海よりもまだ深く (2016年)

作品総合評価 7点
少年の出番 30%(やや印象薄い)
寸評 是枝監督作品。ここ数作はマンネリ
【少年映画でない理由】主題が少年ではない事
映画情報など 2016年公開。BD/DVD発売中。
(写真は吉澤太陽君)


もう日本映画の巨匠ともいうべき是枝裕和監督。昨年は「海街diary」がヒットしましたが、それと同時期に製作していた作品で、少年俳優も登場するので、今年一番の期待作品でした。まさか、この第5部で紹介する事になるとは。少年映画からは程遠い作品でした。

2008年「歩いても歩いても」の姉妹編のような内容で、是枝監督独特の空気感は心地よいのですが、スターダスト所属の少年俳優、吉澤太陽君に期待していた私としては、完全に肩透かしをくらった感じです。

■ストーリー

ある新人賞を受賞した後は全く売れない小説家の良多(阿部寛さん)は、探偵社でバイトしながら小説を書いているが、老いた母(樹木希林さん)や姉にまで金を無心するような情けなさ。妻は愛想を尽かして息子(吉澤太陽君)を連れて離婚してしまった。

それでも良多は息子にだけは会いたい、父らしい事をしたいと焦っていた。月1回だけ息子と会える。その日、良多は息子を母が一人で住む団地に連れていった。ところが台風が東京を直撃、息子を迎えにきた妻も帰れなくなり、狭い団地の一室で一晩を過ごすことになった。


■所感など

とにかく阿部寛さん、樹木希林さんの個性が強すぎて、他の出演者はかすんでしまいます。決して悪い意味ではありません。この物語は是枝監督自身の経験や思いをそのまま描いておられるのでしょう、そのリアル感(貧乏くさいところなど)は並みではありません。

老いた母とダメ息子の関係を、日本独特の悲壮感が漂うようなジメジメではなく、くすっと笑えるようなドライな空気感が素晴らしいのです。ただ是枝作品全般ですが、ドラマ要素は一切なく、淡々と進みますので、刺激ばかり求める現代人はまず受けないだろうと思います。

一方、主人公の良多は、あれだけ息子の事を思っている設定なのに、肝心の息子の描写が薄すぎるのです。セリフも「ううん」「ホント」などワンフレーズだけ。吉澤太陽君はスターダストなので演技力無いから?そんな事は無いと思います。是枝監督がもう少年俳優に関心が無くなってしまったという事でしょう。

吉澤君以外の出演者では、リリー・フランキーさん、橋爪功さん、真木よう子さんなどの是枝監督常連組は安心して見られましたが、今回是枝組初出演の池松壮亮さん。少年俳優の時から演技力は図抜けていましたけれど、今回も本当にいい青年ぶりを発揮。今後は是枝組の常連になるかも。(池松さん、かなり筋肉質のがっちりした体格ですが、阿部寛さんと並ぶと、身長差から少年のように可愛く見えるのが不思議)

本作品は2016年カンヌ国際映画祭「ある視点部門」にノミネートされましたが、この作品では受賞は難しいかなと思っていました。これを書いている2016.5.23、結果発表。やはり何も受賞なしでした。(ちなみに、深田晃司監督、浅野忠信主演「淵に立つ」が同部門の審査員賞受賞)

心を揺すられる衝撃を受けた2004年の「誰も知らない」。それ以降、是枝監督は少しゆるい、甘い作品を撮りながら休養しており、またパワーを貯めて、少年映画の凄い衝撃作品を生み出してくれるのをずっと待っていましたが、もう無理なんでしょうか。






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