原作は若い文学者が執筆した同名の新潮新書。小説でも何でもない著作ですが、それにドラマを肉付けして、強引に映画化した作品という感じでした。
堺雅人さん演じる下級武士の一代人生記。それを息子(大八木凱斗君)の視点とナレーションで進みます。お家を継ぐ息子との関係、嫁入りしてきた妻(仲間由紀恵さんとの関係、祖父母の言動など、面白いと思う部分は多々ありましたが、エピソードが貧弱すぎて、ドラマとして感動することは私には困難でした。
少年映画評価 | 5点 |
作品総合評価 | 4点 |
少年の出番 | 35%(意外に出番あり) |
お薦めポイント | 武力でなく算盤で藩を救う物語。 |
映画情報など | 2010年公開/DVD発売中 |
2010年12月11日、新宿ピカデリー(東京)にて鑑賞。朝一番、9:20からの上映を鑑賞しました。新宿ピカデリーは、すっかりシネコンになっています。前身の古い映画館の時代は何回か来たのですが、味わいがあったのに、シネコンは全国どこでも金太郎飴です。座席が快適である事はいいですけど。
原作は若い文学者が執筆した同名の新潮新書。小説でも何でもない著作ですが、それにドラマを肉付けして、強引に映画化した作品という感じでした。
堺雅人さん演じる下級武士の一代人生記。それを息子(大八木凱斗君)の視点とナレーションで進みます。お家を継ぐ息子との関係、嫁入りしてきた妻(仲間由紀恵さんとの関係、祖父母の言動など、面白いと思う部分は多々ありましたが、エピソードが貧弱すぎて、ドラマとして感動することは私には困難でした。
加賀藩の下級武士の実際の家計簿から、当時の武士の意外に困窮した生活がみえてきた。その一点の事実のみから、大河ドラマにまで発展させようというのは、いかに実力監督、森田芳光氏でも、かなり苦しいものがありました。
息子の幼年期を演じた大八木凱斗君、ややセリフがたどたどしい部分もありましたが、凛々しくて、しっかり演じており、なかなか出番も多く、活躍していたのではと思います。雰囲気が映画「花よりもなほ」の田中祥平君に似ていました。(髪型とか羽織はかまを着れば、誰でも似てしまうのでしょうけれど。)
パンフレットで略歴をみると京都出身との事。やはり田中祥平君と同じく、時代劇は京都での撮影のため、地元の子役を使ったのかもしれません。
■藩を救った経済戦略はあるのさて、この映画では「刀ではなく算盤で藩を救った」とのキャッチフレーズがありますが、この主人公がやったのは、単に収支計算だけ。これだけしか描かれていません。しかも出す施策が、単に節約、節約、節約だけ。これでは経済学、経営戦略という面から見れば、何の説得力もない気がします。
映画スタッフや脚本の方に、経済戦略知識があまり無いのかもしれませんので、これ以上、望んでも仕方がないかな。演じている役者さんの豪華さ、上手さもあり、全編に渡って退屈することは決してなく、良質のエンターテイメントであることは間違いありません。
しかし、先日から見た「信さん」「酔いがさめたら、うちに帰ろう」そして本作品。全て底の浅い感じが拭えません。もちろん、映画に何を求めるかは、人によって違いますので、その場を楽しく過ごす事を追求する映画だって立派な映画だと思います。
でも私は1800円(たいてい前売券1300円を使いますが)を払うのであれば、家に帰ってからも余韻が残る、考えされられる、何かが変る、こんな作品に出会いたいものだと思っています。
昔の邦画、例えば黒澤作品なんかは、エンタメと深みと両方を満足させる作品があったと言われます。その邦画の伝統も守っていって欲しいものです。