光る川 (2024年)

お薦めポイント 座敷童のような男の子が歩いて行く。この絵のようなシーンの美しさ。
少年の出番 準主役。しかし終盤は堂々の主役。
映画情報など 2025年公開。ディスク等の販売は未定。
写真は有山実俊君。


予告編の静かな美しさをみて、これは映画館で見なければと思い、公開終了間際に神戸元町のミニシアターで鑑賞しました。ロミオとジュリエットのような悲恋物語がメインですか、時を経て恋人たちは幼い少年に救われます。これは是非多くの方々に見て欲しい作品です。

少年(ユウチャ)は、ずっと昔に女性(お葉)が身を投げた瀬にやってきた。当時の服装で。

1958年、岐阜県の山奥の村に住む小学生のユウチャ(有山実俊)。ある日、行商の紙芝居屋がやって来て、村に伝わる伝説の紙芝居を始めた。(ここから昔の話に場面が変わっていく)

美しい女性オヨウ(華村あすか)は父と弟シロウ(有山実俊/二役)の3人暮し。ある日、山の奥で木地師の青年(葵揚)と出会った。二人は激しい恋に落ちたが、青年たちは木を切って美しいお椀を削り出す技能者集団。定住せず移動を続ける木地師と里の女性との結婚は許されない。失意のオヨウは滝の瀬に飛び込んだ。

また1958年。ユウチャは川で流れてきたお椀を拾った。祖母はその椀を拾ったものは山奥の瀬まで返しにいかないと家族が死ぬと言われ、台風の中を一人で返しに行く。そこで時を超えてオヨウと青年と出会い、二人の恋の成就をみてユウチャは戻ってきた。


ベースである本作の舞台は1958年。高度成長の真っ只中で、ユウチャの父は持っている山の木(照葉樹)を全て切って売ろうとしていた。切った後にはスギなど商品価値の高い木を植林する。しかし祖母は反対だった。山の奥には悲恋の伝説やたたり?もあると言う。

その後の展開は上のストーリーの中に全部書いてしまいました。木地師といわれる集団は初めて知りました。ロクロを使って木を削り、きれいな円形のお椀を作るそうです。さらにそのお椀に漆などを塗って高級漆器にする技能者集団も別にいたとの事。

オヨウ(お葉)は美しい女性で父親からは早く結婚しろと催促の嵐。しかし里にはロクな若い男がいない。そんな時に出会ったのが木地師の青年。無口だが草笛が上手くて技能で鍛えられた筋肉。そりゃ一目惚れですがなぁ...しかし里の父親も、木地師集団の親方も二人の結婚を許しません。

結局オヨウは自殺。ユウチャの前世はきっとオヨウの弟。ユウチャが台風の夜にお椀を一人で返しに行くのですが、お椀に水を入れ、一滴たりとこぼしてはいけない。こりゃ無理でしょう。10mも歩けません。それが山あり洞窟ありの長い道を歩ききるのです。オヨウの霊に守られていいたのでしょう。きっと。

とにかくユウチャとシロウの二役を演じた有山実俊君。彼の不思議な魅力に尽きる作品です。おかっぱのようなヘアスタイルは座敷童そのもの。無事に使命を果たして戻ってきた時、父親は叱りながらも抱きしめますが、その時の笑った顔は神秘性のかけらも無いそこら辺のガキお子様。でも黙っていると神の子。


紙芝居の行商が来た。水飴を買うと紙芝居が見れる。
(1958年の設定。子ども達の服装はそれなり)
1958年の主人公は少年ユウチャ。
おかっぱ?のような髪型が印象的。


オヨウの生きていた時代。明治以前かも。
左は弟のシロウ。有山実俊君が二役。
また1958年。川から何か流れてくる。
拾ってみるとお椀だった。これは大変なものを拾った!


台風の夜、ユウチャはお椀を返しに行く。祖母が支度をしてくれた。
時間を遡り、オヨウが身を投げた時間へ。
ユウチャの行動は二人の恋愛を復活、成就させた。もう大丈夫...


※後記
ユウチャには病気の母がいます。しかしユウチャがお椀を返して戻ってくると母の病気が快方へ。また父は山の木を全部切ってしまう計画を止めようと言い出しました。自然に優しい照葉樹林を残し、商品価値は高いけれど花粉症の原因になるスギ林にする事もなくなりました。これは御伽話ですけれど、本作はこれでいいのだと思います。

もう一つ。ユウチャが片手に蝋燭、もう一方の手にお椀を持ち、洞窟の中を水につかりながら歩いて行くシーン。ソ連の巨匠タルコフスキー監督の『ノスタルジア』のあるシーンを思い出してしまいました。何か精神的で象徴的なシーンです。





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