やがて...春 (1986年)
少年映画評価 |
5点 |
作品総合評価 |
4点(辛口で申し訳ありません) |
少年の出番 |
100%(主役ですが...) |
お薦めポイント |
いじめに立ち向かう少年。しかし... |
映画情報など |
1986年公開。VHSビデオ絶版 (写真は庄川正信君) |
本作品は『風のあるぺじお』と同じく中山映画(監督が中山節夫氏)が製作し、にっかつ児童映画が配給した作品。当時のにっかつ児童映画は自社で映画を製作する資金が苦しくなり、他社作品を配給だけする事も多かったそうです。
本作品はテレビでも何回か放送されました。ただどうも(私には)後味が悪い作品で、3部ではなく5部に掲載しようかと迷いました。
クラスの男子にいじめを受けるユウキ。この時は隣のクラスの先生が助けてくれた。
(中央左の背の高い少年がイジメのボス。阪神の帽子の子はユウキを慕う低学年の子)
■ストーリー
小学生のユウキ(庄川正信)は母子家庭。ハムスターを育てており、自然を愛する優しい少年だ。ただ運動が苦手で服装や時間に無頓着なため学校ではいじめられていた。しかしユウキはマイペース。またもう1人、山形から転校してきた女子が東北弁をネタに女子からいじめられている。
優等生の少女アケミが先生にいじめ問題を提起するが不問に付されてアケミは孤立。ユウキはいじめのボスに立ち向かうが突き倒されて転倒、さらに大勢にのしかかられた。ユウキは意識不明の重体。命はとりとめたものの身体には障害が残った。懸命なリハビリの末に学校に登校してきた...
■生徒がそう言ってます...人間としての能力のない教師たち
とにかく最初からイジメのオンパレード。主人公のユウキはクラスのボス格に目をつけられ、事あるごとに暴力をふるわれて身体中あざだらけ。仕事で忙しい母親がそれみつけて教師に連絡するも「私からユウキ君に聞きましたが、何でもないと言っています」
一方、山形から転校してきた女子児童。国語の朗読で山形訛りが抜けないのをキッカケに女子連中から徹底的な嫌がらせ。この女子連中の意地の悪さは男子の暴力よりも見ていて嫌な気分になります。児童映画をみてこんな嫌な思いをさせられるなんて...
しかし正しい感覚(常識)を持つアケミのような少女がいてくれる事が救い。しかしそのアケミの訴えを笑顔で不問に付してしまう教師。星野知子さん演じる教師の能力に大きな疑問。生徒が話す言葉の裏にあるもの、必死で訴えている表情、それを読めないのでしょうか。いや読めてるはず。面倒が嫌なのでしょう。
しかし山形の女子児童が耐えきれず学校を去り、ユウキが重体になるに及び、ようやく私の力不足でしたと涙をみせても遅いのです。本当に遅いのです。映画ではこの女性教師を決して悪くは描いていません。私からみると悪いのです。
■学校の中は治外法権ですか?
ユウキが意識不明の重体になったのは決して偶発的な事故ではありません。いじめボスの悪意に基づく暴行傷害です。完全な犯罪なのです。それなのにコイツは教師から事情聴取を受けた以外は何のお咎めもなし。映画のラストでユウキが再登校してくる時には手を貸してやって涙を流します。まるで美談みたいに。
警察を介入させず全て学校内で処理するのでしょうか。本業の教育能力すら疑問がつく教師たちに、警察や司法の仕事までさせてよいのでしょうか。ユウキの母親は暴行児童(の保護者)に対して刑事+民事告訴すべきなのです。警察の事は警察に任せる。教師にとっても余計な負担が解消されていいことではないでしょうか。(学校の名誉とかそんなものは別にして)
ああすみません。暴力やいじめの映画をみるとつい気分が荒んで暴論になってしまいました。だから暴力映画はいやなんです。肝心の少年俳優についてのレビューが全然できませんでした。以下の写真のキャプションを参照して下さい。
ユウキはハムスターを育てる優しい少年だ。
(ちょっとマイペースなところがイジメられる原因か)
アケミ、ユウキ、アケミの弟は仲がよかった。
(右の弟はユウキを慕っている。上の阪神キャップの子)
ユウキともう1人のいじめられっ子。体育は苦手。
(右のいじめられっ子役は和田求由君)
イジメのボス(右)に向かっていくユウキ。
(イジメられても卑屈にならない。でもこれが悲劇に...)
廊下で待伏せてユウキに暴力をふるう。
(この当時のボスキャラは冬でも半ズボンが勲章でした)
ボスに突き飛ばされ転倒、後頭部を強打!
さらにユウキの上に悪ガキ全員がのしかかった。
お前もこの上に乗れ!といわれて...
本当は嫌だったけど、しぶしぶ...
救急車で運ばれたユウキは意識不明の重体。
(救急車と同時に警察にも通報すべき。犯罪ですから)
意識の戻らないユウキ。お見舞いに来た弟君。
(子役名は判りませんが、おめめクリクリで可愛い)
弟君の持ってきたハムスターを手にして...
ユウキが薄っすらと目を開けた!やった意識が戻った!
※後記
暴力や恨みの連鎖を断ち切るには許す事(寛容)が大切な事は判ります。でもその前提として加害者が罪を認識して覚醒する事も不可欠。いじめという暴力に加担した人間はそれが出来ていません。学校時代にイジメで自殺した人間が悪霊となって次々と同級生に復讐するというようなホラー小説やドラマが多く作られるのも仕方ありません。