ところで皆様、ヤコペッティってご存知ですか?イタリアの映画監督で、1970年代に「世界残酷物語」など、いわゆるグロに近い、実録・残酷もののドキュメンタリー映画を作ってヒットしました。私もいくつかを見た記憶がありますが、嫌な気分しか残りませんでした。
この日は、大阪市内へ出張があり、17:00には終了。そのまま帰るのも勿体ないので、阪急電車で十三へ行き、久し振りの第七藝術劇場へ。平日夕方なので空いていて快適でした。映画を見るまでは。
主人公は、百貫省二(和田晋侍さん)という男。妻の佐奈(キキ花香さん)、息子の茂男(小沢獅子丸君)と3人で、狭い文化住宅に住んでいる。省二の夢は、巨大な磁石を使って家を建てること。巨大な円盤状の磁石を空中に浮かせるものだ。(原理不明。上の写真をご覧あれ)
そして夢を実現するため、仕事も辞めた。円盤の磁石は出来た。土地もある(この土地も怪しい。他人の土地かも)。家の壁は、牛皮で作る予定だった。ある晩、省二は、どこかの牛をナタで殺し、皮を剥ごうと悪戦苦闘しているところを、警察官に見つかってしまった。(牛殺しのシーンは、かなりグロなので注意)
この警察官の小早川(北原雅樹さん)が、もう一人の主人公。警察官なのに気も弱く、腕力も弱い。しかし変な正義感だけは持っている。勤務が終ると、公衆トイレの個室に籠り、所轄管内にいる悪人連中のリスト作りに熱中している。さっさと逮捕すればよいのに、怖くて出来ないのだ。
小早川は、省二の「牛殺し」を見逃す代りに、悪人の闇討ちを依頼する(必殺仕事人の世界ですね)。省二は引き受けた。約束通り殺しはせず、半殺しで留めた。それを見ていたのは妻の佐奈。佐奈は異常性格のSだった。
夫が半殺しにした悪人を、後でこっそりと残酷な方法で殺してしまった。殺人の快楽を知った佐奈は、次々と殺人を重ねていく。(血みどろ、スプラッター)やがて、省二の「磁石の家」も完成に近づいた。さて結末は。
本作品も、残酷系という点は共通かもしれませんが、リアリズムに関しては説得力が全くありません。京都という、一見はなやかな都市の裏の闇を描きたかったのでしょうか。映画の中で、普通の中華料理店の店主が、実は中国系マフィアのボスで、悪事の限りを尽くしている。そんな事実があるのでしょうか。
バイオレンス、スプラッター、ナンセンス、グロテスク、そんな言葉ばかりが浮かんでくる本作品ですが、一方で、主人公の家族には、ほのぼのとした空気も流れています。その空気を作り出しているのは、幼い息子を演じた小沢獅子丸君の存在でした。
そんなに美形ではありませんし、セリフもたどたどしい感じですが、いるだけで、ほっとする空気を持っています。両親とも、何らかの暴力的な性格や行動をする中で、子供は無邪気なままなのが救いでした。子供まで暴力的に描くのであれば、もう見る気はせず、途中退出していたと思います。