遥かなる山の呼び声 (1980年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 7点
少年の出番 70%(準主役でした)
お薦めポイント 西部劇『シェーン』の日本版。故高倉健さんが全て。
映画情報など BD/DVD発売中。
(写真は吉岡秀隆君。)


本作のタイトルは西部劇映画『シェーン』(1953年)の主題曲の邦題と同じ。日本で特に人気の高い『シェーン』へのオマージュ作品です。本作も山田洋次監督の名作の一つ。でも例によってちょっとしたこだわりもあって見ていませんでした。見たのは今年(2021年)初めて。WOWOWで見ました。

山田監督の前作『幸せの黄色いハンカチ』は国内映画賞を総ナメにした名作。でも天邪鬼な私はどうも好きになれませんでした。本作も同じ出演者が中心ですし、子役の吉岡秀隆君も『寅さん』程度のチョイ役だろうと思っていました。ところが吉岡君は出ずっぱり。改めて名子役なんだと再認識しました。

男は狭い納屋を借りていた。少年はその納屋に入り浸る。
(男が地元のチンピラをやっつけた。その様子を面白おかしく再現する少年)

北海道の中標津町。小学生のタケシ(吉岡秀隆)は父を亡くし、母(倍賞千恵子)が一人で酪農業を営んでいる。雪が溶けた春の大雨の夜、一人の男(高倉健)に宿を請われて納屋を貸した。翌日未明に1頭の牛が出産。男は手際良く手伝い、そして去っていった。約1ヶ月後。また男がやってきた。ここで雇ってくれないかと。母は迷った末に雇う事にした。しかし男に対する警戒は怠らない。

男は寡黙で素晴らしい働きぶりだった。タケシは男に惹かれていく。男は母に言い寄る地元のチンピラ3兄弟をやっつけたり、タケシに乗馬を教えたり。そして地元の競馬で優勝。母は次第に男にある感情を抱き始める。しかし男は出て行くと。実は殺人をおかして逃亡中なのだと。折りしも警察がやってきて男は逮捕された。そして裁判。男は網走刑務所に送られる。その列車の中に…

■『シェーン』+『無法松の一生』

未亡人と息子が慕った男は逃亡中の殺人犯だった。本当にシンプルなストーリー。それを感動的な作品に仕上げたのは山田洋次監督の手腕。そして高倉健さんと倍賞千恵子さんの2人。もう一つは北海道の雄大な景色。大阪育ちの私は本当に憧れます。(北海道は北海道で厳しい面もあるとは思いますが)

そして幼い少年役の吉岡秀隆君。もうこの当時から『北の国から』の純そのもの。大人の役者に対して臆する事一切なし。あの偉大な健さんにだって。地元のワル3兄弟をやっつけた時「母さんには絶対言うなよ!」その夜「言っちゃった」シャアシャアと言ってのける。すごく自然に。

このワル3兄弟。やられてしまった後は勝手に男(健さん)の弟分といって世話を焼いてくれます。ラストシーン。護送中の列車になぜか3兄弟の長男(ハナ肇)と母(倍賞千恵子)がいます。男に直接話かける事ができないので、世間話のフリをして「息子と二人で待ってる」と男に伝えます。
(どうやって護送列車の日時を知ったのか知りませんけれど)

これだけの演技をすれば、そりゃ山田洋次監督や倉本聰さんの秘蔵っ子になりますよ。今は少年俳優も本当に増えました。でもこうやって成長させてくれる監督や脚本家は減ってしまったのでは。

倍賞さんと吉岡君の母子役。寅さんでも...
(寅さんの渥美清さんも獣医役で少しだけ出演)
大雨の日、納屋を借りに来た男。
危ない男だったらどうしよう...


1ヶ月後。また男がやってきた。
タケシも母も最初は警戒していたが...
男と地元のワル3兄弟の対決をそっとみる。
相手は3人だし。心配そうなタケシ...


母が入院。一人では怖くて眠れないタケシ。
おじさん、一緒に寝させてよ...
乗馬を教えて貰うタケシ。この家で飼っている馬
男はこの馬で地元の草競馬で優勝する。


男は警察に逮捕されて家を出ていった。それを追いかけるタケシ...
(シェーン!カムバーック!のシーンです。でも日本のタケシは涙を浮かべるだけ...)


※後記
ここで書こうか本当に迷ったのですが『幸せの黄色いハンカチ』に出演されていたTさん(本業は歌手)がどうも苦手でした。なので本作もなかなか鑑賞する気になれませんでした。でも映画は見ないと判りません。これは反省です。




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