マザーレイク (2016年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 90%(完全に主役ですが、映画広報では無視)
お薦めポイント 琵琶湖の美しい風景と少年少女
映画情報など 2016年公開/DVD等未発売
(写真は実質主役の福家悠君)


滋賀県の地方活性化のために製作された作品がある事を知ったのは、実は公開1ヶ月前くらい。ネットで予告編を見て少しだけ期待していました。監督は「千年火」や「グッドラック〜恋結びの里〜」など少年映画の得意な瀬木直貴さんです。

2016年6月4日の滋賀、京都先行公開の初日、京都駅前にあるTジョイ京都の9:30の回をネットでみると結構空席があり、思わず座席予約。この回は舞台挨拶があり、2000円と高い値段でしたが、奮発しました。

琵琶湖の美しい夕焼けの中に佇む少年
■ストーリー

映画の冒頭は2036年。世界的な写真家である藤居亮介(内田朝陽さん)が個展を開催。そこには1枚だけ亡き母が撮影した琵琶湖の写真があった。ここから、20年前の回想が始まる。

小学5年生の夏休み。亮介(福家悠君)は親友の賢人(松田峻佑君)と二人で、夏休みの自由研究に、琵琶湖に浮かぶ沖島のことを調べる事にした。沖島には賢人の親戚の少女、咲(田中咲彩さん)がおり、二人の研究を手伝ってくれるのだが、男勝りの性格で、亮介たちは苦手だった。

3人は沖島近くの湖面に巨大な生物を発見、たまたま取材でいたTV局のクルーに伝えたところから、幻の恐竜「ビワッシー」として有名に。しかしその後ビワッシーは現れず、騒動も下火に。しかし亮介たちはあきらめず、調べているうちに、亡き母の写真とメモ帳から、母もビワッシーを見ていた事が判った。

有名写真家だった母に対する愛情と尊敬に比べると、しがない下っ端カメラマンの父(別所哲也さん)が、亮介には情けなくて仕方がなかった。父子の関係は、ビワッシーは本当にいるのか。

■映画自体はいいのですが、大人の事情が見え隠れ。

映画自体の感想に入る前に、(本当はこんな事書きたくないのですが)苦言を少しだけ。ローカル映画製作の動機は「映画が先か、地域活性が先か」と考えれば、大半は地域活性の手段として作られたと思います。それ自身は別に批判も何もありません。どんな理由であれ少年映画が作られる事は有難いことだと思います。

でも本作品ほど、地域活性の事ばかりが見えすぎて、映画の主役を演じた子役たちの事がないがしろにされている作品は少ないのでは。ローカル映画とはいえ、有名俳優、人気俳優をキャスティングしないと見て貰えないとの思いがあるのでしょう。本作品でも人気俳優さんが目白押し。

でも人気俳優だけで全部撮影する(俳優を長期間拘束する)製作費は無いので、せいぜい1日程度の撮影で名前だけお借りし、ドラマの大半は子役で。

その子役も有名事務所だとギャラが高いので、オーディションで素人の子供を発掘。これも、どこのローカル作品でも同じだと思いますが、演じた子役さんにはそれなりのRespectがあるんですよ。でも本作品はそれがありません。そう感じた理由は以下で述べます。

■見事でした、3人の子役さん。

苦言は置いといて、本作品に出演した、福家悠君、松田峻佑君、田中咲彩さんの3人は見事な演技で、レベルの高さを感じました。ローカル作品で、特に地元の子供が出演する場合、セリフ棒読みレベルの子供ばかりで、がっかりする事もあるのですが、この3人は全国レベルの子役さんと言って過言はありません。

堂々主役の福家悠君。ガイドブックにも公式サイトにも、プロフィールや年齢すら載っていないのですが、ネットで検索するとテアトルアカデミーという大手事務所の所属ではと思いますので、ひょっとすると東京の子かもしれません。

見る角度によって美少年だったり、ちょっとブサ可愛系だったり、表情が豊かなのが印象に残ります。ただ彼の演じた「少年像」に共感が持てない点が。それは、お父さんに対して暴言を吐くこと。完全に父をなめているのです。これに対して、星一徹のごとく息子を張り倒して欲しいのですが、イライラが残りました。

しかし残念ながら(残念という表現はなんですけれど)本作品で一番印象に残ったのは、少女俳優の田中咲彩さん。超美少女には違いないのですが、美少年といっていいほどボーイッシュなのです。彼女が少年だったら、と思わざるを得ないのです。

いずれにせよ、この田中咲彩さん、ひょっとしたら日本を代表するような女優さんになる可能性を秘めています。ただ懸念されるのは、オーディションで発掘された新人で、本作品のプロデューサーさんの個人事務所に所属している点。どこか大手事務所へ移籍できればいいのですけれど。

夏休み。亮介と賢人は琵琶湖の沖島へ
龍を見たのは、あの辺り?
(中央はボーイッシュな少女)

■舞台挨拶とガイドブックについて。

6月4日の上映終了後、楽しみしていた舞台挨拶。ローカル作品ではSNSに宣伝を拡散して貰うため、写真撮影可能のケースも多いのですが、撮影・録音は一切禁止とのアナウンス。これは仕方ありません。なにせ、鶴田真由さん、内田朝陽さん、別所哲也さん、津田寛治さんなど名だたる俳優さんがずらりと。

しかし子役さんは、松田峻佑君、田中咲彩さんの二人だけ。主役の福家悠君がいないのにはがっかり。後で公式サイトを見ると、京都会場には登壇しない事が明記。午後からの別会場では登壇されたようです。

さて舞台挨拶ですが、最初に出演者から一言ずつ挨拶との事ですが、二人の子役さんはスルーですよスルー。松田峻佑君なんか(きっとご両親が一世一代の晴舞台のために準備したのでしょう)かなり気合の入ったお洒落なスーツ姿でしたのに。

その後、この映画の出演者でプロデューサーという方が場を仕切ります。宴会の場でやるような身内話ばかりで、子役の事なんか眼中になし。最後の最後、ご自分が発掘した田中咲彩さんを真ん中へ出して一言だけ挨拶、次に松田峻佑君の挨拶。これで終了です。

なんか物足りず、売店で「マザーレイク」ガイドブック880円を購入。ローカル映画ではパンフレットすら製作されない場合も多い中、結構分厚いブックでしたので、楽しみにして帰宅し、読んでみて絶句。映画の内容は半分もなく、後は滋賀県内の飲食店の広告だけ。(ガイドブック持参すると500円の特別メニュー?)

内容もひどい。主役3人の子役さんは、豆粒ほどの小さな写真と名前だけ。例えば、高橋メアリージュンさん、僅か2,3分も登場しないのに、見開きグラビアで紹介されています。彼女はこの映画で何の仕事をしたの?久しぶりに、こんなひどい映画プロモーションを見ました。

子役さんが80%以上の映画なのに、5%くらいにしか扱われていません。昨年公開された福岡県の「なつやすみの巨匠」なんかと大違いです。滋賀県、近江商人の恥ではありませんか、とさえ思うのですが。すみません、苦言ばかりで。なお、プロモーションに文句はつけましたが、映画自体は素晴らしいものですので、全国公開の際には是非ともご覧下さい。





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