トモキ(長谷川朝晴さん)は、刑法上は少年だったミツオ(忍成修吾さん)に、妻と幼い娘を殺害された。そしてミツオへの復讐だけが生き甲斐になってしまった。一方、少女の頃に家族を惨殺された女性サトは、自分とは関係ないトモキの復讐に異様な関心を示す。トモキに接触し、早くミツオを殺せとけしかける。
そこへ強盗を射殺した経験のある警察官とその息子(栗原堅一君)など、複数のエピソードを織り交ぜながら、ドロドロの物語が繰り広げられる。
作品総合評価 | 7点 |
少年の出番 | 20%(全9章中の3つの章) |
寸評 | 4時間38分の大作。飽きません。 【少年映画でない理由】主題,視点が女性である事 |
映画情報など | 2010年公開/DVD発売済(写真は栗原堅一君) |
2010年12月30日、第七藝術劇場(大阪)にて鑑賞。2010年最後の(映画館での)映画鑑賞です。寒い年末。こんな時は暖房の効いた映画館に限ります。ということで、以前から気になっていた、何と4時間38分もの、思いっきり長い映画の鑑賞にチャレンジ。
シネコンで上映しているメジャー系邦画、面白いけれど、薄っぺらい作品ばかり。それはそれでいいんでしょうけれど、年末くらいは骨のある映画が見たい。そのためには、テレビ局に占拠されたメジャー作品ではなく、独立系というか、素人に近い人たちの作品に求めるしかない訳です。
私だけでなく、そう考えた人も多かったのでしょうか。大阪、十三の第七藝術劇場には思ったより大勢の方がおられました。数人くらいと予想していたのですけど。実際に起きた少年による母子惨殺事件(橋下知事の騒動もありましたね。)をモチーフにして、人間の死とは、復讐とは何だろうか、これを9話のエピソードにまとめた長編です。
トモキ(長谷川朝晴さん)は、刑法上は少年だったミツオ(忍成修吾さん)に、妻と幼い娘を殺害された。そしてミツオへの復讐だけが生き甲斐になってしまった。一方、少女の頃に家族を惨殺された女性サトは、自分とは関係ないトモキの復讐に異様な関心を示す。トモキに接触し、早くミツオを殺せとけしかける。
そこへ強盗を射殺した経験のある警察官とその息子(栗原堅一君)など、複数のエピソードを織り交ぜながら、ドロドロの物語が繰り広げられる。
核心ともいうべきテーマです。しかし私の結論では、この映画では、この問題に踏み込めませんでした。逃げてしまっています。明確に実在の事件と対比できますので、これは仕方なかったのでしょう。厳罰(死刑)派と、死刑廃止派のどちらかに組するのは避けているようです。そして、これを避けたことで、この映画のパワーが弱くなってしまったように思います。
2.これは女性映画です。忍成修吾さん演じる犯罪者、長谷川朝晴さん演じる被害者の夫、この2人の男の血と汗のバトルが展開されますが、どうも主役ではないのです。お二人とも鬼気迫る、本当に素晴らしい演技でした。一世一代といってもいいかもしれません。でも男優2人の熱演も、16歳の少女・寉岡萌希さんの手のひらの上で踊っているのに過ぎないのです。これは寉岡萌希さんの映画でした。
3.女に振りまわされる男たち両親と姉を惨殺され、ただ1人生き残った幼女。それが寉岡萌希さん演じる少女でした。彼女が復讐すべき犯人は自殺しており、誰を恨んで生きていけばいいのだろうか。それが妄念となって、この映画の悲劇が起っていくわけです。
ただ寉岡萌希さんの演技が迫真すればするほど、この主人公の少女への嫌悪感が沸いてきます。殺人犯と被害者の夫は、お互いに理解し合えるチャンスも生まれます。それをこの少女は許しません。私からみると、お前は何様なんだ、と怒鳴りたくなってくるくらいです。その他、主人公をいじめる女子小学生、女子高校生、わがままな女、いやらしい女性のオンパレードでした。
4.カメラワークが最悪(撮影担当者は反省を)この映画の最大の欠点。本当に酷い手振れ。おサルさんがカメラ持ってるの?とさえ思うような画面が、冒頭から延々と続きます。いつかは安定するだろう、そのうち画面が固定されるだろう、と思って我慢していました。
公式サイトのブログで、「ある上映で、前半終了後の休憩時間に4名の客が戻らなかった」との記載がありましたが、ひょっとしたら、映画の内容は面白かったのに、画面酔いで気分が悪くなって帰ってしまったのではないでしょうか。
映画の基本の基本はカメラだと思うのですけど。素人作品を集めたPIFFでも、映画を勉強している人たちだけあって、カメラワークは本当に安定していましたよ。もう少し基本に戻って欲しいですね。
5.少年俳優について最後に本題関係を少し。本作品には1人だけ少年俳優が登場します。昼はしがない交番のヒラ警察官。裏はアルバイトで復讐代行(殺人請負業)。まさに必殺仕事人そのもの。そんな警察官(村上淳さんが好演)が登場しますが、その1人息子役。幼稚園から中学生までを2人の子役が演じています。2人は実の兄弟との事。
注目すべきは、小学生から中学生を演じた栗原堅一君。最初に登場した4話では短髪でチビの小学生。この4話は一瞬、栗原君が主役のエピソードと思ったのですが、脇役でした。次に登場した6話では、やっぱり短髪の中学生。4話でも6話でも性格悪い少年で、カッパライをやって失敗し、ボコボコにされます。死んでしまったと思ったのですが。病室で父から貰ったクリスマスプレゼント。ちょっと心が温まりました。
そして8話。遂に父親が裏稼業で失敗してあっけなく殺害され、一人残った長髪中学生。最初は別の少年俳優に代ったのだと思っていました。だって全くの美少年でしたので(4話、6話では、お世辞にも可愛いとは言えなかった)。
ヘアスタイルだけで印象はこうも変るのですね。更に驚いたのが、映画公開時の舞台挨拶写真。忍成さんと変らない程の身長になっています。映画の撮影は1年半かかったとの事ですので、クランクイン時から舞台挨拶で、どれだけ成長したのでしょうか。恐るべしですね。
6.最後に4時間38分という長さに見合うかどうか、それは見る人の価値感しだいですが、私は見て満足しています。カメラワークとか、主題とか、色々納得できない点もありますが、それを補ってお釣りが来る作品だと思います。なんにせよパワーのある映画でした。