遠くの空に消えた

少年映画評価 6点
作品総合評価 5点
少年の出番 50%(主役なんですが)
お薦めポイント ファンタジー風の美しい映像
映画情報など 2007年公開/DVD発売中(写真は神木隆之介君)


■無国籍風のファンタジー映画

行定勲監督のオリジナル脚本。空港建設反対という現代的な話の形をとりながら、時代も国も超越したようなファンタジー作品で、公開時には賛否両論のあった(どちらかと言えば否定派が多かった)作品でした。

神木隆之介君。右後方は、ささの友間君
■ストーリー

北海道のある地方空港、小型ジェット機から降り立った青年、楠木亮介(柏原崇さん)。彼は遠くを見つめながら、CA(昔風にいえばスチュワーデス)に少年時代の話を始めたのだった。

少年、亮介(神木隆之介君)は、父(三浦友和さん)と2人で北海道の空港建設予定地へやってきた。父は空港建設公団の責任者で、反対する住民をよそに工事を強行する事が目的だった。

ふとした事から亮介は、反対派住民の息子、公平(ささの友間君)、UFOと交信する不思議な少女ヒハル(大後寿々花さん)と友達になる。何事にも無関心、批判的だった亮介は、この2人や鳩を飼うおかしな青年など、村人と交流を続けるうちに、村に愛着を覚えるようになっていった。

しかし住民と公団の対立が激化、とうとう事件が起り、ヒハルや亮介の父が傷ついてしまった。大人の醜い争いに嫌気がさした亮介と公平は一念発起。奇跡を起こしてやろうと、村の少年達を集めて空港建設予定地にUFOを呼び込む事に決めたのだ。ミステリーサークルを作って。

■神木隆之介君、ささの友間君

神木君はちょうど二次性徴期にさしかかり、身体つきが逞しくなりかけていますが、声が不安定で、大声を出す場面は苦しそうでした。しかし天才子役として蓄積してきたキャリアの貯金でしょうか、演技に風格というか貫禄さえあり、この点はサスガでした。

しかし主役とはいえ、残念ながらそんなに印象に残る役ではありませんでした。行定監督は女性を描く方が得意なんでしょう。不思議少女、大後寿々花さん、先生役の伊藤歩さんの方に力が入ってしまうのは仕方ないでしょうか。

しかしこの映画で、演技で他を喰ってしまったのは、ささの友間君でした。名脇役として注目されている俳優、笹野高史さんの息子さんで、父親似ですから決して美男子ではありませんが、子役とは思えない味のあるイイ面構えをしています。(不敵な面構えなのに、変声期前のキンキン声というギャップがまたよろしい)

2人の少年と1人の少女という3人組が、奇妙な友情(愛情)を育んでいくのですが、結局どの2人の仲もある一線を越える事はなく、少し欲求不満が残ります。亮介と公平の2人に期待したのですけど。ラスト、亮平が車で村を去るシーン、公平は全力疾走で亮平を追いかけて来るのに亮平は無視。ちょっと残念でした。

蛇足ついでに、男2人と女1人の3人組といえば、懐かしのフランス映画「冒険者たち」アラン・ドロン、リノ・バンチュラ、女性の3人組。この映画でも最後の勝者は2枚目アランドロンではなくて、2枚目のリノ・バンチュラでした。(知らないか、こんな古い映画)

■やりたい放題のオリジナル脚本

近年ではめっきり減ってしまったオリジナル脚本作品。メジャー映画でオリジナル脚本映画を撮ろうなんて、リスクを恐れるスポンサーが許してくれないんでしょう。でも行定監督は「世界の中心で愛をさけぶ」など、莫大な興収を得たご褒美なのか、今回は行定監督の好き放題、やりたい放題の世界を撮らせて貰ったような感じがします。(あくまで感じですけど)

舞台の村は北海道ですが、まるで西部劇。地元チンピラのボスはカーボーイハットに黒の上下。映画「シェーン」の悪役ジャック・パランスの真似でしょうか。(またまた知らないか、こんな古い映画)

サーカスのピエロみたいな外人の楽団と音楽は、フェデリコ・フェリーニのパロディかな。「道」とか「8・1/2」を意識したような画面でした。こんなお遊び的は絵作りは決して嫌いではありません。ニヤっとしながら見ておりました。

しかし、2時間20分という長丁場とはいえ、登場人物が多すぎて、どの人物も掘下げが中途半端だったように思います。女性教師のエピソードなどは思い切ってカットして、神木君をもっと前に出してくれればいい作品になったように思います。でもこんな映画、色んな意味でもう作れないでしょうねえ。





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