原作は、大御所の楳図かずお氏のホラー漫画作品の中でも有名な作品らしいです。低予算のホラー映画が粗製乱造される中、松竹や東芝エンターテイメントなど大手企業が製作委員会に名を連ねている気合の入った作品との事でしたが。
主人公は若い娘イズミ(渋谷飛鳥さん)。弟のソウ(小林翼君)は霊的な能力を持つ不思議な子供だった。ある日「お姉ちゃん、僕はもうすぐ死ぬ。でも助けてくれるのはお姉ちゃんだ」と訳の判らない事を言い出した。そして誰かに喉を切られたように血を流して意識不明になり、入院してしまった。
戸惑うイズミ。しかし彼女は、拾った赤い携帯電話にかかってきたソウの声に導かれ、ある町へと向かう。その町では少女や若い女性が次々と変死する事件が起きていた。イズミはケーキ屋の娘(前田愛さん)と知り合い、2人で、犯人ではと疑う男が住む屋敷へと向かう。
その屋敷には一人の幼い少女モモ(清水萌々子さん)と父親(田口トモロヲさん)が暮らしているが、この父親こそが猟奇的な殺人者だった。イズミ達2人はあっけなく捕まり、惨殺されてしまった!!
しかし、ここで意識不明になっていた弟のソウが、幽体(みたいなもの)になり、殺されたイズミの体内を突き破って出現した。そして神の右手でイズミを蘇らせ、悪魔の左手で、殺人鬼を抹殺したのだった。
さて、この映画のクレジットのトップは渋谷飛鳥さん、2番目が小林翼君なので期待していました。小林君は少年俳優と言うには少し幼すぎる気もしますが、NHK教育TV「にほんごであそぼ」のレギュラーとして才能と実績は十分であり、期待の子役さんです。
ところが残念な事に、この物語のキーとなる重要な役ではあるのですが、出番が非常に少ない。本作品は、他の日本のホラー映画と同じ、即ち可愛い女の子が大勢出てきて、キャーキャーと騒ぎまくる系のものでした。監督さんも女の子を撮るのが好きなんでしょう。(これは仕方ないことです)
この映画で最も印象に残るのは、モモを演じた清水萌々子さんです。あの名作「誰も知らない」で夭折する末娘の演技は涙なしには見れない。この作品では少し成長していますが、あの切ない眼差しは健在、いやもっと磨きがかかっていました。はっきり言ってこの映画では、小林君よりも清水萌々子さんの方がずっと貢献していると言ってよいでしょう。
その他、田口トモロヲさんの迫真的な猟奇男も大したもんです。原作者の楳図先生もちょっとだけ顔を出していたのはご愛嬌。結論として、本作品は少年映画ではなく、正真正銘の女の子映画でした。