいるのを見てショックを受ける。その時、そばに、生まれたばかりの仔鹿がいるのを発見し、喜んで抱いて連れて帰る。しかし家で飼うことはできないので、使わなくなった駅舎にそっと隠すのだった。

野生の仔鹿は、健一の与えるミルクを飲もうとしないが、健一の我慢強い努力が実り、とうとうミルクを飲んだのだ。健一は鹿を「ラッキー」と名づけて、自分の子供のように可愛がる。しかしある日、駅舎でボヤを出してしまい、ラッキーを飼っている事がバレ、両親から、すぐ山に返せ、と命じられる。

この窮地を救ってくれたのは、織屋太郎だった。太郎は健一がこっそり鹿を飼っている事を知り、野生動物の飼育許可証をとっており、ラッキーが成長する秋まで、との約束で健一が育てるよう、両親を説得してくれた。それからは、晴れて天下御免?でラッキーと一緒に暮らす健一。ラッキーはすくすく育ち、短い北海道の夏は健一にとって忘れらない、楽しい時間だった。

夏の終り、ラッキーが病気に罹り、急速に衰弱する。獣医にかかるが快復しない。そんな時、クラスの友人から山の奥に生えている「行者ニンニク」が特効薬だと聞かされ、友人達と山へ入るが、道に迷ってしまう。両親、警察、村の人の協力で健一達は無事に保護されるが、健一の母はこの事件ですっかり参ってしまい、ラッキーを手放すよう詰め寄るが、父や太郎が説得してくれた。

やがて、また秋が来た。父の運転士として最後の日、健一はラッキーを山に返しに行く。

■山田哲平君

この映画の主役は山田哲平君です。映画「四万十川」でも主演で、そちらのレビューも機会があれば読んで下さい。いつも何か思いつめたような、悲壮感の漂うような目をしているのですが、演技はしっかりしていて安心できます。(今の子役でいえば、広田亮平君のような安定感)

本家の米映画では、クロードジャーマンJr.君の「とんでもない可愛さ」が語り草になっています。アングロサクソン系のゴツゴツした男達なのに、子供は別の生物か?とまで思いました。山田くんは、そんな派手さでは、到底かないませんが、心から滲み出るような味わいで、いい演技だったと思います。

(ちょっと脱線)。そんなに可愛いクロードジャーマンJr.君ですが、この時代の役者の実態は、子役とはいえ、非情にすさんでいたと聞いています。クロード君もほんの子供にもかかわらず、撮影の待ち時間は、スパスパとタバコを吸い、横柄な態度を。

以上は、昔の映画雑誌で読んだ事があります(真偽の程は判りませんが)映画では天使でも、実は○○だったのか。でも最後に残るのは映画ですから、これもプロの仕事なんでしょう。

■動物モノの映画

仔鹿物語なので、本来は「鹿」が主役のはずなんですが、調教が難しかったのでしょうか、仔鹿そのものには、あまり感情移入はできませんでした。近年の少し狙いすぎの犬猫映画ではなく。どちらかといと、少年の成長、リストラされた運転士、過疎地に残る老いた両親など、人間の話や、ちょっと社会問題なんかも織り交ぜた内容が中心です。

あくまで児童映画ですので、北海道の美しい景色などを淡々と描いています。音楽もオーソドックスで、感動の押し付けなんかと全く無縁の作品でした。当然、ヒットだとか、興行収入とかも無縁かもしれません。テレビ局が製作に関わるようになってから、この路線が崩れてしまったようです。

動物モノは、一定のヒットが見込めるとなると、これでもか、これでもか、と感動の押し付け的なプロモーションをしてくるので、天邪鬼の私は、食傷気味になっています。そんな訳で、最近の「子きづねヘレン」「マリと子犬の物語」などは、食わず嫌いしておりました。でも、今度観てみましょうか。

■その他のこと

この映画で、印象的な役を演じていたのは、故・川谷拓三さんでした。川谷さんも、ヤクザ映画や時代劇の悪人役、下積みが長く、また私生活でも色々な事を言われておりましたが、この映画のような朴訥な男の役は、ハマリ役だったように思います。

もう一つ。やはり、この映画のトップクレジットは、三浦友和さんだったこと。三浦さんもいい演技だったのですが、実質主役は山田哲平君でした。この辺は昔も今も日本映画なんですね。





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