MY HOUSE (2012年)

少年映画評価 5点
作品総合評価 5点
少年の出番 70%(キーマンですが)
お薦めポイント 病んだ家庭の少年の心をモノクロで演出。
映画情報など 2012年公開/DVD発売中
(写真は、中学生役の村田勘君)


2012年6月3日、梅田ブルク7(大阪)にて。1ヶ月ぶりの映画館。今年は映画レビューのペースが非常に遅くなってしまいました。4月から新しい職場での勤務のため、精神的に余裕がないせいもありますが、やっぱり見たい映画(少年映画)がない事が最大の理由です。

この作品もノーマークだったのですが、先に鑑賞されたノースエンド先生のご推薦もあり、重くなった腰を上げて見て来ました。非常に後味の悪い作品なのですが、映画を見た!という満足感いっぱいで帰ってきました。いや映画って本当にいいものですねえ。(故水野晴男さん風に。と言っても判る方は少ないかも)

■ストーリー

名古屋の郊外の公園で暮すホームレス達(いとうたかおさん他)。まるでモンゴル遊牧民の移動家屋ゲルのように、板やブルーシートで手際よく「家」を組み立てる。テレビやパソコンまである。しかし決して気楽ではない。朝から晩まで空缶や残飯をあさる。ホームレス同志の奪い合いも日常茶飯時。その代償で得られるのは自由だけ

一方、近くに住む裕福な家族。母は潔癖症。中学生のショータ(村田勘(さだ)君)は学校一の秀才。恵まれた家で生活しているが、そこに開放感はない。その抑圧された空気はやがて、一番弱い箇所を破壊する。それはショータに来てしまった。彼はその牙をホームレス達に向けていく。


■日本映画を堕落させたテレビ局製作映画の寵児、堤幸彦監督

さてこの映画の監督は堤幸彦氏。テレビ局とタイアップして、色々な娯楽大作を撮ってこられました。ただ私はあまり好きではなく、見たのは「20世紀少年」3作と「まぼろしの邪馬台国」くらい。

その堤監督が、今回は大きなスポンサーもなく、自主制作と思えるような映画を撮ったこと。裏に何か理由があるのかもしれませんが、この意欲は買いたいと思います。ただモノクロ映画にする意味がどれだけあったのか、これは疑問です。

■勧善懲悪でない中学生日記

さて中学生を演じた村田勘君。なかなか美少年ではあるのですが、どこかあか抜けない、田舎っぽい感じが付きまといます。詰襟の学生服に、斜め掛けした白い昭和風カバン(名古屋では今でもあのカバンを使っているのでしょうか)。まるでNHKの中学生日記の雰囲気です。

と思ったら、本当に中学生日記にも出演していたんですね。ホームレスを襲う中学生3人組も、そのまま中学生日記から抜けて来たような感じです。ただ中学生日記であれば、そんな事をした中学生は、それなりの償いを払うことになり、やがて目覚めて立ち直っていき、めでたし、めでたしとなります。

しかしこの映画ではそこまで描かれません。非常にストレスが残ります。被害者がホームレスなので警察も動かず、犯罪を犯した中学生達は何の罪も問われること無く生きていくのでしょうか。どうにも後味が悪いのです。

■おまけ。いとうたかお氏

この映画の主役はホームレスを演じた、いとうたかおさん。フォークシンガーとの事ですが、非常に存在感のある、いい演技をされていました。この方は是非、映画俳優として別の作品も見たいものです。

ビレッジプレスという小さな出版社が出している「雲遊天下」という音楽系とも何ともいえない雑誌があります。私は、ほぼ定期購読しており、ここで時々「いとうたかお」さんの名前は聞いた事があっただけに、今回の映画は興味深いものでした。

今度、ビジレッジプレス社から出ている「小さな唄に手を引かれ」(いとうたかお著)という本を買ってみることにします。

■もう一つおまけ。パンフレット

この映画はチラシを入手してなかった事もあり、800円も出してパンフレットを購入しましたが、薄っぺらのペラペラ。これはボッタクリですよ。勿論こんなマイナー作品ですので、部数が出ないので価格が高めに設定されているのは仕方ありませんが。





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