少年映画評価 |
5点 |
作品総合評価 |
4点 |
少年の出番 |
80%(一応、主役) |
お薦めポイント |
カニと少年の友情。笑ってはいけません。 |
映画情報など |
2006年公開/DVD発売中 |
かにゴールキーパーだって。このふざけたタイトルのせいもあり、見る気がおきなかったのですが、例によって、大阪・日本橋の中古ショップでDVDを見つけ、つい買ってしまったのでした。
タイトルから想像していたような、ナンセンス、脚本が破綻したような映画ではなく、意外にもオーソドックス?な作品で、それなりに楽しめました。(出来自体は大したことありませんが。)
少年と巨大カニとの友情物語。シュールですなあ
■ストーリー
環境破壊が進む地球。ある日、突然変異で巨大なカニが生まれ、浜辺に漂着した。(原爆実験のゴジラと同じ) 近所の悪ガキが、棒で叩いていたところ、通りかかった小学生の真一(春山幹介君)が、なんとか助けてやった。
真一は両親と3人暮し。漁師の父は、漁船が故障した事を理由に漁に出ず、遊んでいるだけ。母のアルバイトで生計を立てているが、家の中は暗い。真一は両親をなんとか説得し、助けたカニを納屋で飼うことにした。なんと、このカニは、人間の言葉を覚え、真一とカニは、友情で結ばれるまでになった。(何のこっちゃ?)
ところが、生活に困った父が、カニを食材として売ることにしたのだ。それを聞いたカニは、家出して東京へ。東京へ出たカニは、ヤクザに拾われ、キャバレーやソープランドで働かされるが、カニに同情したソープランド嬢に助けられ、真一の家に戻ってきた。
食材として売られないよう、家計を助けるため、バーテンとして働く。カニ得意の横歩きが、バーテンにピッタリだった。(またまた、何のこっちゃ?)せっかくバーテンで貯めたお金を、東北の田舎から出てきた娘にあげてしまった。娘は騙されて借金苦で自殺しようとしていたのだった。そんなカニを見ていた一人の男がいた。
プロサッカー・チームの監督(藤岡弘さん)だ。カニの敏捷な動きを見て、これはゴールキーパーに最適だと考え、カニをスカウトしたのだ。後は、ご想像通りの展開です。
■東映の特撮テレビ・シリーズの大人版?
もっとドロドロした、アングラな映画だと思っていましたが(この前に紹介した「太秦ヤコペッティ」のような)、意外に明るい、健全とは言いませんが、どこか、昔の児童向け特撮シリーズを思い出します。
カブト虫をモチーフにした「ビーロボ・カブタック」というシリーズがありましたが、これと全く同じ雰囲気です。もっとも、向こうは少年少女向けでしたが、こちらはキャバレーやソープランドが仕事場ですので、ちょっと違うかもしれません。
笑ったのは、カニの「ミソ」が出し入れ自由なこと。ミソを出してしまうと、カニはパー(脳なし)になりますが、またミソを入れると知性が戻るそうです。カニミソの代りに「京都の白味噌」を入れると、京都弁になってしまうなど、子供レベルのギャグでしたが、笑えました。
■春山幹介君。主役なんでしょうか
さて、映画のキャストのトップは春山幹介君。いわゆるトップ・クレジットですから、主役なんだと思っていましたが、どうも扱いが軽いのです。もしかしたら、単に登場順のキャストかもしれません。
春山君は、テレビドラマ等にも数多く出演しているようですが、この世代周辺には、神木隆之介君などの人気子役が大勢おりましたので、どうしても脇役に回ることが多かったように思います。そんな春山君が、やっとつかんだ主役の座と思っているのですが、そう簡単に行かないのが人生なんですね。
本作品の撮影時は中学生で、声も低くなっているのに、ランドセルを背負った小学生役は、やや違和感があったかもしれません。でもよく頑張っていたと思います。
■DVD特典のメイキングは、やや残念。
映画本編だけを見れば、扱いが軽いとはいえ、春山君主演の少年映画だと言えない事はありません。これで止めておけばよかったのに、特典映像のメイキング集を見てしまいました。
ふつうメイキングには、監督や主要キャストへのインタビュー、クランクアップの様子などが収録されています。本作品もそれは同じ。
女優の、小泉彩さん(ソープ嬢役)、田代さやかさん(田舎娘役)がメインで登場し、インタビューなどがあります。男優では、出番は僅かですが、有名男優の藤岡弘さん、竹中直人さんなど。やはり大人の俳優の方々がメインで、少年俳優 春山君は、紹介もインタビューも全く無し。完全スルーでした。
やはり主役ではなかったのでしょうか。ちょっと可哀想。でもこれは想定の範囲内。たとえ主役であろうと、子役を軽視する日本映画ではよくあることです。しかし同じ子役でも、少女俳優は違います。
特典映像には、もう一つの特集がありました。少女俳優・紗綾(さあや)さんのメイキング映像です。「奇跡の美少女」というサブタイトルがついたプロモーションビデオと言っていいものです。
春山君の同級生役を演じた、紗綾さんのプロフィールを見ると、春山君より1つ年下。映画本編では、それ程出番もなく、どちらかといえば、脇役に近い感じでした。でもメイキング映像を見る限り、スタッフ全員から、アイドルのように大切に扱われています。まあ、実際に凄い美少女でした。
メイキング映像のカメラは、紗綾さんに密着して追いかけます。彼女の笑顔がアップで写ります。それはいいのですが、映画シーンのメイキングですから、紗綾さんの近くには、必ず春山君もいるのです。でも、一緒に映っている春山君に、カメラのフォーカスが当ることはありません。なにか、それが哀れで。可哀想な感じでした。
いつか、彼がメイキング映像でも堂々の主役になるような、大俳優になって欲しいものです。とはいえ、映画本編では、春山君が堂々とメインで映っていますので「何をゼイタク言ってるんだ」と怒られるかもしれません。