子ぎつねヘレン (2006年)
少年映画評価 |
7点 |
作品総合評価 |
3点 |
少年の出番 |
100%(堂々の主役) |
お薦めポイント |
北海道の美しい風景と北キツネ。 |
映画情報など |
2006年公開/DVD発売済(写真は深澤嵐君) |
定番の動物モノ。しかもテレビ局製作とあっては、まず見る気がおきません。そういう訳で、ズルズルと見ないままに時間が経ってしまいましたが、中古DVDショップで500円で売っているのを発見し、とうとう鑑賞に到りました。
全く予想していた通りの、薄っぺらい内容の映画でしたが、幼いのに主役を務めた深澤嵐君。彼の存在感には改めて敬服させられました。いや、すごいです。
■ストーリー
小学生の太一(深澤嵐君)は母子家庭の子。母は写真家で、仕事が忙しくて、太一を北海道の知人宅に預けてしまった。預かってくれたのは、獣医の矢島(大沢たかおさん)さん。
ある日、太一は傷ついた子ギツネを見つけた。母とはぐれてしまったようだ。獣医の矢島さんに「治してやって」と頼むが、子ギツネは頭部を損傷しており、目も耳も嗅覚もダメで、自然の中で生きていくのは無理な状態だった。
太一は、子ギツネをヘレンと名付け、自分が母親になる事を決心する。矢島さんは、ヘレンを獣医大学の先生に託すが、やはりダメだったらしい。しかもこのままでは、研究のために実験(解剖?)されてしまう事を知ったから、さあ大変だ!
太一は、大学に押しかけて行き、ヘレンを連れて帰ってきた。(ちょっと強引な脚本)しかしヘレンの余命はいくばくも無い。太一は、ヘレンの短い命に、精一杯の愛情を注いだ。やがてヘレンは死を迎える。しかし奇跡は起きた。死の間際、ヘレンは太一を呼んだ。母を求める声で呼んだ。ヘレンは太一の愛をしっかり受け止めたのだ。
■少年の成長物語としては、なんとか合格
お涙ちょうだいの動物モノは、どうしても演出過多が鼻につきます。一番、興醒めなのは、人間が感動、感動と騒ぐほど、肝心の「動物サマ」が熱くなっていないこと。今回のキツネだって、知らん顔。いや、それどころか、迷惑そうな顔をしています。
ましてや、ご都合主義(めでたし、めでたしで終る)の脚本のオンパレードだったらなお更です。本作品は、そこは厳しく、あえてキツネを死なせ、少年の成長物語にしたのは、良かったとは思います。
最初にも書きましたように、この作品を見れるようにしてくれたのは、ひとえに深澤嵐君のおかげです。大人に媚を売るような可愛さは全くありません。子供なのに、いつも眉の間にシワを寄せて、憤慨したり、悩んだり。
正直に言って、自分の子がこんな風だったら、あまり嬉しくないかもしれません。しかし映画の中の存在感は、子役の域を超えて、風格さえ感じます。
■その他、少し納得できない点など
この作品で、あまり細かいところにケチをつけても仕方がないのですが、少しだけ。一点目はキャストのクレジット。本来ならトップに深澤嵐君を持ってくるべきとは思いますが、3番目。しかも、もう一人の少女俳優、小林涼子さんと2人ペアでの扱い。
トップの大沢たかおさんは仕方ありません。2番目は母親役の松雪泰子さん。なぜ2番目が彼女なのでしょう。出番はほんの少し。しかも母親としてのオーラは全く感じられませんでした。(まあ、芸能界の序列なので、言うだけ野暮でしたか。)
2点目。太一少年は、ヘレンを撮るために、矢島おじさんからカメラを渡されます。それは、年季の入ったキャノンAE-1 一時代を築いた名機の一つですよ。
太一少年は、パシャパシャとヘレンを撮りまくります。しかしフィルムの巻上げ(今や知らない?)も、焦点合わせもしません。それで、出来た写真はピントばっちりの素晴らしい写真ばかりとは。
右の写真を見て下さい。元カメラマニアのおじさんは泣きたくなります。右手はシャッターなら、左手は下からレンズをホールドし、ピントリングを親指と人差指で回します。絞りやシャッター速度はカメラに任せます。ああ懐かしい!(スタッフの中に、カメラの持ち方くらい、指導してあげられる人はいなかったの?)
カメラの話をすると止まりませんので、ここで止めておきます。さて深澤嵐君も中学生になってから、見る機会がなくなりました。どんな個性俳優に成長するのか、楽しみにしているのですが、俳優を続けるのか、他の道へ進まれるのか。とにかく頑張って欲しいものです。