ある地方の児童養護施設に、健一(小川光樹君)と龍二(西須隼太君)の幼ない兄弟がいた。両親がいなくなり弟と二人だけになった健一は、幼いながら弟を必死で守ろうとする。しかし弟だけは里親にもらわれていった。
時は流れて二人が青年にさしかかろうとする頃。里親の家で育った龍二は大学受験勉強中。施設を出てすぐ働きに出た健一は、今での弟の龍二を愛している。弟の欲しがったフルートを少ない給料からプレゼントしてあげるが、事故にあって亡くなってしまった。健一の人生の全ては龍二だった。
少年映画評価 | 7点 |
作品総合評価 | 7点 |
少年の出番 | 85%(実質主役) |
お薦めポイント | 弟に献身する兄の切なさ |
映画情報など | 2010年公開/DVD発売中 |
2010年2月13日、シネ・リーブル梅田(大阪)にて鑑賞。全くノーマークの映画で、作品自体の存在を知ったのが10日ほど前のこと。大阪での公開はシネ・リーブル梅田単館のみ。この映画館の窓口で前売券を買い、記念品も貰っており、楽しみにしておりました。
公開初日の朝1番の9:15からの回を見ようと、気合を入れて早起きをして、8:45には到着して整理番号は10番でした。(何回も書きましたが、この映画館は最前列でないと、前の人の頭でスクリーンが遮られるというお粗末な劇場ですので。この日もガラガラでしたが、最前列だけは満員。)
ある地方の児童養護施設に、健一(小川光樹君)と龍二(西須隼太君)の幼ない兄弟がいた。両親がいなくなり弟と二人だけになった健一は、幼いながら弟を必死で守ろうとする。しかし弟だけは里親にもらわれていった。
時は流れて二人が青年にさしかかろうとする頃。里親の家で育った龍二は大学受験勉強中。施設を出てすぐ働きに出た健一は、今での弟の龍二を愛している。弟の欲しがったフルートを少ない給料からプレゼントしてあげるが、事故にあって亡くなってしまった。健一の人生の全ては龍二だった。
さて映画ですが、久し振りに泣きました。映画の出来自体は、教育テレビの道徳ドラマ風の、不自然な箇所もたくさんあり、レベルの高い作品とは決していえませんが、幼い兄弟の健気さは反則ものです。本当に泣かされてしまいました。
歌手の布施明さんの童話が原作だそうです。童話と言っても、少し前に流行った「一杯のかけそば」のような、説教臭い、胡散臭い感じのものかな、と警戒していたのですが、素直に話に入ることが出来ました。
この物語の兄ちゃんは、そんな人間です。本当に幼い子供の頃から、父を思い、祖父を思い、たった一人の肉親になった弟を思い、弟のために生き、そして事故に遭い、若くして天国に召されてしまう。
こんな人間が、現在の世の中にいるでしょうか。「人のことを言う前に、お前が幸せになれよ!」と憤る人もいるかもしれません。でもこんな現代だからこそ、この兄ちゃんのような生き方を知って欲しい。そんな気がします。 その他、この映画には悪人は一人も登場せず、いじめもなく、素晴らしい人ばかりです。(まあ童話ですし)
幼い兄弟を演じたのは、小川光樹君と西須隼太君。風貌は戦後の貧しい地方の子供そのもの(失礼な言い方をすれば、決して美形ではありません)。でもこの2人が素晴らしいんです。特に弟の西須君、このオカッパのような髪型から、最初にチラシの写真を見た時は女の子とばかり思っていました。
映画の中でも「兄ちゃん、兄ちゃん」と切ない声で兄にしがみつく。この子はまるで「節子」じゃないか(名作「火垂るの墓」で死んでしまう妹)と思えて仕方がありません。でもそれだけに涙を誘います。(できれば標準語でなく、新潟の方言を使って欲しかったのですが。)
成人した兄弟は、河合龍之介さんと浅利陽介さん。ちょっと子役に比べてイケメンですが、2人とも嫌味がなく爽やかな好青年。特に浅利さんは、子役上がりだそうですが、素晴らしい俳優ですね。平成というようりも昭和時代の青年スターのような爽やかさに好感が持てます。その他脇役では、生稲晃子さん、西田敏行さんが印象に残ります。
最後のエンドロールも必見。本番で入れておいた伏線を、このエンドロールの短い時間にうまく処理しているのは見ものですよ。特に、自分を抑えていた兄ちゃんが、唯一、心を許した(憧れた)恋人のエピソードが涙を誘います。少し説教臭い面もありますが、本年の必見の作品だと思いますよ。