少年映画評価 |
7点 |
作品総合評価 |
7点 |
少年の出番 |
70%(キーマンではある) |
お薦めポイント |
前作に引けを取らない昭和風景 |
映画情報など |
2007年公開/DVD発売済 |
■話題作となった前作の後日談
2005年公開の前作は、日本アカデミー賞をほぼ独占するなど超話題作となり「昭和ブーム」を巻き起こしました。西岸良平氏のマンガが原作ですが、登場人物などは映画向けに変えられており、マンガとは少し違うテイストになっています。
■ストーリー
前作は、東京タワーの完成直前の昭和33年、夕日町の自動車修理工場「鈴木オート」一家と、売れない作家の茶川竜之介を軸にした人情ドタバタ劇でした。踊り子ヒロミは、知人の私生児の淳之介(須賀健太君)を茶川に押し付けて去っていく。一方、淳之介の本当の父親が現れ、連れて帰る途中で淳之介は逃げ出し、茶川のもとへ戻ってくるところで終わりました。
本作は、その4ヵ月後の昭和34年が舞台。淳之介の父親は改めて息子を取り戻しに来るが、茶川は芥川賞を取るべく、気合を入れて小説を書き始める。一方、鈴木オート家では、事業に失敗した親戚の少女を預かったり、集団就職してきた六子の同級生が悪事に手を染めたりと、小さなドラマが連続する。
結局、茶川は芥川賞を逸するが、ヒロミは戻ってきて結婚し、淳之介も茶川のもとで暮らすことになる。すべて、めでたし、めでたし。前作で残した問題点は、本作でほぼすべて解決してハッピーエンドになったのでした。
■須賀健太君と小清水一揮君
前作に引き続き、子役の2人が物語をスパイスのようにピリッと引き締めています。舞台は4ヵ月後ですが、実際には2年近く経っているので、成長ぶりが心配でした。
須賀は身長が伸び、声変わりもしていましたが、元々がハスキーな声質だったので、そんなに差は感じませんでした。 身長は高くなっていますが、顔は童顔ですから、巷で言われるほど違和感はなく、映画の中に自然と入っていけたと思います。
一方、小清水君は本当に2年経過したの。1人だけ2年前から冷凍保存でもされていたかのように、前作のままでした。パンフレットで、父親役の堤真一さんが、小清水君を「目が大人になっていて、ドキッとした」と言われていましたが、演技力は非常に成長したように思います。
ちょっとした仕草やセリフなど、昭和時代の腕白小僧を可愛く、少し憎たらしく、本当に自然な感じで演じており、須賀君より上手いと思いました。これから演技派の俳優になっていく予感がします。また友達の悪ガキ連中も、前作と全く同じ子役を起用していますが、彼らの方は人並みに成長しているので、須賀君や小清水君と同級生には見えず、こちらは違和感大ありでした。
いわば端役の子供達ですので、年相応の子役を別に調達?してくればいいのに、前作と同じ子役を起用したのは、山崎監督のこだわりなんでしょうか。私は山崎監督の子役への気配りなんだと思います。
端役といえども同じ子供です。前作で一緒に苦労した「山崎組」の一員な訳ですから、彼らにも同じ役をやって貰うことで、役者としての尊厳を守ってあげたのではと思います。
■興行的には成功、でも評価はダウン
前作は話題を独占はしましたが、興行収入的にはそんなに伸びず、邦画ベスト5にも入っていないようでした。本作は、同時期に大した対抗作がなかったこともあり、興行収入は前作を大幅に上回っており、ビジネスとして成功でした。
しかし前作との比較から、作品としては目新しいものも、感動の盛り上がりも少なく、評価的には厳しいものも多く、2007年度の映画賞も大した受賞はありませんでした。これは結局、この作品だけを単独でみると評価は厳しくなりますが、前作と合わせて一つの作品とみるべきだと思います。
前作は前編で、起承転結のうち、転までを描いたものであり、本作は後編で、結を描いたものと考えると、本作だけで評価すると分が悪いです。2年越しに完成した昭和の人情群像ドラマとして、立派な作品だったと考えます。
■日本映画批評家大賞は複雑な気分
前作は大量の映画賞を受賞しましたが、子役の須賀君と小清水君は無冠でした。これは映画の内容からみて非常に不本意なものだと憤っていました。
本作は、第17回日本映画批評家大賞で、審査員特別演技賞が須賀君と小清水君に授与されました。これは良かったと喜んだのですが。しかし同じ審査員特別演技賞に小池彩夢さん(鈴木家に預けられた親戚の少女役)が選ばれているのをみて、少し複雑な思いもしました。
小池彩夢さんや、その関係者、ファンの皆様には申し訳ありません。前作から本作を通じて、須賀君と小清水君が占める位置や貢献度を考えると、小池さんと同じ評価というのは、やや納得がいきません。小池さんの演技も素晴らしいものでしたが。
そもそも日本映画批評家大賞とは何か。公式ページでみましたところ、「評論家による評論家だけの目で選んだ他に類のない賞です」と書いてあり、どんな批評家が選考したのか見てみますと
実行委員長が水野晴郎氏で、11人程の方が選考されているようですが、もう少し勉強して欲しいほしいものです(偉そうですみません)。このままでは、私が勝手に選んだ、お遊びの、少年映画大賞「青輝賞」と大して差はないですよ
<追伸>水野晴郎氏が逝去されました。ご冥福を祈ります。水野氏の映画への情熱には本当に頭が下がります。合掌。まもなくDVDも発売されますので、もう一度見直してみたいと考えています。