作品総合評価 |
5点 |
少年の出番 |
50%(今一つ) |
寸評 |
少女主役の冒険映画。少年は寂しい・・ 【少年映画でない理由】完全に少女映画 |
映画情報など |
2014年公開。DVD発売中。 |
予告編や、テレビでの映画紹介番組を見て、これは完全な少女映画であることは判っていたのですが、少年俳優も出演しているので、少しばかりの期待も込めて鑑賞しました。
突っ込みどころ満載のストーリーですが、この手の児童活劇としては、近年珍しいくらい、いい出来でした。前半のややウダウダした展開から、ようやく宝探しの冒険で船出!するあたりは、ワクワク感に包まれます。最後も、すぐ読める展開でしたが、さわやかな後味でした。
主役の少女の頑張りも見事でした。でも、やっぱり、どこか寂しい、やるせない感じが残るのです。このレビューは、できれば読まないで下さい。管理人のちょっとわがままで、勝手な思いなどが出てきますので、嫌な思いをされるかもしれません。先にお詫びしておきます。
宝の島へ船出。右手前の少年だけ冒険しないとは・・
■ストーリー
瀬戸内海の小豆島に住む少女、村上楓(柴田杏花さん)は、戦国時代の村上水軍の末裔だ。島民の大切な足であるフェリーが老朽化し、航路の廃止問題で島民は揺れている。楓は家の蔵から、村上水軍の財宝が隠された島の地図(海図)を見つけた。
この財宝を見つけたら、そのお金でフェリー問題も解決できると考えた楓は、同級生の学(伊澤柾樹君)、冬樹(大前喬一君)の3人で宝のありかを探し始めた。楓の祖母(中村玉緒さん)や、先祖の霊?の助けで宝の島が判った。
ここから問題が発生。楓のライバルでクラス一の美少女や、島の不良青年達が、この財宝に絡んできた。何とか船出して宝の島に到着し、洞窟へと冒険が進む。さて無事に財宝を見つけることができるのでしょうか。
■冒険するのは少女です!
まずは何といっても主役少女を演じた柴田杏花さんでしょう。冒頭の戦国時代シーンで、村上水軍の大将の息子役で出てきます。ボーイッシュで運動神経は抜群、非常に活動的でチャーミングな少女を演じており、本作品の魅力は、彼女の演技によるものが70%、中村玉緒さんの怪?演技が30%というところでしょうか。
監督さんも彼女に惚れているのが映像からヒシヒシと伝わってきます。やはり監督が主役に入れ込んでいると、作品にどこか「力」が出てきます。そういう意味で柴田さんは幸せだと思います。
クライマックスの島での冒険シーン。彼女の衣装は、少し短めのショートパンツ姿になり、下方からのアングルを多用するなど、お色気カットも忘れていません。宮崎駿さんのアニメに出てくる少女と同じですね。
■少年は冒険しない!
本サイトは少年映画の紹介サイトです。なので、どうしても少年俳優の扱いに目が行くのです。本作品では2人の少年俳優が出ています。伊澤柾樹君は、ほぼ出ずっぱりに近いくらいの出番があるのですが、キャラクター的には少年俳優というよりも、3枚目の狂言回し的な感じです。
(こんな言い方をしてすみません。でも、最近のテレビでも、男子は美少年ではなく、ちょっとポッチャリ目の3枚目ばかり起用される気がします)
もう一人の大前喬一君、彼の活躍を期待していました。映画「トロッコ」では、無邪気に全裸になって葉っぱで隠して遊んでいた幼い少年が、大変なイケメンに成長しています。少しヒゲ(生毛でしょうけれど)が目立ち、声変りも始まっていますが、やはり美少年です。
主役の柴田さん、雰囲気はボーイッシュですが、やはり大前君の隣にくると、少年ではありません。映画の番宣写真等ではボーイッシュなカットを選んでいますが、彼女の顔をアップで見ると、やはり女性顔(ちょっとオバさんぽい顔)なんです。
映画前半、大前君の出番は控えめですが、ちょっと光るものもあり、彼の存在が、この映画を見るモチベーションでした。後半のクライマックス。さあ洞窟内へ冒険!という時、なんと!大前君だけ洞窟に入らないのです!これには、心からがっかりしました。
「お前なあ、男の子だったら、先頭切って洞窟に入って冒険しろよ」と叫びたいのですが仕方ありません。本作品は少女が冒険する映画ですから、彼をここでドロップアウトさせたのでしょう。もちろん、これで出番終りではなく、最後に少し出てきて見せ場ぽいシーンはあるのですが。
宝探しの打合せ。少年も熱心だったのに
島に着く。僕はここで待ってる!
■まとめ
ストーリー展開に疑問は多々あります。見通しのよい海で、ボートで後をつけてきた不良青年になぜ気付かないの?とか。でも子供向け冒険映画ですから、細かい事は気にしないで、楽しんだ方がいいでしょう。
洞窟内での冒険は、米映画「グーニーズ」を意識していると監督は書かれていますが、そこまでの予算はなく、昔の少年ドラマ「思いっきり探偵団覇悪怒組」に近い感じでした。それだけに、もっと少年が活躍して欲しい。
この映画の楓という少女は非常にチャーミングです。21世紀は少年ではなく、彼女のような少女が引っ張っていくのかもしれません。一方で、女の子だから許されるというような甘えも残っている気がするのです。楓は、自分の思った事をどんどん外に出します。嫌なものは嫌、だめと。
この映画上映前に「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」という映画の予告編がありました。芦田愛菜さん演じる少女が主役ですが、彼女もまた、自分の思うままに憎まれ口ばかり。これでも女の子だから可愛いもんだと、許されるのでしょうか。勿論、映画の意図はよく判らないので、この話はここまで。
一方、少年が、楓や、芦田愛菜さんのような言動を行ったら、どうなるでしょうか。許容してくれる人は少ないように思います。それだけ少年にとっては、暮しにくい世の中になったのかもしれません。もはや「あばれはっちゃく」のような少年は存在しないのかも。
見ていて、非常に楽しい映画でしたが、そんなことを考えてしまいました。たぶん考え過ぎなんでしょう。やはり少年が主人公の冒険物語を、日本映画でも見たい。
■追記 ノベライズ版「瀬戸内海賊物語」
映画は面白かったのですが、やはり少年俳優の影があまりに薄いので、モヤモヤ感を払拭できないでいたところ、たまたま本作品のノベライズ版を知り、思わず購入してしまいました。
原作ではなく、映画が先にあって、それを基に別の方が書き起こした小説との事で、あまり期待もしていなかったのですが、この小説版の方は、完全に少年小説になっています。こっちの方がいいじゃん!
ただ映画版よりもずっと地味で、冒険もそれほどなく、悪い奴も出てきません。中村玉緒さんのような強烈なキャラクターもなく、映画にするとつまらないかもしれません。だいたい本そのものが、1時間余りで全部読めてしまうくらいの軽さですし。でも、少年映画ファンとすれば、こっちを原作にして、別バージョンの映画を作ってくれると、本当に嬉しいのですが。