故・北杜夫氏の小説が原作。実は私は北杜夫氏の小説のファンでした。中学生の時に最初に自分で買った文庫本が「どくとるマンボウ航海記」。文庫本なんて読むのは大人だけ。私はこれを読破して初めて大人になったと思ったのでした。
以来、どくとるマンボウシリーズやエッセイは殆ど読みました。でも小説は今ひとつ自分には合いませんでしたけれど。その北杜夫氏の原作で、少年とおじさんの軽妙な物語と聞けば、見ない訳にはいきません。
小学4年生の雪男(大西利空君)の家には、父の弟である叔父さん(松田龍平さん)が居候していた。叔父さんは大学で哲学を教えているが、週1回だけの非常勤教員なので超ビンボー、しかも怠け者なので、家族からバカにされている。
雪男も半分はバカにしているが、それでも叔父さんと一緒にいるのは好きだった(これは私の見解)。そんな叔父さんに見合いの話がきた。嫌がっていたおじさんだが、その相手の女性エリーを見て一目惚れ。でもエリーはハワイで暮らしているので、そう簡単には会えない。
そこから叔父さんが奮闘。ある会社のビールやコーラにあるシールを集めて送るとハワイ旅行に招待との事で、色んな手段(マンガのようなドタバタ)でシールを集め、数百枚ものハガキを送るが、そんなの当選する訳はありません。(奮闘努力のカイもなく。寅さんみたい)
しかし、雪男が宿題で(叔父さんの奇行やハチャメチャぶりを)書いた作文がコンクールで1等になり、その懸賞がハワイ旅行。雪男はおじさんと二人でハワイへ行き、見合い相手のエリーさんを訪ねます。さてさて二人は結ばれるでしょうか。それは映画を見てのお楽しみと。
北杜夫氏のエッセイや小説のユーモアは、はっきり言って現代では理解されないと思います。退屈で、間延びして、古い昭和の世界にしか思えないでしょう。この時代のジャンクアイテムはせいぜい少年マンガ。ゲームもスマホもパソコンも無い時代でした。
でも、その世界を見事に再現しているのです。これは松田龍平さんの演技力。多くの方々はセリフ棒読みのように思うかもしれませんが、このセリフの間が絶妙で、ああこれは北杜夫氏の世界だと思い、うれしくなりました。
この叔父さん。今でいうパラサイト。下流人間とか言われて悲惨な扱いですが、北杜夫氏の頃は大らか。「なんとかなるさ」で何とかなってきたんですものね。ただ北杜夫氏自身は、どん底貧乏生活など経験せず、インテリですから、どこか冷めた部分があるのは仕方ありません。
さて日本映画の場合、小説では少年が主人公でも、映画化すると端役同然の扱いになる事が多いのですが、本作品は少年の目から描いているので、これは大満足です。まして大西利空くんは非常に可愛いし。
まだ10歳くらいですので、可愛いだけでもスクリーンに映えますが、これから本格少年俳優に脱皮できるかどうか。頑張って欲しいものです。そういえば昨年の「at Homeアットホーム」の池田優斗君も可愛い盛りでしたが、その後はどうしているのでしょうね。