プリンセス トヨトミ (2011年)

作品総合評価 5点
少年の出番 30%(セーラー服が似合わない少年・・)
寸評 空堀、新世界、大阪の下町を堪能して下さい
【少年映画でない理由】出番が少なく、やや高齢
映画情報など 2011年公開。DVD発売中。


2011年の映画公開時、予告編をよく見ましたが、大阪が舞台で興味はそこそこあったのですが、いかんせんプリンセスですので、少年映画ではないと思い、スルーしました。たぶん「ボーイッシュ美少女」沢木ルカさんのための映画なんだろうと思っていました。

ところが、最近になって万城目学さんの原作小説を読み、意外にも少年が活躍することを知り、これは映画も見ないと、と思って中古DVDを購入して鑑賞。それが今回のレビューです。少年が活躍といっても、原作小説では「お前、世界で一番セーラー服が似合わんやっちゃなあ」と言われているくらい不細工少年との設定でしたけど。

■ストーリー

本作品は、ストーリー順に説明すると面倒なので、いきなりネタバレから説明します。大坂夏の陣で滅んだはずの豊臣家。実は子孫が生き残り、こっそり大坂で勢力を維持していた。そして明治維新のどさくさで、維新政府と秘密条約を結び、大阪国の独立を承認させたのだ。

それから百数十年、戦後も秘密条約は極秘のうちに維持され、大阪国は、政府から毎年5億円の補助金を貰っていた。そこへやってきたのが、会計検査院の3人組。彼らが本作品の主人公。秘密条約を知らない彼らは、5億円の使途を追求し、ついに大阪国と全面対立へ。

もう一方の主人公が、大阪空堀商店街のお好み焼き屋の息子、真田大輔(森永悠希君)。中学2年の彼は性同一性障害者。女の子になりた〜いのである。とうとうセーラー服で登校するが、ヤクザの息子に頭を刈られてしまう。

大輔の父 幸一(中井貴一さん)は、しがないお好み焼き屋の親父だが、大阪国の総理大臣でもあった。大阪国の使命は豊臣家の子孫を守ること。その子孫とは、大輔のクラスメイトで、これまた庶民少女の茶子(沢木ルカさん)

会計検査員の3人組(堤真一さん、他)との対決、ヤクザとの対決など、あとはドタバタの連続で、さて、大阪国はどうなりますやら。

■豊臣家の子孫は、なぜプリンセスなの?

大坂夏の陣。難攻不落の大坂城も、徳川の策略で無力化され、とうとう焼け落ちてしまい、当主の豊臣秀頼とその母・淀君は自刃します(大阪城天守閣下の、陽の当たらない場所にひっそりと、淀君自刃の地という札が立っています)。しかし秀頼には、幼い息子、豊臣国松がいました。

大坂城には「抜け穴」が何本もあったと言われています。京都で捕まった子供は影武者で、国松は逃げのびて、大坂の町で庶民に紛れて暮し、やがて豊臣家の復興を企てる、というのが原作のストーリー。代りに首を切られる子供というのも、考えれば悲惨。

ここで問題なのは、豊臣家の子孫として意味があるのは男の子なのです(男女差別ですけれで、男系社会なので仕方ありません。現在の天皇家も同じ)。なので、大阪国が代々守っていくのは、プリンス・トヨトミなんですよ。それでは小説として面白くないし、男女平等の世の中ですから、プリンセスにしたのかも。

それはおいといて、大阪国の総理大臣の名前は、真田幸一。「六文銭」の旗で有名な戦国武将、真田幸村の子孫という意味でしょうか。幸村は信濃国の出身ですが、大坂夏の陣で、最後まで奮戦して討死したことで、大阪の人々には人気があります。(えっ話がわからない?歴史の勉強をして下さいね)

豊臣家の幼い子孫は京都の川原で斬首された?
森永君が、少し男前に映ったカット

■セーラー服少年は、原作よりも活躍します
スカートめくり

さて原作では、ぽっちゃり小太りで、公然とブサイクと言われる大輔少年。この役を演じるのは、あまり嬉しくないと思うのですが、森永悠希さんは、本当によく頑張りました。原作の大輔は優しい少年ですが、行動力はゼロで、茶子に助けられてばかり。

しかし映画では、茶子よりも行動的で活躍します。ヤクザの事務所に殴り込みに行くのも、原作では茶子ですが、映画では大輔。原作の映画化で、少年役が少女役よりも活躍するのは珍しいこと。少年主人公の小説でも、映画化されると、その少年は空気のように扱われている作品が大半なのに。

でも、できれば、もうちょっとカッコいい少年役を演じたかったでしょうね。特にラストシーン。平和?が戻り、大輔はまたセーラー服で登校します。そこへ茶子がやってきてスカートをめくります。このシーンを見た人の99%は思ったでしょう。少年俳優ファンの私でさえも思いました。丸坊主少年ではなく、沢木ルカさんのが見たい!

■追伸 空堀商店街と会計検査院

ここで、本作品の舞台となった大阪・空堀商店街について。何の変哲も無い、至って普通の商店街。坂道になっており、少し前までは軒が傾いて、今にも崩れ落ちそうな古屋で、おばあちゃんが野菜を売っているような店が続いていました。

空堀との名の通り、昔は大阪城の堀の一部だったとのこと。そんなせいか、なんとなく大阪の地元テレビ番組などに取り上げられ、どことなく有名になってきました。私も以前からよく散歩したものです。近年は若者向けの店も増えてきました。とはいえ、お洒落と思って来ても、がっかりするだけですけれど。

この空堀商店街の中ほどに、原作者もお薦めのお好み焼き屋「冨紗屋」があります。故・中島らもさんのエッセイで有名になり、東京から大阪へ仕事に来た有名人が必ず?寄るという店です。でも、ここも至って普通のお好み焼き屋。ボリューム満点ですので、私もお薦めですよ。

もう一つのキーワードが会計検査院。私の前の職場では、国の補助金を貰った開発みたいな事をしており、何年かに1度、会計検査院の監査がありました。もう上を下への大騒ぎで、資料を用意したり大変でした。まさかそんな連中が映画の主役になるなんて。






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