こんにちはハーネス (1983年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 7点
少年の出番 85%(前半の主役)
お薦めポイント 少年の好きなもの。愛犬とお姉さん
映画情報など 1983年公開/DVD等未発売
写真は前半主役の斉藤優一君


地味だけれど良質な映画を製作してきたこぶしプロの作品。盲導犬をテーマにした本作の事は知っていましたが、どうしても見る機会がありません。Amazonで中古ビデオを検索しましたが、当時のパンフレットが出品されているだけ(しかもびっくりするお値段)。半分あきらめていました。

そうしたら何とyoutubeに全編がUPされているではありませんか。但し画質は低い上になんとチェコ語。音声はそのまま日本語でチェコ語字幕なら問題ないのですが、完全にチェコ語に吹替え。大体のあらすじは理解しているので無声映画と思って鑑賞しましたが、それでも細部は判りません。

しかし吹替ってすごいものですね。完全に日本映画のはずなのに、少年も女性も大人たちもチェコ語で話していると、まるで東欧の映画を見ている気分になってきます。旧ソ連や東欧にはアジア由来の人たちもいるので、日本人の顔も東欧人に見えてくるのが不思議。

  ハスティが病気の時は涙を流しながら看病した。そんなハスティとの別れの時がやってきた。
(右の次郎少年の暗い眼差しが印象に残ります)
■ストーリー

千葉県のある港町。小学生の次郎(斉藤優一)は、仔犬のハスティと一緒にのびのび暮らしていた。ある日、お屋敷に住む砂絵子(中村明美)のピアノと美しい姿を見て一目惚れ(次郎君、年の差考えなさい!)。次郎は仔犬のハスティをダシに使ってまんまと砂絵子と仲良くなった。そんな砂絵子の目標は全日本ピアノコンクール。

しかし二人の運命も下り坂。ハスティは盲導犬になるべく訓練所へ帰る事になった(盲導犬となる犬は仔犬の間は一般家庭に預けられていた)。大ショックの次郎。彼の心の支えは砂絵子さんだけ。しかし運命はもっと過酷。砂絵子は交通事故に合い失明する大怪我。砂絵子は絶望のあまり自殺未遂すら。

(ここから主役は砂絵子)。次郎や周囲の支えで何とか立ち直った砂絵子は盲学校へ通いながらピアノを続け、また盲導犬を導入する合宿へ参加。砂絵子の盲導犬はなんとハスティ。厳しい訓練を経てハスティは立派な盲導犬に。そして自宅に帰ってきた。やがて念願の全日本ピアノコンクール。ハスティと一緒に舞台に立った。

砂絵子は見事入賞。そのパーティ会場で次郎は久し振りにハスティと再開。ハスティは喜びながらも次郎に近づかない。ハスティに裏切られたと思った次郎は泣き悲しむが、盲導犬としてのハスティを理解するほかなかった。

■なぜタイトルはハスティではなくハーネスなのか?

最初はハーネスが犬の名前だと思っていました。ハーネスとは盲導犬につける胴輪のことで「こんにちはハーネス」とは盲導犬と暮す生活になった事を表しているようです。(映画データベースには邦画なのに原題:ハスティと記載。youtubeのチェコ語版もタイトルはハスティ。)

即ち本作品は私が思っていたような少年と犬の映画ではなく、心ならずも失明して絶望の後、盲導犬と出会って希望を見出した女性の映画だったのです。タイトルはそういう意味を込めているのでしょう。

監督の後藤俊夫氏はマタギ、こむぎいろの天使などの動物映画や児童映画を手がけられてきました。しかし決して子供向け作品ではなく社会的な視点をメインにされています。ですのでTV局が粗製乱造するおイヌ様映画とは別物。また少年映画でもありません。「Beauty うつくしいもの」(2009)も後藤監督作品。

とはいえ前半主役の斉藤優一君は立派な少年俳優でした。チェコ語で吹替した少年はどんな子か知りませんが、妙に合っていて本当にチェコの田舎の少年映画に思ったりして。後半主役の中村明美さんは逆にチェコ語がアジア系の言語(中国か韓国風)に聞こえてくるのが不思議。

本作品を見たチェコの人々は日本をどんな国だと思ったのでしょうか。ちょっと興味があります。後藤監督作品を本家本元の日本人が見れないのは本当に残念。是非ともブルーレイで発売して欲しいものです。

ハスティと楽しく暮らしていた次郎
すごい美人のお嬢様を見てびっくり
頭の中は砂絵子さんでいっぱい
(ああもう僕の妄想storyは...)


砂絵子さんの帰りを待つ次郎
(銚子鉄道?でしょうか)
念願かなって砂絵子さんの部屋へ
(ピアノのレッスンに聴き惚れる)
ああ人生は楽しい事だらけ...
(ハスティとお風呂。迷惑そう?)


悲劇その1。ハスティとの別れ
(ハスティの車を追いかける次郎)
悲劇その2。砂絵子さんが事故で失明
(飛下り自殺を必死で止める次郎)
復活した砂絵子さん。盲学校へ
(エスコートする次郎,調子のって..)


パーティ会場にハスティがいた。
喜色満面でハスティを呼ぶ次郎
しかしハスティは次郎に近づかない
(僕たちの絆は...思わず涙)





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