主人公は小学生の一輝(飯島幸大君)。病気で母を亡くし、父と二人で暮しているが、まだ母への思いをひきずっている。実は、母は脳死状態で、心臓などの臓器を提供したのだった。提供に同意した父の事も、心の底では許せない気持ちが残っている。
日本では、臓器提供者(ドナー)の家族と、臓器受領者(レシピエント)間で個人情報のやり取りはない。しかし、仲介者を通じて文通は出来る。一輝は、母の心臓を提供された女性と文通を始めた。
手紙の中で、女性が養蜂を始めた事を知り、一輝は驚いた。母親も養蜂家だったからだ。母の心臓が生きているのではないだろうか?いても立ってもいられなくなった一輝は、女性を探し出す事を決意。養蜂家の電話番号を調べ、片っ端から電話をかけたり、訪ねて行ったり。当然、父は反対する。父に叱られた一輝は、家を飛び出した。
実は身近なところに、その女性(谷口美月さん)はいたのだ。彼女は、一輝がドナーの息子だと気づいたが、何も言わない。ただ半径3キロの世界で一心に働く蜜蜂の話をするだけ。一輝も判った。蜜蜂のことも。母親の思いも。心臓提供を受けた女性の思いも。そして父の思いも。
このndjc2012は、全て1本30分で作られています。30分というのは、かなり難しい時間ですね。これをうまく使えるかが、監督の腕の見せどころでしょう。本作品は、まあまあ、というところでしょうか。脳死と臓器移植という重いテーマを背景にしていますが、それを説明するようなセリフは、思い切ってカット。
その点は良かったと思います。蜜蜂の「半径3キロの世界」というテーマが、今一つ、すんなりとは判りません。なので、やや感動が薄い感じが残念です。ただ、本作品を救ったのが、主役の飯島幸大君。監督へのインタビュー記事を見ましたが、飯島君の演技をかなり気に入っている様子です。
寒い季節、撮影は短期間で行われたのでしょう。服装はニット帽にマフラー、青いジャケットだけ。もっと他の衣装も見たかったのですが、こればかりは予算上も厳しかったのでしょうね。ややポッチャリで、幼い感じかなと思いましたが、眼光は鋭く、声もやや低い。あの映画「狼少女」の時の鈴木達也君に、そっくりでした。
さて、映画で気になったシーン。一輝少年が、母の心臓を移植された女性を探しまわるシーン。電話帳から番号をリストアップし、片っ端からかけていく。住所をチェックして、大きな地図にマークしていく。